共通シナリオ
●報酬、疑い、関係ない
それはある子爵令嬢が護衛の執事と町を歩いていたときのこと―――――
子爵令嬢は痴話喧嘩をしているカップルを見かける。
面白いからとそれを真似てみることにした。
「『なによ私の愛が受けられないの!?』」
子爵令嬢はさっそく台詞を言ってみる。
「お嬢様…公衆の面前です」
執事は少しも表情を崩さずに子爵令嬢をいさめる。
「屋敷の外なんだからレアナって呼んで!」
子爵令嬢が幼い頃からつかえている執事は彼女の初恋の人でもあった。
二人きりのときは愛称で呼ばせたり
わかりやすいアピールをしているのだが、どうやら鈍感な彼には伝わっていないらしい
「喉が乾いたわ…」
子爵の一人娘、パトレアナは、こっそりなにかを買おうと思い護衛の彼を撒こうと大袈裟な芝居をうつ。
「すぐに店を手配致します…くれぐれもここでお待ちくださいレアナ様」
普段はこんな下手な演技に騙されない執事が、こうもあっさりと自分の側を離れた。
「…ちょっといいかい、君パトレアナ嬢だよな?」
彼女は買い物の途中で、兵士に城まで連行された。
●
私は城下町に住む善良な子爵家の娘、だった筈。
どういうわけか兵士の人達に捕まってしまった。
ひたすら頭に浮かぶのは、悪いことは何もしていないという事実。
最近はお金が欲しいと思っていたが、捕まるような罪を犯したりなど、そういう心当たりはまったくない。もしや父や叔父、従兄のまずい取引がバレて私にとばっちりが―――?
「私は何もしていません!」
私は捕まる理由はないと主張する。
「ああ、誤解しないでくれお嬢様、君は悪いことはしていない」
兵士は申し訳なさそうにしつつ、吹き出すのを堪えながら話を続ける。
「勿論ご親族が怪しい取引をしたわけでもないからね」
そういって棒付きの飴を目の前に差し出した。
私はきょとりとしたが、ようやく緊張が解れる。
とくに飴がほしかったわけではないのに何故か嬉しいと思った。
――それはともかく疑ってごめんなさいお父様!親戚の皆さん!
「そろそろ話を本題に戻したいんだがいいか?」
兵士の言葉に帰るつもりのパトレアナは驚く
彼女はもう用は済んだと認識していたのだから当然だ。
でもよく考えれば何も話は終わっていない
だいいち連れてこられた理由も不明のままである。
「あの…どうして私をここへつれてきたのでしょう?」
先程はぐらかされたことを改めて兵士に質問をする。
「近衛騎士をやってもらえないか?」
兵士の言葉がパトレアナの頭に入り空気のように抜けていく
「わかりやすく言うとだな王子の護衛をやってくれないか?」
さっきとほとんど変わらないがようやくパトレアナにも理解出来た。
「えええ!?」
パトレアナはテーブルをバンバンと叩いて取り乱す。
「おお…いい反応だ」
兵士はそれを見ながらにかりと笑う
「なぜ食器より重い物を持ったことのない私に王子の近衛騎士をやれと!?」
言葉の通り、パトレアナは手ぶらである
荷物はいつも執事が持ってくれるので、自分では持つ必要がないからだ。
「でも本は食器より重いだろ」
[お嬢様ってナイフより重い物でも本は沢山持てる不思議な生き物らしいからな]と兵士はいう。
「どこのお嬢様かは知りませんが私の場合本は自分では読みません!執事が読んでくれますから!」
兵士はその執事を随分過保護な奴だと思ったが口に出しては言わなかった。
「大丈夫だ何も本気で護衛しろってわけじゃない」
兵士がなにを言いたいのかわからず
パトレアナは黙るしかなかった。
「実はある理由があって貴族の令嬢達に王子の護衛騎士を演じてくれって頼んでるんだ」
兵士が語りから依頼をされたのは自分だけではないと知り、少しだけ肩の荷が降りる。
「あー、話を続けてもいいか?」
兵士はパトレアナが理解出来ているか確かめる。
「は、はい…?」
パトレアナは相づちをうち兵士に話を続けてもらう。
「まず兵士と騎士の違いから話すが、他国とこの国じゃ意味が違う」
「は、はあ…?」
騎士になる理由からじゃあないのね。
「他国で騎士と兵士が同じ国にいるなんてことはない」
「そうなのですか?」
どういうことなの、現に兵士の彼は私に騎士になれと言っているのに。
「この国に置ける騎士は王族に仕える、兵士は城の外を守る捨て駒だ」
つまり役割で名称が変わるだけで守る意味では同じなのね。
「誰も本気でワイングラスより重い物を持ったことのないお嬢さんに武器持って王子を守れ、とは言わない」
つまり私はただ王子の隣にいるだけでいい、ということか―――
「何か報酬は…いえなんでもありませんわ!」
「きっとガッポリだと思うぞ引き受けてくれるか?」
「やります!」
私は何も考えすぐに返答した。
●王子、我が儘、腹が立つ
今はドレスの上に鎧を着用している。
ああ、この甲冑重いわ。
「僕はニンジンが嫌いだと前にも言っただろう!!」
嫌いなものが入っていただけでもう、カンカンだ。
そんなにシェフに怒らなくてもいいじゃない。
言ってやりたいけど我慢する。
我が儘な奴に注意して逆にいい展開になることはないと、以前執事が本を読みながら教えてくれた。
ノリノリで王子の騎士となったはいいが、端から見ていて王子はただの腹が立つ我が儘少年だった。
それにしても護衛なんて要らないくらいの静けさ、というより平和。
その平和を破壊しているのは王子のほうなんだけど、兵士さんは一体何を考えているの。
●執事、後悔、否めない
あの自分では動かないから私が運ばないといけない世話しがいのある怠け物のパトレアナ様が少し目を話した隙にいなくなるなんて、これは誘拐に違いない。
ガラにもなく動揺し、近くにいた兵士にたずねるとようやくパトレアナ様を見つけた。
「執事~!!会いたかったああああ」
「お嬢様!?どうなされたのですかこんな格好貴女には似合いませんよ!!」
なぜ騎士服なのだと、誘拐犯の趣味を疑った。
「貴方がお嬢様を拐かし、無礼な真似を働いた張本人ですね?」
「いや、別に誘拐じゃねえよ?」
「複数の兵士が私を連行したのよあれは紛れもない誘拐だったわ」
なんて可哀想なお嬢様だろう。
「レアナ嬢の話だと無口で淡白な話しかしないって言われてたが、結構ベラベラ話すんだな執事さんよぉ」
しまった…執事らしく無駄な話はしないように心掛けて来たのに、お嬢様の姿を目にした途端に自制が緩んだ。
「それだけ、お嬢様が大事なんだなぁ
よかったな嬢ちゃん」
●兵士、適当、不甲斐ない
「話は兵士から聞きました…お嬢様が殿下の警護をなさるとか」
「うんうん、それはそうよね私も疑問に思っているわ」
ちゃんと兵士の話は聞いたし、報酬はほしい。
けれども、ただ王子の側にいるだけなんておかしい話だわ。
――――
「しかし、なぜお嬢様を…」
納得いかない様子の執事に、パトレアナは詳しく説明する。
兵士と騎士の話も執事にしてみると、彼は険しい表情になった。
「あなた、お嬢様に適当な謀りをなさいましたね」
「おっと、なんのことだろうな?」
氷のように冷たい眼差しを向ける執事に、まったく動じることなく豪快に笑っている兵士。
辺りは険悪な雰囲気につつまれる。
「この方を無知な小娘だろうと軽視した貴方は、他国を持ち出して論点を反らした
そして騎士と兵士の違いを正しくは教えなかったのです!」
まるで推理小説の一説にありそうな台詞を、指を差しながら言い放った。
パトレアナは状況がよく飲みこめずにいる。
「ちょっと聞いてもいい?騎士と兵士って結局なんなの?」
「お嬢様、騎士は手柄を立てた兵士が王よりたまわる位です
貴族より下ではありますが身分のないものよりも良い身分となります
余談ですが騎士には貴族のように子に階級を継がせることはできません」
「わかったわ!」
パトレアナが理解したので安堵した執事は咳払いをしてから、話を元に戻すと言った。
「別に俺はお前の話に出てくることを否定したわけじゃねえよ
仮にお嬢ちゃんに嘘ついて騎士ごっこやらせて、オレになんのトクがあんだ?」
「それもそうよね」
パトレアナはうんうんと頷いた。
「お嬢様…」
パトレアナの様子をみた執事は急に頭が冷えた。
「…今のは俺の反則ってことで、もう正直に話ちまうか」
「やっぱり騙したのね!?」
兵士と執事はパトレアナの言葉に耳を疑った。
先ほどは兵士の味方だったのに、今度は執事の方についたからだ。
「おい、このお嬢様、ちょっと卑怯ってか強かだな」
「もはや慣れです
お嬢様は昔からこうですから」
これまでのいさかいはなんだったのだろう。
パトレアナが唖然とするくらい二人の話は盛り上がった。
●私、本来、関係なし
「ぶっちゃけ、貴族の令嬢なら誰でも良かった」
兵士は、パトレアナでなくてもよかった。
耳を疑うことを棒付き飴を口にいれたまま、面倒くさそうに語る。
「は…はい…?ああ、そうなんですか~」
パトレアナは苦笑い、のちにひきつり気味のつくり笑みを浮かべ、衝動的な苛立ちを必死に抑える。
「いや実はかくかくしかじかで、気むずかしい王子の花嫁候補を選定しようってことでな」
「私がその気むずかしい王子殿下の候補ですか!?」
パトレアナは唖然、わなわなと震える。
「お嬢ちゃん、頭悪いけど純粋そうだしな
偏屈王子にはピッタリだぜ」
誉められているのか貶されているのか、パトレアナは喜んでいいのかと執事に目で訴えた。
●真相は闇
「……きいた?」
「またスコーピオがでたんだって!!」
―――使用人達の話をきいていると、知らない名前が出てきた。
「あの、兵士さん」
「ん、なんだ?」
私が話しかけると彼は飴を口からとりだした。
「スコーピオとはなんですか?」
「どこでその名を?」
彼は目を見開いて、信じられないといったような顔で私をみる。
「嬢ちゃんはいまいくつだ?」
「14です」
「ならしらないのは当然か……まあいつかは知ることだし今話しておくか」
なにかとんでもないことなのだろうか。聞かなきゃよかったと不安でしかたない。
「嬢ちゃんはまだ生まれてない時だから知らないだろうがこの王都カルデラには16年前に恐ろしい殺人鬼が出ていてな」
殺人鬼となればとても世間を賑わせたことだろう。私が知らないなんておかしい話だ。
「狙われたのは悪い組織や盗賊だったからあまり問題視されず。むしろ平民、からしたらヒーロー扱いだった」
「はあ」
王侯貴族の間では存在を忌まれていたから私が知らないということかしら。
「当時の担当者の調べによるとスコーピオは複数いたらしい。
一人を除いて処断されたが、まあそいつの身分からして体裁が悪いからとかで存在を一切口にしてはならないと先代の王が定めたんだ」
あの若い使用人たちは昔スコーピオが平民に慕われていたということを知らないからただの殺人鬼と恐れているのね。
「あの、スコーピオが出たと騒ぎが起きてるんです」
「どうせまたスコーピオの模倣犯だろうな」
◆
「お忍び?」
「ああ、王子は街を知らないから世間を知るために行かせろと、アマスクル王の命だ」
王がいうなら仕方がない。
「でも王子は狙われているんじゃ……」
「奴さんもまさか外を彷徨いてるとは思わないだろ」
たしかにそうだろうが、詭弁ではないだろうか。
「それに王はこうもいってた。ヨースラン、マリスレオ、ルフスカルがいるから放任でもいい。とな」
それって4番目の王子なら死んでも困らないってことじゃない。
この国は一夫一妻制度だが王は教事を嫌っているという。
だから正式な妃より先に囲っていた女や存在が不確定な平民の娘との間に王子がいる。
第一王子ヨースランは侯爵家の三女の子で放浪癖があり度々仮面をつけて深夜徘徊をしていたと聞く。
第三王子マリスレオは不確定な平民の娘との子で最近城に現れたときく。
わがままをいっているが複雑な立場からすればしかたがないことかもしれない。
「今はお忍びなんた。アルでいいぞ」
私は王子と執事と共に街の市場へやってきた。
「本はいりませんかー」
いかにもな古書屋だ。執事がはいりたそうにしている。
王子がいいというので入ることにしよう。
「おや、珍しい」
執事の2pカラー[格闘ゲームにおける同キャラの色違い]
の男が本をみていた。
「失礼じゃないですかー」
「すみませんマハラァナさん。またきます」
執事2は去った。
「知り合い?」
「いいえ、ただどこかで見た覚えがあるのです」
「あの、店主さん?彼とは親しいんですか?」
「はい、あの人銀行頭取の屋敷の執事なんですよー。そこのお坊っちゃまがほんっとワガママで!!」
私と執事はちらりとアルスイード王子を見た。
「どうした?」
「いえなんでも」
本屋を出て、私たちが向かったのは食事どころ。雰囲気ぶちこわしのチャイカの茶店があった。
「シャウランパウはいらんかねー」
スープが美味しくて死ぬほどウマイ。と書かれている。
「私が毒味しないと」
といいつつ美味しそうなホカホカとした食べ物にくぎ付けになってしまった。
「キウランちゃーんこっちにもゴマ団子追加~」
客からひっぱりだこの少女。あれがお茶屋の看板娘というものか、私だってウェイトレスの格好をしたらきっとあれくらい…… いえ、私は貴族なんだから小さな茶屋の看板娘、一部のサークルの紅一点と張り合ってどうするの。
●借金
「さてお嬢様、そろそろ殿下を城まで……」
送ろうとファルジェがいいかけたそのとき、路地からビンが割れたり空き缶の転がる音がした。
「返せねーなら借りるなって何度もいってんだろーが坊っちゃんよォ」
サングラスをかけた所謂悪徳高利貸が銀髪の青年を追い詰めている。
「……あれは」
「知ってるの?」
「ええ、ブラン伯爵家の方だと思われます。以前お嬢様のデビタントにて見かけたことがあります」
ブラン伯爵家といえばかなりの古株で、社交界では三男ヴェレーユが有名だ。
なぜそんな名のある古株貴族がこんな事になっているのだろう。
そして服装はいかにもなボロをきている。
おそらくは貴族だと悟られぬようにしているのだろう。
「あの科学者ミケルウェンはブラン出身家だそうです」
「あの、とか言われても科学者なんて興味ないから知らないわ」
ファルジェはこれ見よがしにため息をつく。
「おい、あの者は貴族でありながら悪徳金融に金を借りたのか?」
「そうみたいです」
私は隠す義理もないので、正直に告げたが、王子がこれを王に告げればブラン伯爵家が取り潰される可能性もある。
この国において金は全てで、借金などもっての他だからだ。
「しかしブラン家が困窮している様子はありません。ヴェレーユ=ブランも社交界には顔を出しているようですし」
ファルジェはさすが執事なだけあって情報通だ。
「なら彼はブラン家とは別件で事件に巻き込まれたんじゃないかしら」
「奴等は去ったな。話を聞きにいくぞ」
私達はアル王子に続いてブラン家の男の元へあるいた。
「貴様はブランの者だな」
往来で聞くわけにもいかず改めて裏路地に移動した私たち。
さっそくアル王子の尋問がスタートした。
「そうですが、貴方はもしやアルスイード殿下ですか?」
「顔を見ただけでわかるとは、驚いたな」
王子の姿を子爵家の私が見ることは滅多にないが、古くから城を支えるブラン家なら見る機会もあるのではないだろうか。
「私はソリーユ、ブラン伯爵家の次男です」
ブラン家は長男が病気がちで、次男が爵位を継承するという話だ。
「単刀直入にお訊ねします。なぜ次期当主たる貴方は彼等から金を借りていたのですか?」
「……すみません。それについてはどに間者がいるかわからないので、場所を変えてお話させていただけませんか?」
ソリーユが話すというので私達は人気のあまりない宿へ移動した。
「まず私は古くから交流のある組織に協力しています」
「その組織の名は明かせないと?」
「ええ、アマスクル陛下から口止めをされています」
国王が噛んでいるというならそれは大事だ。
「パトレアナ様、どうなさいますか?」
「え……」
「この話は我々が関わってはいけないものだと思われます」
◆私は立ち去るべきかしら?
【アルスイードに聞く】→ルートAへ
【ソリーユに聞く】→ルートBへ
【ファルジェに聞く】ルートCへ