砕け散る想いがあるのなら、 [千五百文字小説]
貴方が居てくれた日々。 そんな毎日は、私にとってとても幸せな時間だった。
互いに笑い合って、何かあったら相談して、 それで泣いて、二人の距離は縮まって。
いつも一緒に居るから、いつの間にか貴方の口癖が私の口癖になっていて、
元々私の口癖だったはずの言葉が、今では貴方の口癖になっていて・・・。
何も言わなくたって、貴方の考えている事が分かるの。 それは、貴方だって同じでしょ?
貴方との意思相通は完璧。 以心伝心――それは、何時からか私達二人の事を示す言葉で。
昔は、何もしていなくたって、 “ただ貴方と居る”――それだけで安心出来ていた。
でも、今は違うの。 貴方は私の所にはいないの。 今は何処かに消えて―――――。
でも、私が“辛い”とか“苦しい”とか、そんなのはどうだっていい。
私は、沢山 泣いたから。 でも、貴方はちっとも泣いてないでしょ?
貴方は、私に「護ってやる事は出来ない」「俺は弱い漢だから」って別れを告げた。
――たった一回。 たった一回、私を護れなかった事を後悔して。
――たった一回だけど、私を護る事の出来なかった自分が赦せなくって。
私は貴方を少しも恨んでなんかいないのに。 憎んでなんかいないのに、貴方は。
多分、今でもずっと後悔を繰り返していて、 自分を, 自分だけを傷付けている。
でも、だからと言って、私はそれを止める術を持っていない。
貴方は私の目の前から消えてしまったから、私にはどうする事も出来ない。
――今では、雲のように掴む事の出来なくなってしまった存在。
――今では、思い出の欠片と化してしまった遠い遠い遥かなる存在。
私は「嫌だっ!」って言ったのに。 私は「別れたくない!!」って叫んだのに。
なのに、それなのに、貴方は頑固な人だから、私の意見は完全無視で―――――。
でも、だけどそれは貴方が悪いわけじゃないの。
私は貴方の頑固な所も含めて好きだったから。 ――今もそれは変わってないから。
だから、悪いのは貴方じゃなくて、私の方なの。
貴方に護ってもらわなきゃ駄目なほど弱い私が悪いの。
だって、『自分の所為で・・・』って思う事の出来る人が、
強くなろうと努力している人が、弱い人間であるはずがないもの。
弱い人間は、どんな時も自分で背負わず他人の所為にして、
それで変わる努力なんかせずに、現実から逃げ回って戦おうとしない人間だもの。
だから、貴方は弱い人間なんかじゃないの。 貴方は、自分自身を傷付けちゃ駄目なの。
今はもう、“二人の幸せ”を共に願った七夕の夜空に、
“貴方の幸せ”を願う事しか出来ないけれど、私は今でも想っている。
――変わらずに、貴方を好きなままでいる。 貴方を大好きなままでいる。
だから、いつか貴方が“自分自身を赦せる”ようになったら、
その時もまだ、私の事を好きでいてくれるなら、 私の所に戻ってきてよ。
また、昔みたいに、二人で泣いて笑って 楽しく暮らそうよ。 絶対、幸せだから。
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織姫と彦星みたいに、いつまでも離れ離れの関係なんて、絶対に嫌だよ。
私は、この一秒一秒を大切な貴方と居たいよ。 ずっとずっと一緒に居たいよ。
だから、戻ってきてもいいんだよ? 早く戻ってきてくれた方が、私は嬉しいんだよ?
「「 今は届かないそんな想いを、 送る事のない この手紙に綴る。
七月七日、大好きな貴方を想って。 大好きな大好きな貴方が戻るのを信じて。」」