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3.正クエスト(ダイジェスト版) 後編

正さんの濃密な異世界冒険、後半。



 正義の力と謎の理屈で、見事トンベ……敵の四天王が先鋒ミディアムを撃破した、正さん。

 だが彼の冒険はまだまだ続くよ、終わらない。終われない。

 何しろ宿命の敵である魔王が、未だ復活していないのだから。


 しかし度重なる苦難と冒険を潜り抜け、勇者をはじめとする一行の戦力はめきめきと強化されていった。

 実力がないなどと、今の正さんを見て言うものはいない。

 神が下した試練の果てに、遂に勇者に遣わされた聖なる武器と防具を手に入れ、今の彼は正真正銘の勇者へと成長しつつあった。

 艱難辛苦を乗り越えて、彼は強くなる……!



 ★ 召喚されてから3年と8ヶ月目★


 ~とあるダンジョンの中~


「これが神より勇者に与えられる聖なる武具……なんて神々しい」

「……」

「伝承によれば、このダンジョンでは使用する勇者に最も相応しい武具が神より授けられるという。ミクラオサには剣なんだな」

「…………」

「うむ。ミクラオサは剣を使うことが多かったしな。順当といえるだろう」

「………………」

「あの……勇者さん、さっきから無言なんすけど」

「……………………」

「ミクラオサ様? どうされたのですか?」

「…………………………」

「心なしか、顔色が微妙に青いような……というか、引き攣ってないか」

「……俺に、最も『ふさわしい』……? 順当?」

「おい、本当にどうしたんだ……」

「こんな……っこんな武器が俺に相応しいって言うのか!」

「ミクラオサ様!?」

「わあっ 勇者さんが乱心したー!?」

 

 荒ぶる、正さん。

 勇者以外には見えないものが、彼にはしっかり見える。

 己の手に与えられた武具の名と、効果。

 まるで透視するかの如く、彼にはそれがわかってしまったのだ。

 神の授けた武器防具を、身につけた瞬間に。



 勇者 ミクラオサ

  武器:聖剣『冬色メモリー』

  効果/一番寒々しい思い出の精神的苦痛を物理に変えて敵を討つ!

  防具:聖鎧『センチメンタル涙空』

  効果/今までで一番(ないがしろ)にされた記憶。

   それがもたらす精神的苦痛より数値的に下る攻撃を完全無効!

  防具:聖盾『涙ぐむ渚のマーメイド』

  効果/伝説の人魚が付けていたビキニ並の防御力を備える。

   人魚が自らビキニを外すのと同等の確率で攻撃を寄せ付けない!



 勇者として装備を身につけた正さんは思った。

 この武器と防具を用意し、正さんをこの世界に召喚した神とやらに一言物申したいと……!!


 そうして彼が神様に実際物申す機会は、思ったよりも早く訪れた。




 ☆ 召喚されてから4年目 ☆


 遙かなる、空の彼方。

 悠々とそびえる浮遊島の山(・・・・・)を指さし、王女が言った。

「御覧下さい、ミクラオサ様! あれこそまさに幻の……!」

 感激と、敬慕と、信仰心。

 彼女の頬はうっすらと朱に染まり、感動に声がうち震える。

「あれこそが、我らが神レッグフォール様のおられる神山……普段は空の高みに姿を隠すあの神山がこうして我ら人の前に姿を現すのは、まさに600年ぶりのことですわ!」

「観測条件に『勇者同伴』が必須だから、今まで観測できた人間は極僅かなんだよ、勇者さん!」

 神という存在への信仰を身近に育ってきた王女と竜使いは、きゃわきゃわと興奮のあまりはしゃいでいる。

 常は落ち着きのある王女が年相応の顔で、正さんの袖を引いた。

「神に選ばれし勇者は、最後の試練としてあの山に入山しなければならないとお聞きします。どうぞわたくし共もお連れ下さいませ」

「いや、お連れも何も……エドモンドに竜を出してもらわなけりゃ、空飛ぶ手段のない俺には元より辿りつけないっつうか」

「御指名だね! 勇者さんの希望とあっては叶えないと!」

「お、おう……やる気で何よりだ」

「うん! 行くよっセレンゲティ!」

「こけこっこー!」

 正さんに促され、竜使いは相棒を大空へと連れ出した。

 その背に乗って、風を感じながら。

 いつもと同じく微妙な顔で、正さんは思った。

 なんでこの世界の竜って、鳴き声がニワトリなんだろう……と。


 そうして、足を踏み入れた天空神殿の最奥。

 彼らはそこで、身を伏せるレッグフォール神の姿を目にすることとなる。


「こ、この『とり』がレッグフォール神!!」

「ああ、なんと神々しいお姿……」

「いや……神々しいっつうか、親しみが持てるっつうか」

「親しみ、ですか? 流石は勇者であるミクラオサ様……この世で最も神に近しい御方だからこそ、そう感じられるのですね」

「し、親しいっつうか……思いがけない姿に俺の心臓止まりそうなんだけど」

「まあ、どうしてですか?」

「その……レッグフォール神ってその、『とり』なのか……?」

「神鳥レッグフォール様、ですが……鳥神であることをお伝えしておりませんでした?」

「初耳ですから!」


 あまりに意外な姿で現れた、レッグフォール神。

 その姿に正さんは顔が嫌でも引き攣った。

 静謐な瞳でそんな正さんを見ていたレッグフォール神は、その白い首を擡げて身を起こす。

 神々しい恩寵の光が、後光となって勇者一行に降り注いだ。


『――我が名はレッグフォール。勇者よ、よくぞこの地に辿り着いた』


「この地っつか……空の上だけど」

「ゆ、勇者さん! 神様を相手にそんな口のきき方……」

「いや、思わず……あの姿見たら、張りつめてた気も抜けた」

「なんと豪胆な!?」

「なあ、神様……俺、あんたに聞きたいことがあってここまで来たんだ」

『我が使命を帯びし勇者には最大限の敬愛を。疑問があるのであれば答えよう。さあ、申すがよい』

「……なんで、俺だったんだ。勇者は俺じゃなきゃダメだったのか……?」

 それは、彼がずっと抱えていた疑問。

 胸の奥に蟠り、正さんのことをずっと苛んでいた思い。

 突き刺さるような胸の痛みに背を押され、正さんはとうとう疑問の答えを確実に返してくれる存在――神に問いかけた。

 そして神は答えた。


『地球の神々に現時点で最も若くて活きが良くて、召喚されても精神の均衡的に正気で耐え切れるほどファンタジー適合率が高いの誰って聞いたら、多数決で『三倉家の兄弟の誰か』って答えが返ってきたからー……』

「なんという予想外の答え! つうか地球って神様いんの!?」

『その数なんと、八百万超……!』

「そんな答えまでくれるとか超親切! でも俺が聞きたいのはそこじゃない!!」

『選択肢が4人に限定されたので、最も年かさの者を選んでそなたを勇者と定め、我が世界に召喚したのだが……別の者が、例えばそなたのすぐ下の弟とかが良かったのか?』

「いやそれダメだろ! それとこれとは別問題ってか、俺の弟妹に手を出すな!?」

『しかしそなたは己が呼ばれたことが不服であるのだろう? であれば、代替案は……』

「確かに俺より和の方が戦闘能力的には下地整ってそうだったけどな! あと昭だったらすぐ順応してそうな気もするけどな!? あと明ちゃんは絶対ダメだから、論外だから!! 3人の誰だってダメだから!!」

 でも今の俺は、和にも勝る細マッチョ……!

 お兄ちゃんの意地にも掛けて、弟達に苦労させる訳には!

 まさか自分じゃなければ弟達が苦境に立たされていたかもしれないとは思いもよらず、今にも正さんは発狂しそうなほどに苦悩した。

「というかファンタジー適合率ってなに!? うちの兄弟そんなん高いの!? 確かに俺も割とすぐこっちに馴染めたけどさぁ!」

『その点を鑑みるに、地球の神々の推薦は確かであった。やはり当地のことは御当地神々に聞くに限るな』

「そんな御当地マスコットみたいに言われても!」

 今にも発狂しそうなほど苦悩した。

 というか半分くらいは発狂しててもおかしくなかった。

 だけど自分の疑問を列挙できる辺り、根っこの部分では冷静なのかもしれない。

 やがて、正さんは……


「ああ、もう……なんだかもう良いや。俺が選ばれたことに関しては、もう良いやー……」


 勇者は心の底から疲れていた。

 というかむしろ諦めた。

 だけどそんな彼にもまだ諦めのつかない領分がある。

 それは青年にとって、絶対に譲れないこと。

「だけど、なあ、神様……あんたが遙かなる時空(とき)を超えることが出来るってんなら、お願いだ」

『そなたの願い、叶えよう――』

「いやまだお願いなんも言ってねえ!!」

『願いはなんだ』

「…………なあ、神様。俺を一端……一日、いや一時間でも構わない。一時で良いから、俺を元の世界に返してくれないか?」

「ゆうしゃ、さん……!」

「ミクラオサ様!?」

「神様……俺が消えるところを、弟が見てるんだ! あれからもう、4年も経ってるんだよ! きっと、きっと弟が俺のことを心配している! 両親だって他の弟や妹だって、友達だっているんだよ! みんながきっと俺を探してるはずなんだ……なあ、頼む。俺、このままじゃ皆のことが気がかりで、俺、おれ……っ」

 

 最後は涙交じりの、嗚咽めいた声で。 

 静寂に満ちた神殿の中、勇者の悲痛な声が響いた。

 誰もが黙りこみ、胸の痛みを抑えた顔で青年を見ている。

 勇者として招かれた、青年。

 彼の願いと祈りに満ちた声に、言葉を返せる者はいない。

 彼をこの世界に導いた、偉大なる神を置いては――……



 ~ その頃、地球にて ~


「小夜……とうとうこの扉の向こうは」

「このダンジョンのボス、なんだね……」

「そうだよ。このボスを倒しさえすれば、主人公の呪いは解ける。王様の洗脳だって解ける」

「サラ(格闘家)ちゃん……サラちゃんのこと、王様もきっとわかってくれるよね。娘だって、思い出してくれるよね」

「きっと、ね。その為にも、行こう……心の準備は?」

「ちゃんと出来てるよ、昭君。きっときっと、サラちゃんの為にも……!」

「うん、それじゃあボス戦だよ。気を引き締めてかかろう」

「うん!」



 ~ 再び、正さん ~


「神様、頼む……! この通りだ!」

 今にも土下座せんばかりの勢いで頼み込む、正さん。

 異世界で数年の時を……それも波乱に満ちた濃密な時を過ごしてなお、彼は弟達のことを気にかけている。

 家族を忘れない兄心を押して、今まで心痛に耐えていたのだろう。

 だが縋る先を……神を前に、正さんの顔は心労が滲み出て青くなっている。

 必死の勇者を前に、神は述べた。


『そなたの気がかりは、家族のことで相違ないな。失踪し、年を重ねたことで案じているのだろうと』

「そう、そうだよ……っだから!」

『そのことであれば、案じる由なし』

「な……なんで!」

『この世界とそなたの世界は時の流れに差異がある』

「え?」

『そなたの召喚直後……呼び出して30分程は地球とこの世界の時も同期していただろう。だが今は完全に世界の境界は閉ざされ、時の流れにずれがある』

「ちょっと待ておい」

 神様の言っていることが確かなら、異世界と地球で時の流れが違うそうだが。

 もしも地球の方が時の流れが早ければ……正さんは浦島太郎の再臨状態となってしまう。

 だけど、逆だったら?

 少しだけ希望の見えた正さんに、神は答えを下した。


『此方の世界の1年は、そなたの世界の1分に相当する。それほどの隔たりがあるものと知れ』

「なんてこったい!」


 正さんが異世界に呼び出されて、4年。

 召喚された直後の30分は時間の流れも同等だったというが、それでも地球で過ぎた時間は34分。

 大騒ぎになったというには、少々短めの時間かも知れない。

 それでも何が起きているのか、予想するにも微妙な時間ではあるのだが……

『もしもそなたが此方で50年の時を過ごしたとしても、地球に戻れば1日と過ぎてはおらぬ。それほどの差異があれば、少々騒がれていたとしても取り戻しの効く差ではあるまいか』

「え、え、え……それじゃ、え!?」

『そなたが望むのであれば、いつでもそなたを元の世界に送ってやろう。ただし、人間達に魔王と呼ばれるモノを倒して後のことだが』

「期待させといてやっぱ先に魔王倒せって仰るんすね!」

『その代り、地球に戻すのはそなたが望んだ時、地球から召喚された時の姿に戻して送ってやろうではないか。望むのであれば此方に永遠に留まるのも自由ぞ』

「それはつまり……こっちで今のまま何十年と人生を過ごして、死の間際に元の世界へ戻してもらうことも可能ってことか? 若い姿で!?」

『然様。そのくらいのサービスは神だとてしてやるくらいの柔軟さは持ち合わせている』

「なんてこった…………」

 今までの心配ごとの、8割は消滅してしまうのを正さんは茫然としながら感じていた。

 心が一気に軽くなる。

 この世界で冒険を思いっきり楽しんでも、地球での青春を取り戻すことが可能だなんて……

 そんなこと、思いもしなかった。

 だから、茫然としてしまう。

 茫然としながら正さんは手を挙げた。

 まるで授業中、挙手する生徒の様に。


「地球に戻るとき若返るんなら、どうせなら召喚時の姿よりその1年後の身体にしてくれ」


 茫然としつつも。

 例え地球に帰った時、1年のずれが生じてしまったとしても。

 折角鍛えて手に入れた細マッチョボディを失う気は更々ないようだった。




 ★ 召喚されてから5年目 ★


 とうとう、この時がきた。

 神の恩寵を授かり、強化に強化を重ねたのは全てこの時の為。

 この世界に来た意味の全てをぶつけるべく、正さんは立ち上がる。

 目の前にそびえる城に……魔王の城に向かって駆け出した。

 これまでの苦難を共に乗り越えてきた、大事な仲間たちと一緒に!


 人間が魔王と呼ぶモノ。

 それが諍いを元に神鳥レッグフォールと袂を分かった、弟神……邪神フックナーガだと知っていながら。

 それでも正さんは走り続ける。

 帰りを待ちわびているだろう、弟達の元へと元気な姿で帰りつく為に!



 ~ その頃、地球 ~


「小夜……いま!」

「く……っ間に合って、回復!」

「! 駄目だサラ(格闘家)、そっちじゃない!」

「え……あぁ! さ、サラ(格闘家)ちゃんが!」

「――小夜、僕が時間を稼ぐ。何とかアイツを壁際に抑え込むから。その間……頼んだよ」

「あ、昭君!? あきらくーんっ!」

「惨殺剣! 惨殺剣惨殺剣惨殺剣……血の雨が、凄惨だね」

「必殺技の連続使用は出来ない筈なのに……っ」

「此処まで来て、負けはナシだよ。小夜も諦めない、ね?」

「昭君……ごめん、ごめんね昭君! もう私、諦めないよ……!」



 ~ 再び、正さん ~


 仲間達と共に足を踏み入れた、魔王の城。

 第1の広間で待っていたのは、髭から氷を発射するウェルダン。

 そう、四天王(1匹欠番)の1人がそこにいた。


「ここから先は魔の領域。決して先には通しませんよ!」

「いや、城に入った時点でもう魔の領域じゃん?」

「つべこべ言わず、戦いなさい……勇者!」


 先手必勝。

 伸びる鬚。

 四天王が『凍てつくウェルダン』は自爆覚悟で正さん達に襲いかかった。

 

 だが、ウェルダンの覚悟は1人の男に打ち砕かれる。

 この世界の誰よりも熱い男……マッスル伍長の手によって!


「行け……! ひよっこ共が!」

「伍長!?」

「ミクラオサ、いや……勇者。お前は俺にとって1番手のかかる弟子だった」

「こんな時に、何言い出すんすか!」

「だが、1番鍛えるのが楽しかったもお前だ。そう……楽しかったぜ、勇者」

「ま、マッスル伍長―!!」


 マッスル伍長はウェルダンの自爆に巻き込まれた。

 崩れ落ちる天井、砕ける壁。

 巻き添えを食らわぬようにと先を急ぐ仲間達に、引きずられるようにして。

 第1の広間を後にする正さんの頬には、止め処ない涙が滝を作っていた。

「勇者さんっ マッスル伍長の覚悟を、無駄にしちゃ駄目ですよ!」

「く、う、うぅ……マッスル伍長、俺は必ず、やり遂げて……やり、遂げてみせっううぅ」

 それ以上は、言葉にならなかった。

 だが胸の奥の覚悟が揺るぐことはない。

 何より、犠牲になったマッスル伍長の為なのだと。

 正さんは仲間達と先を急いだ。


 そして……

 途中で、四天王の1人『餅肌のレア』を女の戦いで王女が撃破し。

 数多い強敵達を討ち滅ぼし。

 勇者一行は電光石火の勢いで城の奥へ奥へと駆け上った。


 やがて辿り着いた第3の広間。

 魔王のいる最上階への階段を守るのは、四天王のリーダーにして最後の1人。

 『爆炎のロゼ』…………なの、だが。

 連戦の覚悟を決めて、広間への扉を開放した時。

 正さんが見たモノは!


「ぐ、お、ぎゃぁぁあああああああっ!!」

「んむ? おお、ミクラオサ……遅かったな」

「ま、マッスル伍長―!?」


 『爆炎のロゼ』に逆えび固めを極める……マッスル伍長その人だった!


「……って、なんでアンタ生きてんっすかぁぁあああっ!!?」

「待って勇者さん! マッスル伍長が生き延びてたことは今までのアレコレを思えば別におかしくない!」

「それよりもどうやって俺達より先に此処まで辿り着いたのか……そっちの方が疑問だな」

「なんでお前らも平然としてんだよーっ!」

「だって……」

「……なあ?」

「「勇者(おまえ)(さん)が死んだって聞くより、マッスル伍長が死んだって方が有得なさそうだから」」

「なるほど納得――……ってなるかばぁっか野郎ぉお!!」

 正さんは発狂した!




 ☆ 召喚されてから5年目、とうとう使命達成のとき! ☆


 そして、彼らはとうとう辿り着いた――。

 世界を脅かす、魔王フックナーガ。

 諍いからレッグフォール神と袂を分かった、邪神の居る場所に……。


「こ、これが邪神フックナーガ……レッグフォール神をして、力量差は明らかなれど戦闘は避けたい相手だと言わしめた……神!」


 己に加護を授ける鳥神の姿を思い出し、正さんは衝撃を受けた!

「………………なんで」

「ん、ミクラオサ……?」

「なんで!」

「ミクラオサ様?」

「なんでなんだよ!!」

「ど、どうしたんですか勇者さん!」

「なんで……鳥神の弟が蛇神なんだよ!!」

 そりゃ戦いも避けたくなるわ、と。

 ビジュアル面で完全に負けている上、生存競争的に勝てそうに見えない。

 それでも実力からすると鳥神の方が強いというのだから世界は世知辛い。

 鳥神と弟神、この世界は2柱の神々の均衡によって成り立っている。

 片方を滅ぼしてしまっては、即ち世界も終わる。

 鳥神が直接弟神に矛を向けては、必ず両者のどちらかが滅ぶしかないという。

 だからこそ神は、己の代理人として勇者を召喚する。

 そしてその度に、弟神に数百年の封印を施させているのだ。

 今回、選ばれたのは三倉正。

 彼は邪神にして蛇神であるフックナーガの強そうな姿を前に緊張を強めるが……


「大丈夫だ、ミクラオサ! 今までの修練を思い出せ!」

「ま、マッスル伍長……☆」

「あの長き苦難を乗り越えてきた、貴様なら殺れる!!」

「……はい!!」


 いや、殺しちゃあダメだろ……と。

 ツッコミが浮かぶ余地も無い。

 正さんは自らが課しておいてはっきり苦難と言い切ったマッスル伍長との長く辛く厳しい修行の日々を思い出した。

 そしてマッスル伍長の無茶苦茶ぶりを思えば、と。

 何だか最後の決戦を前に肩の力が抜けた。


「では行くぞ、貴様達!」

「「「ヤァ!!」」」

「はい、ですわ」


 勇者は、勇者ミクラオサと仲間達は。

 マッスル伍長の号令の下、邪神フックナーガへと立ち向かう!



 彼らが何とか仲間の戦死を免れながら邪神フックナーガの封印を達成した時には、戦い始めてからなんと3日と4時間が経過していた。



 



次回、正さんの余生。

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