アーサーとアリス
身体を揺すられる。眠いのに、やめて欲しい。嫌々、目を開けるとアーサーがいた。不安げな表情で、私を見下ろしている。
「アーサー?また、お母様の夢を見たの?」
アーサーは答えずに、顔を歪ませた。
「まだ夜でしょ?もう一回寝よ?一緒に寝よ?」
「一緒に?」
「うん、一緒に。」
「怖くないのか?」
「怖い?アーサーのことを?」
眠い。アーサーは何を言ってるんだろ?
「男が怖くないのか・・・。」
なんことだか、さっぱりわからない。
「アーサー?大丈夫?一緒に眠れば、お母様の夢は見ないでしょ?一緒に寝よ。」
「ずっと、一緒にいてくれるのか?」
なんで?アーサーは、どうしたのだろう?
「私は、明日帰るから・・・。ずっと一緒にはいられないよ?」
「また、記憶がなくなってるのか?」
「記憶?」
なんのこと?眠い。
「俺の妃になることは、覚えているか?」
「アーサーとの縁談は白紙になったでしょ?ちゃんと覚えてるよ。」
「昨日のことは?温泉のことは?」
「温泉?あぁ、アリス様に会ったよ。オーウェン王子がアリス様じゃなかったの?」
「五の姫のことは?」
五の姫?眠い。眠たい。
「アーサー?朝に話は聞くから・・・。眠いの・・・。一緒に寝よ。」
夢だったのかな?アーサーが来たような・・・。私もアーサーに何か話があったような気がするけど思いだせない・・・。
ベッドでぼーっとしていると、ノックもなしに扉が開く。アーサーが無言で部屋に入ってきた。
「アーサー?」
「起きろ。お前に話がある。」
「アーサー、ここはどこ?温泉に入ってたら・・・。あぁ、アリス様がいて。あれ?なんだったかな?あっ、エドは?あと、五の姫様は?」
アーサーは、信じられないといった感じの顔で、マジマジと私の顔を見ている。なんなの?
「なに?その顔。」
「五の姫のことは?温泉で五の姫に会っただろう!記憶がないのか?」
「温泉では、アリス様にしか会ってないと思うけど・・・。」
あれ?アリス様だけよね?んー、アリス様と何を話したんだっけ?
「アイツが何かしてたからじゃないのか?アイツには会っていないのに・・・。なんで、記憶がないんだっ!」
「アイツ?アーサー?」
「お前は、また・・・・。」
アーサー?アーサーが何を言っているのか理解できない。でも、アーサーが悲しそうな、泣いてしまいそうな顔をするから・・・。ベッドから出て、アーサーを抱きしめる。
「アーサー、泣かないで。」
「また、またお前は、俺を忘れるのか?」
「あっ。」
そうだ・・・。私、アーサーのことを忘れてたんだ。あんなに大好きだったアーサーを・・・。じゃあ、もしかして他にも忘れているの?五の姫様とも何かあったのに忘れてるの?
「ヴィヴィアン、お前を不安にさせるつもりはなかった・・・。だが、また俺を忘れてしまうかと思うと・・・。」
「もう、忘れない・・・よ?」
アーサーをギュッと抱きしめて、アーサーの胸に顔を埋める。すると、アーサーが優しく頭を撫でてくれた。
「あっ、思い出した!」
「五の姫のことか?」
「ううん、約束のこと。アーサー、思い出したの。私、エドのことが好きなの・・・。」
「ああ・・・。」
アーサーの顔を見たら話せなくなる。だから、アーサーの胸に顔を埋めたまま話す。
「でもね、エドは私のこと好きじゃないんだって・・・。だからね、約束はまだ有効かなあって・・・・。」
「好きじゃない?約束?」
「うん・・・。エドはね、恋人がいるの。私の侍女のネリーがエドの恋人なの。だから、エドに振られたら、アーサーが迎えに来てくれるって約束・・・。」
「迎えに行く。俺の妃になればいいって約束だろ?もちろん、今でも有効だ。」
アーサーの言葉に、思わず顔を上げてしまった。
「違う!どっかに、ひっそりと住まわせてもらえれば良いから・・・。」
アーサーは両手で私の顔を固定すると、たまにしか見せないとびきりの笑顔で言った。
「ヴィヴィアン、好きだ。お前がいない人生なんて考えられない。ずっと、俺の側にいて欲しい。」
「あっ、えっと・・・。」
下を向きたいのに、顔を固定されてて・・・。
「もう、俺を忘れないでくれ。」
アーサーと言う前に、アーサーにキスをされた。
「ヴィヴィアン、愛してる。」
「あっ、アーサー・・・。あ、あのね。」
またも、ノックなしで扉が開いた。
「はーい、しつれーしまーす!スミレさまのお支度にまいりましたー!わたくし、ニーナと申します。」
ニーナと名乗る侍女は、アーサーを見もしない。
「誰が入ることを許可した?」
アーサーに話しかけられると、ニーナは眉間に皺をよせる。そしてアーサーを視界にいれないまま話す。
「えーっ、女王陛下ですが、なにか?さぁ、スミレさま、まいりましょう!あっ、殿下。今すぐ、後宮から出て行くようにと女王陛下から〜。」
「ふざけるな!」
「ふざけてなどおりませーん。」
「ニーナ、おやめなさい。アーサー、おはよう。おはよう、スミレ。良く眠れましたか?」
アリス様がにこやかに部屋に入ってきた。
「アリス様、おはようございます。」
アリス様は、ニッコリと微笑んでくれた。
「アーサー、早くここを出なさい。そろそろ起きる時間よ・・・。」
「はい、母上・・・。ヴィヴィアン、後で迎えくる。」
そう言うと、アーサーは部屋から出て行った。えっ?母上?アリス様がアーサーのお母様?
「アリス様・・・。アーサー王子は、アリス様の子どもなのですか?」
「ふふ、そうよ。アーサーとオーウェンは、私の息子よ。スミレは、どっちと結婚してくれるのかしら?」
えっ?えっ?エーーーーーッ!!!アリス様・・・。二十代にしか見えないです。




