ヤキモチ?
遅くなってしまいました。何度、書いても違う気がして・・・。もっと、ニヤニヤしてしまうような話を書けるようになりたいです。
「善?」
ネリーが善様を呼び凝視する。
「アーサーっ!善様、アーサーを離して!ネリー、アーサーが、アーサーが!」
善様が、暴れるアーサーを床に抑えつけてネリーを見て笑った。
「久しぶり、エレノア。」
善様?嫌だ。胃が・・・。
「善、部屋を出たらアーサー王子を離せ。」
ネリーは私を抱き直して扉に向かう。
「ちょっと、待ってくれる?なんなの君?僕を忘れてない?」
オーウェン王子が私の腕を掴む。
「オーウェン、止めろ!その女はダメだ!構うな!」
アーサーが床に抑えつけられながら叫んだ。
「オーウェン王子。ヴィヴィアン王女を離して頂けますでしょうか?」
「先ずは、アーサーを離してもらおうか?」
「善。」
ネリーが善様を呼び、何か言いかけた時。
「善、お前は何をしている?」
この声は・・・。扉の方を見る。あっ・・・。見なければ良かった。胃が痛い・・・・。
「善、止めよ。何をしておる?アーサー王子を離さぬか!」
五の姫様がそう言うと、善様はアーサーを離した。
「ビビ様?」
「ネリー、帰りたい・・・。」
「別の部屋を用意して頂いたので、そちらにまいりましょう。明日には帰れますからね。」
私はネリーの肩に顔を埋める。ネリーの甘い香りに安心する。
部屋に戻って湯浴みをしてもらうと、食事をせずにベッドで横になる。
「ビビ様、顔色が良くありませんが大丈夫ですか?少しでも何か口にしたほうが・・・。」
ネリーが優しく私の頬に触れる。
「いらない。ネリー、ゴメンなさい。疲れたの。誰も部屋に入れないで。」
「わかりました。ゆっくり休んでください。明日に出発しますので。」
ネリーが寝室から出た途端に涙が溢れでる。胃がムカムカして苦しい。
善様とネリーは知り合いなんだよね?善様はネリーのことを自分の恋人だと言ったんだよね?エレノアって呼んだ・・・。エドは?エドも善様と知り合いで、エドは五の姫様とも知り合いで・・・。胃の痛みがどんどん酷くなる。早く眠ってしまいたい。何も考えたくない。
「なんのつもりだ?善に何をさせようとした?まだスミレがこの国にいるのに、揉め事を起こすな!」
「あの王子がビビ様に気安く触れるから、代わりに兄のアーサー王子が腕を折られるぐらいは仕方ないことでは?エドワード、お前も含め穢らわしい男がビビ様に触れるだなんて吐き気がする!」
「お前、アーサー王子の腕を折るつもりだったのか・・・。」
「私はエドワードとは違う。貴族でもないし、国などどうでも良い。私はビビ様にだけに仕えているのだから。」
眠ってしまっていた?二人の会話をボーッと聞く。
「まあいい、とにかく中に入れろ。スミレが不安がる。」
「ビビ様は眠られているし、ビビ様に誰も入れるなと言われている。」
部屋に?今、エドに会いたくない・・・。嫌だ。本当はネリーにも会いたくない。
「ネリー、誰も入れないで。」
「スミレ、俺だ。」
「ネリー、誰も入れないで・・・。」
「・・・・・・。」
「ビビ様?大丈夫ですか?」
「ネリー、ありがとう。」
「泣かれていたのですか?エドワードが何か?」
私は首を横に振る。違う、エドは何も悪くない。エドは悪くないのに・・・。
「違うの・・・。」
「ビビ様、大丈夫ですよ。」
ネリーが優しく抱きしめてくれる。優しくて、綺麗なネリー。ネリーはいつか、善様と一緒にZ国に行ってしまうの?エドもいつかいなくなってしまうの?二人ともいなくなってしまうの?
「ビビ様?」
「ネリーは、善様とZ国に行ってしまうの?」
ネリーは目を見開いて、まさか!あり得ません!と言った。
「でも・・・。二人は恋人同士なのでしょ?」
「ビビ様、善はエドワードの知り合いです。私は善と親しくなどありません。私はずっとビビ様と一緒ですよ。」
「ずっと一緒?本当に?私、嫌だったの・・・。」
「何がですか?」
「・・・・・。」
「ビビ様?」
「私、嫌だったの。ネリーが善様と話すのも、善様がネリーをエレノアって呼ぶのも、エドが五の姫様と一緒にいたのも・・・。二人が取られてしまったって・・・。私から二人を奪わないでって思ったの。」
なんてワガママなんだろ。ネリーも呆れてるよね・・・。ネリーを見れない。どうしよう、軽蔑の目で見られていたら・・・・。
「ビビ様、可愛いっ!」
ネリーがギュっと私を抱きしめて、「ビビ様が呼ぶ、ネリーのほうが特別なんですよ。」と言った。
「そうか、スミレはヤキモチを焼いていたのか?可愛いな、お前は。だから俺に会いたくなかったのか?」
えっ?エド、なの?なんで、いるの?怖くて顔を上げられない。エドは絶対にバカにした顔をしてる・・・。ヤキモチ?ヤキモチだなんて、すごく子どもっぽい・・・。でも、でも・・・・。
「だって、エドが五の姫様を抱っこしてたもの・・・。」
「・・・・・・。」
えっ、二人ともなんで何も言ってくれないの?なんか、凄く恥ずかしい。言わなければ良かった・・・。
二人とも何も言ってくれないから、ネリーの胸に顔を埋めてじっとしていると身体がふわっと浮いて、エドに抱っこされた・・・。恥ずかしくて、ギュっと目をつぶる。
「スミレが嫌なら、一生、他の女には触れない。だから、顔を見せて?」
顔を上げて目を開けると、嬉しそうに笑うエドの顔・・・。ずっとムカムカと痛かった胃が嘘のようにスーッと治まる。そして、思い出す。
「あっ!アーサーは?アーサーは大丈夫?」
エドは凄く嫌そうな顔をした。
「せっかく気分良かったのに、他の男の話なんてするなよ。」
「でも・・・。」
「アーサー王子は大丈夫ですよ。安心してください。」
ネリーがニッコリと笑った。
「良かった・・・。あっ!」
「なんだ?もうアーサー王子の話もオーウェン王子の話も聞かない。」
エドが不機嫌そうに言う。
「違うの・・・。ワガママ言って、ゴメンなさい。でもエド、ネリーなら良いの。」
「なんの話だ?」
「だから、ネリー以外は触れないで・・・。だって、エドとネリーは本当の恋人同士でしょ?」
「ネリー。俺たちの想いは、なかなか届かないな・・・。」
「・・・・。」
意味がわからなくて、首を傾げる。きっと恋人同士にしか、わからない会話なのね。
「はあ、一気に疲れた・・・。」
エドは私を抱いたまま、椅子に座ってグッタリしてしまった。その夜からエドは高熱をだし、帰国は延期された。




