⑥
うちの彼女のマユは大人しいほうだ。
言いたいことはあまり言わず、いつも少しだけ下がって付いてくるようなタイプ。
でも少しも嫌な顔はせず、二人っきりになったら甘えてくるような猫みたいな女の子。
…と、思っていた。
「どうして? あんなに私だけでいいって言ってくれたのに…私のどこが悪かったの? 私、あなたの思う女をやってきたつもりだよ? どこがダメだったの? 言ってくれれば直すから。悪いところ直すから。それとも私、何かした? それも言ってくれれば謝るからっ。だから私のことを好きって言って? 前みたいに愛してるって言って? 私と別れないって言ってよお願いだから!」
俺がそんな彼女に飽きて、彼女の部屋で別れ話を持ちかけた途端に、堰を切ったように泣き出してすがりついてきた。
俺は怖くなって、すがりついてくるマユを振り払って逃げるように部屋を飛び出した。
部屋を飛び出したあとも、何か声は聞こえていたが、何も聞こえないふりをしてそのまま走って帰った。
まさかあんな一面があったなんて。
第一、『やってきた』ってなんだよ。俺に合わせて付き合ってたってことかよ。
互いの意見を尊重しあうのが恋人ってもんだろ。合わせるってどういうことだよ。
思い返して少しイライラしていると、携帯が音を立てて鳴った。
マユからのメールだった。
「うわっ!」
俺はメールを開いた瞬間に驚いて携帯を落としてしまった。
そのまま電源ボタンを連打してメール画面を閉じると、そのまま全力で家まで走って帰った。
タイトル:愛するあなたへ
『あんなに大好きって言ってくれたのに将来結婚しようって言ってくれたのにあれはウソだったのねでも私はずっとあなたのことが好きだよあなたが私に言ってくれた言葉は全部覚えてるよ私に告白してくれたときの言葉も温度も湿度だって覚えてる最初に話した会話は好きなデザートの話だったよね教室で話し相手がいなくて一人だった私に急にあなたが好きなデザートの話をしてくれたのがきっかけだったよね…』
完全にヤンデレでした。書いてて楽しかったのは内緒です。




