4章:健気な遊戯者が打音を生む瞬間 3
メンバー2度目の飲み会から4日後、鮮烈的にスピード加入したドラマー、那秧のドラムキットをこの日購入に踏み切る事にした。今日楽器店に出陣するメンバーは俺と帆乃風と那秧の三人。咲姫と郁斗は私用で出てこれないらしい。俺は駅の広場で二人を待っていた。
「お待たせ、鋭士さん。」
「よう!お疲れさん。今日は頼むわ。」
程なくして帆乃風が来た。彼女はベーシストだから相棒ともいえるドラマーについては、あれこれノウハウがある。だから今日付いて来てもらうのはちゃんと意味がある。まあ那秧を誘ったのも彼女なんだけど。
「ナオ君はまだかな?」
「さっきメール来てたからそろそろ来るさ。」
あれ?今日の帆乃風、なんかオメカシし過ぎな気がするが?いつもの薄化粧に一塗りしていてどことなく目元もくっきり感がある。唇はきらびやかなピンクのグロスが塗られていた。俺はあえて気にしない事にしたが、気になるっちゃ気になる。
「ちわっす!お待たせしました!」
そこへ那秧が到着した。
「おう、待ってたぜ!じゃ行くか!」
帆乃風とは対照的に那秧の格好は上下黒のジャージにトレッキングスニーカー、そしてニット帽。まるでジムの帰りみたいな服装だった。180cmを超えるデカい身長がそれをさらに引き立てていて凄い迫力だ。
「では、是非行きましょう!」
那秧は俺と並んで歩き出す。しかし、
「わ、私は後ろから付いて行くから気にしないでっ!」
と帆乃風。なんだ?変なヤツだな。
楽器店に着くと早速ドラムコーナーに足を運んだ俺達三人。ギターやベースは同一フロアに置いているこの店、ドラムは地下に独立して置いてあった。どこを見てもドラム、ドラム、ドラム。まさにドラム一色だった。
「凄いっすね!僕、なんか緊張してきました。どうしたらいいですかね?」
那秧が不安そうにキョロキョロしている。
「大丈夫、まずセットから見てみよう?こっちよ、ナオ君!」
まるで小さい子供をあやすかの様な仕草で那秧を誘導する帆乃風。物理的には那秧の方が断然デカいが。
「どうもです、帆乃風さん。」
そう言って那秧は帆乃風に付いていった。
セットのフロアはドラムキットがすでに並べられていて、いくつかのヴァージョンが置いてあった。ワンバスベースの三点セットから、ツーバスを派生させた様な多数のタイコからなるキットまで様々なドラムが並んでいる。今更だが俺はぶっちゃけドラムについての知識はあまりないから、もう今日は帆乃風に任せてしまうつもりなんで、あしからず。
「ここで大まかなスタイルを決めて、ドラムを組んでみるのがいいと思うわ。」
「じゃあバスドラから。これは一つでいいですかね?でもツーバスには憧れますね!」
「ツインペダルを使う手もあるわ。それならツーバスと同じバスドラミングが可能よ!」
「へぇ〜そういうのもあるんですね!?さすが帆乃風さんです!そうしようかな?」
「あ、いや、私は、たまたま知ってただけだから…ナオ君が好きに決めていいのよ!?」
帆乃風は慌てて両手を横に振る。
「そ、そうだ!スネアを決めましょ、そうしましょ?!」
なんだなんだ?帆乃風はさっきからしどろもどろで?那秧よか緊張してないか?
「スネアってどんなのがいいんですか?」
「スネアの口径が小さくなると音が高くなるわ。そして深さが深いほど中低音が強くなるの。だからまずは口径と深さを決めて選ぶことが先決ね。」
「なるほどです!」
那秧は帆乃風に教えられながらも、メモを取っていた。まるで修学旅行の高校生みたいだな。マメな奴だ。
「じゃあ次はハイハットね。」
「了解です!」
「これは閉じた時の音が重要だから、空気が入らないような構造のものがいいのよね。トップ側のホールド性がしっかりしてれば問題ないわ。あと、ペダルの踏み心地も忘れないで確認ね。」
「ペダルの踏み心地も確認…と。」
順調に説明する帆乃風とメモする那秧の息が何となく合ってきている気がする。この二人以外といいリズム隊になれるかもな。
「タム類はどういう組み合わせがいいんですか?」
「そうね、数が多ければフィルのバリエーションが豊富になるわ。その分難易度は上がるけど、やってみる価値はありそうね。」
「これは奮発してみようかな?上はハイとロー、フロアは2つのを合わせて4つとかどうですか?」
「うん、いいと思う!」
「じゃあ次はシンバルですね!」
「そうね。シンバルは叩いてみるのが手っ取り早いかな。自分の耳で聴いて決めるのが一番いいと思うわ。まずは2つで、それぞれ高低はっきりした音が出るようなものが良いと思う。今までのタイコもそうだけど、満足がいくまで叩き比べてしっくりくるのが、ナオ君にとって一番いいドラムになる筈よ!」
「さすがですね!」
「最後にスティックだけど、選ぶときは、木目が真っ直ぐなものがいいわ。迷ったら平らなところでステックを転がしてみるとわかるわ。これも、握ってみてしっくりくるのが良いね!」
「ありがとうございます!じゃあ後は実際に触って叩いて決めていきますね!」
「頑張ってナオ君!分からなかったら私に聞いてね!」
「ハイ!」
那秧はそう応えてバスドラからドコドコ試奏を始めた。しかし帆乃風もよく頑張ったな。ドラムの説明と言えど、アイツがこんなに喋ったの始めてなんじゃないか?恥ずかしがって顔が赤面してたが。そして今日の俺の出番のなさ…泣けてきたぜ(笑)
「なあ、帆乃風。」
「何?鋭士さん?」
「ドラムってやっぱ難しいよな?那秧みたいに初心者でも数日、数週間程度で叩けるようになるものなのか?」
「うーん、完全にマスターするのは難しいわ。でも、上達するなら数日程度でも大事な時間だと思う。それにナオ君ならきっと凄いドラマーになれるって思うし、私がドラム誘ったんだからナオ君を頑張って応援したいし、私ベーシストだからナオ君を支えてあげたいし!ナオ君が頑張ってくれるなら私も頑張れるし!それにっ、それにっ、えーと、私っ、あんなに楽しそうなナオ君を見て安心したの!」
「…俺は帆乃風のトークが終わって安心したよ。」
「えっ?」
「いや、何でもない。とにかく那秧ならやってくれるよな!帆乃風も頑張れよ!」
「そ、そうね!」
ああなるほど、そうか。この娘は多分、那秧の事が…。そう応えた帆乃風は耳まで真っ赤にしていた。
そんな彼女をよそに那秧は黙々とドラムを吟味していた。スネアを叩いてみてはタムを叩き、シンバルをちょいちょい叩いてはハットを踏み踏み。見てたらなんかカワイイ?そんな様子で約一時間が過ぎた。
「大体決まりましたよ!予算が予算なんで安めに選んでみました。」
那秧が選んだのは、シングルのバスドラにツインペダル、スネアは大口径で浅めのもの、タムはハイタムからフロアタムまで計4つで、ハイハットとクラッシュ/ライドシンバルの構成だ。
「なかなかよさそうじゃん?でもツインペダルって高いんじゃないの?」
「そこは妥協して特価品をチョイスしてます!でも結構いいやつですよ!ちなみにツインペダルは帆乃風さんの案ですよ。」
「えっ!?そんなの気にしなくていいのに…。」
帆乃風は那秧にそう言われて頬を桜色に染める。
「ん?ちょっとまて那秧。このセットだとどう計算しても70000円は下らないぞ?確かお前予算50000万って言ってなかったっけ?」
俺はセットの一つ一つを電卓で計算したが、那秧の予算をはるかにオーバーしていた。やはりツインペダルが利いているのか。
「そこなんですけど、実は予算引き上げているんですよ、僕。だから何とか大丈夫です!」
「そうなのか。でもいいのか?そこまで無理しなくてもいいんだぞ?」
「そうよナオ君、やっぱりシングルペダルにした方がいいんじゃない?」
「いえ、これは僕の意志で決めたので。僕はこれで叩きたいからこれでいきますよ!」
「そっか、分かった!頑張れよ、那秧。」
「ハイ!」
それから店員に注文書など購入の書類を作ってもらい、金額を出してもらったその時だった。
「ちょっと待ったぁ!ナオ!!」
この声は?!咲姫!?
「アンタ、何バカ正直に全額払おうとしてんの?アタシがガチでまけさせてあげるからっ!」
「咲姫さん?!何で此所に!?」
「様子が気になって来ちゃったの!」
だそうだ。俺はなんか激しく嫌な予感がするが。
「ちょっとそれ見せて!えーと、ひい、ふう、みい…72800円?!たっか!?コレちょっと値段下がんない?」
「はぁ…。」
咲姫は注文書を見て店員にまけてもらうよう聞いた。
「ちょっと咲姫、あまり無理言わないでね?」
「そうだぜ?まあ、ちょっとくらいならいいけどよ?」
「分かってるって♪」
「これでいかがですか?」
店員が示した金額はジャスト70000円。まあそんなところだろ。まけて貰えるだけ有り難く思わなばな。しかし、咲姫は納得いかなかったらしい。
「いやぁ〜アタシはその〜ぶっちゃけ7の数字が下がってくれれば嬉しいんだけど〜♥」
そんな咲姫に那秧が耳打ちする。
「咲姫さん、もういいですよこれで。」
「何言ってんの!こんなのまけた内に入らないから!ホラッアンタのドラムなんだから頑張ってまけなさいって!」
「どうすればいいんですか?」
「そんなの自分で考えなさいっ!」
何やらコソコソ話す二人。オイオイ、頼むから余計な事はするなよ?
そして那秧が声を上げる。
「スミマセン店員さん!」
「はい?」
「僕が一発ギャグをやりますので、それでまけて下さい!」
「はい?!」
な、何言ってんの、那秧!?
そして那秧は本当に一発ギャグを始めてしまう。
「ヤベッ!ドラム買ったはいいけど、椅子買うの忘れてた。はぁ〜ドドスコスコスコ、ドドスコスコスコ、ラブ注入っ♥」
「…?!」
「キャハハハハハハッ!!那秧っ!アンタ最高ッ!!」
ああ…那秧。お前は…。俺は信じてたんだぜ?そうだ、俺は信じていたんだ、お前はそんなことするヤツじゃないって…。お前までもう俺の手の届かないところに逝ってしまうのか…。短い間だったが、俺は今日という日を永遠に忘れないぜ?
そんな那秧を見て店員は絶句してしまった。この状況で困惑してしまうのも無理はない。
しかしその状況を嘲笑うかの様に、さらにこの後悪夢が襲いかかる。
「わ、私もやりますっ!!」
そんな様子を見ていた帆乃風が特攻してきた。
「オイッよせッ!!」
俺の制止は虚しく振り切られてしまう。
「吟詩ます。…最近これって私だけ〜と〜素朴に思うこと〜
マジックカットの“こちら側のどこからでも切れます”が〜あ〜あ〜…
全然切れない事〜
あると思います!!」
「ギャハハハハハハハッ!!はぅッ!?ごほッがはッ!!くッ、苦しい〜!!」
帆乃風まで…なんてことを…。てか、ギャグが古くないか?そしてドヤ顔はやめろ!つーか、お前等いい加減にしろっ!!
「はぁ〜オカシイ!てかアンタも何かやりなさいよ、今スグ。」
「俺は今スグこの場から消えたいわっ!!」
店員は三人の押し(二名はギャグだが)に負けたのか、注文書の値段を書き替えて俺達に見せた。
「…分かりました、ではこの値段で手を打ちましょう。宜しいですか?」
そこには二重線で直されて57800円と書かれていた。マジかよ!?
「あと、椅子忘れてましたね?サービスでつけておきますね。」
「これでどう?いいよね?那秧!」
「はい!もう感激です!有り難うございます咲姫さん!それから帆乃風さんも!」
「良かったね、ナオ君!」
「まあ、アタシの手にかかればざっとこんなモンよ♪」
はぁ〜全くなんて奴らだ。まあ当初より15000円も安く買えたから喜ばしい限りだが…出来ればもうちょっとやり方を考えて欲しいよ。
それから那秧の元にドラムが届いたのは一週間後の事。俺達は5人で那秧の家に集まりドラムの披露会をすることにした。那秧の家は実家で、ドラムを置くスペースも十分にあった。今は宅配のトラックから次々とドラムの箱が那秧の部屋に搬入されている最中だ。
「重いから気をつけてくれ!」
「O.K.エー坊!」
「ナオ!これどこに置く?」
「そっちの端でいいですよ!」
「ナオ君、これで最後ね!」
「ありがとうございます!」
5人で搬入したからあっという間にドラムは部屋に並べられた。組立ても郁斗と帆乃風が頑張ってくれたのですぐに完成した。
「うん、凄くカッコイイね!これがナオちんのドラムかぁ!」
「ナオ君にピッタリよね!」
「いいなぁ〜ナオは。アタシもドラムやろうかな?」
「オマエはヴォーカルだろうが。」
「いいですよ咲姫さん!叩きたかったらいつでも言ってください!」
「さっすがナオ!分かってるじゃない♪」
「じゃ、じゃあ私も叩きたいな!」
「いいですよ!」
「オレもいいかな?」
「もちろんです!」
オイオイお前等、全く!那秧も、お前はいい奴だが何かいい奴のベクトルがズレてんだよな。
「鋭士さんも是非叩いてください!」
「ん?ああ、そのうちな!ま、とりあえず咲姫には気をつけた方がいいぞ?何するか分かったもんじゃないからな。」
俺はあえて咲姫に聞こえる様に言った。
「ふん!アタシはナオのドラムよりアンタを先に叩きたいわ!」
「私はナオ君に叩かれたいな…。」
何言ってるんすか?帆乃風さん?
「まあまあ落ち着いてサッキー。それよりナオちん、ちょっと座って叩いてみようか?」
「そうっすね!へへ、ちょっと緊張するかも。」
照れながら椅子に座る那秧。身体がデカいから凄い迫力でなかなか様になってる。パッと見プロっぽいから不思議だ。
「カッコイイじゃん!?ナオ!」
「よく似合ってるよ、ナオ君!」
「ハハ、そうかな?でも全く叩ける気がしないっす。」
そうだ。そうだった。那秧は全くの初心者だ。見た目だけカッコよくても、叩けるようにならないとな。
「とりあえず8ビートから練習してみようか。」
郁斗はクリック(メトロノーム)を起動させスティックを手にすると、ハイハットのペダルを閉じてチッチッと叩いた。
「こうやってクリックに合わせてハットだけでリズムを刻んでみよう。」
「分かりました!やってみます!」
那秧は郁斗からスティックを受け取ってハットを叩き始めた。
チチチチチチチチ…
「さすが、ドラム○ニアやってるだけあってリズムはとれてるな。」
「んで、そこにスネアを加える。場所は8区切りのハットの3と7で…、まあ見てて。」
チチタチチチタチ…
「ついでにキック(バスドラ)を1と5に入れると…。」
ドチタチドチタチ…
「アレンジして…。」
ドチタチドドタチ…
「さらにアレンジして…。」
ドチタドドチタドチチタドチドタド…
「郁斗上手いな?やってたのか?」
「いや、オレはこれ以上は出来ないから、後はナオちんがやるしかないよ。」
「さすが郁斗さんです!僕頑張りますね!」
そう言って那秧は黙々と始めた。
ドチタチドドタチドチタチドドタチ…
2時間後…。
「あーっ!くっそ〜イイトコだったのに〜!」
「残念だったねサッキー。でも惜しかったよ?」
「郁斗アンタ強過ぎ!超必躱すとか有り得なくない?ランちゃんの実力はこんなもんじゃないのに〜!」
ドチタチドドタチドチタチドドタチ…
「今だっランちゃん!真・多段斬烈波!」
「甘いよ、光刃衝炎斬・改!」
“ケイ、オー!”
「ギャー〜?!また負けた!?」
「ハハハ、残念!」
ドチタドチチタドチタチドタドタド…
「ほら、この技から繋げてコンボ稼ぐんだよ。」
「えーと、こうねっ?」
“ケイ、オー!”
「うぎゃ〜!!」
「だーっ!?うるせぇぞお前等!?」
“ユー、ルーズ!”
「やかましいっ!」
「何よアンタ?一人で騒いで?」
「何よじゃねぇ!那秧が一生懸命練習してんのに何シカトしてゲームしてんだよ!」
「別にいいじゃない!アタシがナオにあれこれ言ってもジャマになるし。」
「あのな、もう十分邪魔だよ!帆乃風も何か言ってやってくれよ。」
「スー…クー、ダメよ…ナオ君…、スー…」
「寝てんのかよ!?つーかどんな夢見てんだ?!」
「ノッカは疲れてたみたいだね。そのままにしておこうか。」
「僕なら大丈夫ですよ、鋭士さん!咲姫さんも全然邪魔なんかじゃないですよ!」
「でしょでしょ?どう鋭士、言いたい事はそれだけ?アンタは小さい事気にしすぎなの!」
「くっ!わーったよ。那秧がそう言うんならしゃあないよな。で、那秧、どうだ?あれから結構時間経ったけど。」
「8ビートはほぼイケますよ。シンバルとタムもそれなりに組み込みましたし。」
「そっか。しかしお前よくやるよな、この環境で。俺ならキレて全員おっぽり出してるところだぜ?」
「僕はいいんですよ!形はどうあれ皆がそばに居てくれるだけで!」
「そっか、やっぱ那秧はいい奴だな。」
「そうですかね?」
ドチタチドドタタドチタチチドタド…
そう言って那秧はまたドラムを叩き始めた。ホントよくやるよな。しかし有り得ないのは、那秧のドラム音と咲姫の奇声の中で安らかに眠る帆乃風。しかもベッドで。なんかアブナイ夢を見ていたようだが…?
それからすっかり遅くなり、俺達は那秧ん家を後にすることにした。あれから帆乃風が起きたところで那秧はドラムを中断させ、咲姫と郁斗がやってた格ゲー“戦国スピリット”を皆でやった。咲姫じゃないけど格ゲーも中々楽しかったな。
「じゃあ俺達帰るな!悪かったな騒がしくして。」
「私もいつの間にか寝てしまって、ごめんねナオ君。」
「いいですよ!全然O.K.です!また遊びに来てください!」
「また来るよ、ナオちん。ドラムも練習しなきゃだね。」
「アタシはランちゃんが勝つまで練習しなきゃ!」
「それは別にしなくてもいい。」
「O.K.です!今度は僕もランちゃんで戦います!」
「じゃあアタシがどっちが本物のランちゃんか白黒つけてあげるっ!覚悟しなさいよ!」
「望むところです!」
はぁ、那秧もいつの間にか咲姫に感化されてんな。ウチのバンドでは那秧だけは汚れないでいて欲しいよ。ああ、しつこいかもしれんが、ウチのバンドに“ランちゃん”は一切関係ありません、はい。
「じゃあまたな!」
「バイバイ!ナオ!」
「何かあったら連絡してね?ナオ君!」
「それじゃあ、またね、ナオちん。」
「気を付けて帰ってください!ではでは!」
俺達は那秧に別れを告げて、郁斗は車を走らせた。
ということで、ついに那秧がドラムを手に入れた。その瞬間事実上俺達SHINEはバンドとして完成されたと言う訳だ。メンバーは一人一人個性的だが、逆にそれがバンドのカラーを出しているんじゃないかなって思う。さらにこの先俺達に何が待ち受けているか見当が付かないが、その何かが俺達の音になってくれればこの上なく幸いだ。
第一部:集結の章 -完-




