五の姫とスミレ
A国は凄いなあ。V国にも温泉はあるけど、こんなに広くない。しかも、ここを使うのは私で三人目だと、温泉に入る前に湯浴みをしてくれた侍女が教えてくれた。
はあ、戻りたくない。エドは私を好きじゃない。そんな話しを聞きたくない。聞きたくないよ・・・。胃が痛い。痛くて、苦しい・・・。
スーはいつも、笑っていなさい。そして、大好きな人には大好きだと伝えなさい。
「お母様・・・。」
お母様は、とびきりの笑顔でそう言う。お母様はいつも笑顔だ。悲しそうな顔など見たこともない。
大好きな人とお別れをしなくてはいけなくなって、その人が思い出す自分の顔が悲しい顔や泣いてる顔では嫌でしょ?だから、いつも笑っていなさい。
言わないと相手にはわからないわ。だから、大好きだと言いなさい。大好きよ、スー。いつも、笑っていて。
いつかはエドと一緒にいれなくなる。エドは、私を好きじゃないから迷惑かもしれないけど・・・。ちゃんと、大好きだと伝えよう。そして、エドと一緒にいられる間は笑顔でいよう。
「うん、そうしよう・・・。」
「なんのことかのう?」
えっ?
顔を上げると、五の姫様が入り口に立っていた。私も五の姫様も薄い生地の下着のようなものを着ていて裸ではないけど、なんだか恥ずかしくて後ずさってしまう。
「気づかなくて、ごめんなさい。考えごとをしてて・・・。」
五の姫様は、不思議そうに首を傾げる。
「ビビ、そなたが考えごとをしてなかろうとも、妾には気づかなかったであろうし。謝罪は必要ない。」
「えっ?」
「逆に妾が謝罪せねばならぬのかも?妾が気配を消して近づいたから。」
気配を消す?
「妾が気配を消しているのに、妾に気づくのは善だけであったのに・・・。」
「五の姫様?」
「妾も一緒に入っても良いかのう?」
うっ、可愛いんですけど・・・。大きな黒い瞳を潤ませて、そんなに見つめられたら拒否なんてできるわけない。
「もちろんです。」
五の姫様は愛らしくて、全てにおいて私より優っている。でも、でも。いや、あまり見ちゃダメ・・・。気にしているかもだし。私だって、たいしたことないのだから・・・。でも、見てしまう。いや、だからダメだからっ!何か、何か話しかけよう。
「五の姫様は、おいくつですか?」
「妾は、もうすぐ15で成人で・・・。妾は選ばねばならぬ。」
「選ぶ?」
「そう、自由になるか、自由にならぬか・・・。」
「自由?」
五の姫様は、私を真っ直ぐ見つめる。目をそらせない。
「妾は、妾は自由などいらぬと思っておった。父上の側におれたら良かった。なのに、なのに・・・。」
五の姫様の大きな真っ黒な瞳に涙が溜まり、次々の大粒の雫が柔らかそうな頬を伝っていく。
「五の姫様?」
「妾は、見つけた。ずっと、ずっと、探しておった半身を・・・・。」
あっ・・・・。エドのことだ・・・・。胃がギューっと締め付けられる。五の姫様は、可愛い顔を歪ませると幼い子どものように泣き出した。でも声を出さずに・・・。
「五の姫様、声を出して泣いてもいいよ?我慢しなくてもいいよ?ここなら誰にも聞こえないから。」
「ビビ?」
無意識に五の姫様を抱きしめていた。声を殺して泣く、五の姫様をなぐさめてあげたくて。弟のヴィクターより少しだけ大きいかな?など考えていたら、五の姫様が私の胸に顔を埋めて声を出して泣きはじめた。
薄手の布だし、濡れているしで、胸に顔を埋められるのは恥ずかしい・・・・。でも、幼い子のように泣く五の姫様を突き放すことなんてできない。泣きじゃくる五の姫様の頭を優しく撫でてあげる。
泣きやんだ五の姫様が腫れた目で私を見上げる。その幼い感じが愛おしくて、弟にするように五の姫様の額にキスをした。
「のう、ビビ?」
「なんですか?」
「のう?触れても良いかのう?」
「えっ?」
五の姫様の視線は私の胸に釘付けだ・・・。なんで?いや、私だってさっき五の姫様の胸ばかり見てたし・・・。いやいや、でも、でも、触れてなんてないから!
「ダ、ダメです!」
「むぅ。ビビは妾に嘘をついたではないか!そなたは、ヴィヴィアン王女なのであろう?」
えーっ!なんで?って言うか、嘘ついたことと、胸を触ることは関係ないんですけどー!!




