スミレとアーサー
「ねえ、アーサー遊ぼ。スミレと遊んで。」
「イヤだね。あっち行けよ、ブス!」
「アーサー様!スミレ様になんて失礼なっ!」
「スミレは自分がブサイクだって、わかってるもん・・・。だから、アーサーを怒らないで。」
「スミレ様・・・。スミレ様はとても可愛いですよ。アーサー様が間違っているのですよ。」
「間違いだ?どう見てもブサイクな顔だろ?大人は平気で嘘をつくからな。」
「スミレ!ここに来たらダメだと言っているだろ。アーサー様は、まだ体調が良くないんだ。こっちにおいで。」
「やだやだやだ!エドがあっち行って!スミレは、アーサーといるもん!」
「いいから、くるんだっ!」
「本を読んでくれるなら、いてもいいぞ・・・。」
「アーサー!本当?今、本を取ってくる!」
「アーサー、帰っちゃうの?今度はいつ来るの?」
「泣くな。」
「はい、アーサー・・・。」
「はあ・・・・・。お前が成人したら迎えに来る。だから泣くな。」
「本当に?絶対だよ?約束だよ?」
「あぁ、約束だ。」
なんで忘れてたんだろう。約束のことも、大好きなアーサーのことも・・・・。額の傷にアーサーが触れなければ、今もアーサーのことを思い出してなかったかも。
ねぇ、見て?凄く醜い顔だと思わない?
・・・・・・・・。
アーサーのこと思い出さなければ良かった。そして国に戻って、両親や弟、エドとネリー。優しいみんな囲まれて穏やかに暮らして・・・・。
でも、さっき見た夢。凄く幸せで・・・。やっぱり、アーサーを思い出せて嬉しい。でも、苦しくて。せめて、アーサーが昔のままだったら良かったのに。そうしたら、お似合いだったのに・・・・。約束したから、アーサーは優しいから、妃にしてくれるのかな?なんだか申し訳ないな。
アーサーは、いつも無表情かブスッとしているけど、たまに見せる笑顔が私は大好きだった。どんどんアーサーのことを思い出す。本当になんで忘れていたのか?
額の傷に触れてみる。アーサーは、この傷を気にしてるのかな?
「アーサー・・・・。」
「なんだ?」
えっ・・・。声のする方を見るとアーサーがベッドの横に立ち、私を見下ろしていた。
「いつ気づくのか、観察していたが・・・。なんで、そんな悲しそうな顔をしている?」
「なんでもないよ・・・。」
「なんでもないって顔じゃないだろ?」
「アーサー、無理して結婚してくれなくても良いよ。そんな子どものころの約束なんて・・・。あとね、額の傷のことを気にしてるならね、なんともないから・・・。どうせ醜い顔だしね。それにね、アーサーにはヴァネッサ姉様みたいに綺麗な人が良いと思うよ?」
アーサーの顔は無表情で、何を考えてるかわからない。
「言いたいことは、それだけか?」
「えっと・・・。」
「じゃあ、賭けはお前の負けだな?なら、今ここで、俺の妃になるがいい。」
アーサーは私に跨ると、自分の上着を脱ぎ、上半身裸になった。
全然、傷がなくなってない・・・。
「アーサー、痛い?」
「ほう、余裕だな?人の心配か?」
アーサーが私の夜着を、引き裂いた。
「えっ?」
「もう俺のものだ。誰にも渡さない。お前は俺だけを見ていれば良い。」




