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5章:新たなる舞台へと走り出す瞬間 2

「で、最近は練習はかどってんの?」


「ああ、ここんところはギターソロに没頭してるよ。結構イイ感じに弾けるようになってきたぜ。」


学生食堂にて俺はいつもの味噌ラーメンに一味を振り掛ける。ああ、改めて紹介しておかないとな。俺の目の前で生姜焼き定食に豚汁を並べている彼は真行。俺の数少ない親友?の一人だ。ちょっとテンションが高めでウザいところもあるが、色々と相談にのってくれるイイ奴さ。え?生姜焼きに豚汁で豚がカブってるって?気にするな、コイツはそういう男なんだ。


「そろそろライブハウスの審査があるんだろ?書類とかはもう出したのか?」


「いや、まだだ。今やってる曲をデモで出すから、レコーディングしないといけないんだ。あとプロフィールも書かないといけないし。写真は今日このあと部室で舞に頼むつもりだ。」


「ふーん、お前も色々と大変だな。」


「まあな。」


辛味が足りなかったから、もう一振り一味を加えてラーメンをすする。


「ところで最近咲姫ちゃんは学食に来ないな?ケンカでもしたのか?」


「咲姫?ああ、アイツならちょっとな…。まあ色々あってな。」


「なんだそりゃ?まさかっ、本当にケンカしてんのか!?」


「いや、ケンカじゃない。まあ、そのなんだ…。」


「なんだよ鋭士!もったいぶるなよ?」


「いや、本人から口止めされてんだよ。…仕方ない、誰にも言わないって約束してくれるか?」


「ああ!」


「…ダイエットだってよ。」


「は?!」


「さっき言ったけど写真提出があるからって、減量中なんだとよ。絶対誰にも言うなよ?本人に聞かれたらマズいから。」


「でもなんで?咲姫ちゃんは太ってなんかないぞ?」


「知るかよ。菓子ばっか食ってるから下っ腹でも出てきたんじゃねーの?自業自得…!?」


俺はそこまで言うと慌てて辺りを見回した。


「何だ?どした鋭士?」


「いや、最近咲姫は神出鬼没だから…」


「お前もマジで大変だな。」


「…だろ?」


最後のスープを飲み干して席を立つ。ちっ、舌がヒリヒリする、ちょっと辛すぎたかな。



夕方、チャリ部の部室で俺は写真を撮る為身だしなみを整えていた。


「おっ、何だ鋭士カッコつけて?これから合コンでも行くのか?」


髪型をセットしていた俺に話しかけたのは、統哉(トウヤ)先輩。自転車愛好会通称チャリ部の部長で、俺の二つ年上だ。自転車こよなく愛してやまない熱い先輩である。


「違いますよ。写真を撮るんですよ、バンドの。」


「まだやってたんだソレ。解散したと思ってたよ。」


「してないですよ!順調です!今度ライブやりますから!」


「そうか。じゃあ見に行かないとな!」


「本当ですか!?ありがとうございます、先輩!」


統哉先輩は二人乗り用の自転車を拭きながらタバコに火を付けた。


「ただし、それが終わったらコイツに乗ってもらうぞ!ツーリング会があるからな。」


二人乗り用自転車:タンデムサイクル。マジすか先輩…。俺、このチャリ苦手なんだよな〜参ったな。そして一体誰と乗るのかな?しかしライブに来てくれるって言うし、しょうがないか。


「…分かりました、詳しくはその時お願いします。」


「ああ、期待してるぞ鋭士!」


さて、髪もセットしたし、舞に写真お願いするか。舞は部室の給湯室でつまみ食いをしていた。


「オイ。」


「ひゃうん?!」


「姿が見えないと思ってたら、何やってんだよオマエ。」


「えへへ、お腹空いちゃって〜。」


菓子でも食ってんのかと思って見ると、…さきイカ?オッサンかよ!?

彼女は舞。チャリ部の整備担当で俺の高校からの腐れ縁だ。若干天然で俺の調子を狂わせるが、素直でいい娘だと思う。多分。


「まあいいや。写真撮ってくれよ!デジカメあっただろ?」


「しゃ、写真?!ちょっと待っててえいちゃん!」


舞は口を拭いて髪をセットしだす。オイ、何か勘違いしてんぞ?


「いや、被写体は俺だけなんだが。」


「えっ?そうなの〜!?でも、せっかくだから一緒に撮りたいな!」


そう言った舞の目は眩く輝いていた。そんなことで輝くなよ、全く。


「分かったよ。撮るから、先に俺を写してくれ。」


「分かった〜。ええとデジカメ、デジカメ。じゃあいくよ?」


「ああ。」


「もうちょっと顔上げて〜!」


「こうか?」


「口元柔らかくね。」


「ああ…。」


「目は大きく!」


「…。」


「鼻は…。」


「いいから早くシャッター切れっ!」


「しゅん…。」


「あ、ああ悪かったよ怒鳴って。ええと…は、鼻はこうだな?よし良いぞ!」


「うん、いくよ!さん、に、いち、きゅっ!」


かしゃ。


「どうだ?いや、何も言わなくて良いぞ?」


「なんか、普通過ぎて面白くない顔…。」


「言わなくていいって!悪かったな面白くない顔で!」


「あはは〜ゴメン。でもプロフィールの写真でしょ?コレ。」


「ああ、そうだけど?」


「なら、ちょっと表情つけた方がいいよ〜!ホラ、アピールっていうか…。」


「はぁ〜、分かった。じゃあ、これでどうだ?」


あまりに舞がしつこいから俺はカメラに向かって思い切りメンチ切ってやった。まあウチのメンバーからしたらこのぐらいの事は日常茶飯事だろ。特に咲姫あたりは。


「おおっ、えいちゃんイイ顔♪さん、にい、いち、きゅっ!」


かしゃ。


はぁ〜でも本当にいいのかコノ顔?目は一重でシワよってるし、おまけに舌まで出してるよ。俺も変わったな…。


「そんじゃな舞。それプリントしておいてくれよ。」


「ちょっとえいちゃん?!ツーショット、ツーショット!」


ちっ覚えてたか。面倒な奴だな。



さて、場所は変わって俺の自宅。以前の食って寝るだけの部屋からみたら、そこそこミージシャンっぽい部屋になってきていると思う。俺の愛用している青いボディのロック式ギター、ディストーションのエフェクター、練習用のアンプ、床に散らばった楽譜。これだけあれば何となくそれっぽい部屋に見えるんだよ。俺はインスタントの味噌ラーメンと水を雪平鍋に入れてコンロに火を灯し、机に向かって一枚の紙を鞄から取り出す。プロフィールを記入する用紙だ。本当はチャリ部で書きたかったんだけど、あそこにいたら統哉先輩にタンデムサイクルをテストされる恐れがあったから、逃げ帰ってきたというわけ。それに舞にもあれこれ調子を狂わせられそうだったしな。


「ええと、名前に年齢に自己PRと…。」


内容について、おもむろにペンを走らせる。

自己PRか…。うーん、これといって特にアピールできるようなことはないな…。俺ってSHINEのギタリストとして本当に役に立ってんのかな?どうすっかな〜、この欄。みんなは何を書いてるんだろうか?俺は気になってある人物にメールをした。程なくして返信が来る。


「エー坊はエー坊だよ。」


と郁斗の返事。なんじゃそりゃ?仕事中で忙しかったかな?一応もう一人聞いてみるかな。


「私は一分間に176回ヘッドバンキング(頭を振る)します。」


と帆乃風。これは強烈だな?!アイツは顔に似合わず言動にインパクトがあるな。勢いでもう一人いってみるか。


「そうですね、一番年下で、若いですって書きました。」


と那秧。いや、まあ確かにそうだが、就職活動の履歴書じゃないんだから。仕方ない、最後にアイツにも聞いてみるか。あんまり聞きたくはないが…念の為。


「好きな食べ物はチョコバナナで、チョコは苦めなら尚good(o^-')b


休日はゲーセンで戦国スピリット(ノ-o-)ノ 使うキャラはもちろんランちゃん(^-')b

あと、カワイイ服やアクセが好きでメイド服にネコ耳とシッポはガチで神ニャー…」


俺はそこまで読んでケータイを静かに閉じた。


結局どれも参考にはならなかったな。仕方ないこうなったら真行だ。アイツなら俺のイイ所のひとつくらいわかるだろう。


「明日豚汁だけ奢ってくれないか?」


俺の質問に答えろっ!!全くどいつもこいつも…。しかしまたすぐにメールを受信する。また真行だ。


「がんばれよ!」


サンキューな真行。そして俺はPR欄に“頑張ります!”とデカデカと書いた。これでよしと!ん?なんか焦げ臭いぞ?はっ、しまった!味噌ラーメンが!はぁ〜今度からはカップ麺にするか…。仕方なくもう一袋、味噌ラーメンを作り直した俺だった。


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