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4章:健気な遊戯者が打音を生む瞬間 2

「それじゃあ、ドラマー那秧(ナオ)に乾杯!」


「かんぱーい!」


あのあと俺達はゲーセンで仲間になった那秧を連れて居酒屋に来ていた。さらに郁斗も呼び出して那秧を紹介することにした。

本当はファミレスで食事をする予定だったが、帆乃風が昼間のパチンコで予定外の収入を得たおかげで居酒屋になったわけだ。ちなみに前に来た居酒屋だったから、若干気まずい…。よせばいいのに、もう。


「キーボードの郁斗です。宜しくね、ナオちん。」


「はあ…、那秧です。宜しくです。」


郁斗は那秧をナオちんと呼ぶことにするらしい。好きだよな郁斗も。


「今日は私の奢りだから遠慮しないで食べて飲んでね、ナオ君!」


「ちょっと!ナオっ?アンタウーロン茶ってどういう事!?ここは居酒屋だよ?!何考えてんの?!」


帆乃風は昼間どんだけ儲けたんだか…。

咲姫はテキーラ片手にナオに絡む。お前はまたそんなもん飲んで…。


「いや、僕はまだ未成年だから飲めませんよ。だからお酒も飲んだ事ないです。」


「じゃあナオちんはまだ19歳かな?」


「そうですね。」


「そんな堅いこと言わないで、ちょっと飲んでみなよ〜。バレなきゃイイのよそんなん!」


テキーラを勧める咲姫。


「オイオイ!止めとけって!那秧、コイツは相手にしなくていいからな!」


「アハハ…。」


テキーラを取り上げた俺は咲姫の前にそれを戻す。


「チッ!鋭士め。余計な事を!」


「あのな!余計な事してんのはオマエなの!頼むから大人しく飲んでてくれよ。」


「ハイハイ、分かりましたよーだ!あっお姉さんっ!テキーラ追加で♪」


チッ、ホントに分かってんのかコイツ?


「来年20歳になりますから、その時一緒に飲みましょう、咲姫さん。」


「ふ、ん。分かった!その時はテキーラで乾杯よ?」


「もちろんテキーラでいきましょう!楽しみですね!」


「さっすが!ナオは素直で話の分かるヤツじゃん!どっかの誰かと違ってね!」


あんだよ、ガンたれてくんなよ?オマエみたいな素直じゃないヤツに言われたかないね!


「ところでナオ君はどんな仕事してるの?」


「僕は今は何も…何かしないといけないのは分かってるんですが…。」


「バイトとかしないのか?」


「どのバイトもイマイチピンとこなくて。」


「ウチの美容室で働いてみるかい?」


「わ、私の整備工場なんかどう…かな?」


「アタシのパシりにならない?」


いや、郁斗も帆乃風も専門職だから無理があるだろ。あと約一名アホな事言ってるヤツがいるがな。


「たぶん無理なんで、遠慮しときます。」


那秧はそう応えて春巻にかじりつく。


「ま、俺も今度バイトしようかなって考えてんだ!一緒に探そうぜ!」


「はい、是非。よろしくっす鋭士さん!」


「ところで…ナオちんのその髪はパーマなのかい?」


「えっ?!あ、その…天然です。天パーです。ハイ…。」


キラッ☆


出たよ…、郁斗…。


「よかったら今度縮毛矯正かけてみる?きっと似合うよ?カラーも揃ってるから、興味があったらいれてみるかい?」


「あ、ハイ、…面倒じゃなければ…宜しく…です。」


那秧は何故か顔を赤らめてどもりながら郁斗に応えた。そこで俺は咲姫に耳打ちした。


「オイ、那秧のヤツなんで顔真っ赤なんだ?酒入ってないよな?」


「知らないよそんなコト。はっ!?まさかっ!?」


「なんだ?」


「郁斗に“コイシテル”っとか、キャー!!」


んなアホな!ホモじゃあるまいし!咲姫に聞くだけ時間の無駄なようだ。俺は本人に耳打ちする。


「どうした?顔真っ赤で耳まで赤いぞ?恥ずかしがってんのか?」


「えっ?!その、僕、あの人に話しかけられると緊張しちゃうんです。郁斗さんカッコイイから…アガっちゃって。」


そうか、そういうことか。とりあえず安心したぜ。“郁斗さんが好きなんです”なんて事になったら俺の手に負えんからな。


「それで、その…僕はドラム持ってないんですけど、ドラムって結構高いですよね?」


「そうだなぁ〜ピンキリだと思うけど、最初は安めか中古のセットでもいいと思うよ?」


「今度楽器店行ってみようよ。掘り出し物があるかもしれないわ。」


「予算はどれくらいかな?」


「5万円くらいですね。」


「それなら何とかなるんじゃない?ちょっと値が張るならアタシがガチ負けさせとかして!」


「僕はどんなの選べばいいのか分からないけど、それなりのドラムが欲しいので宜しくお願いします。」


みんなの会話に那秧は丁寧に応えた。


「ドラム手に入れたら後は練習あるのみだな!」


「そうですね!分からない所は是非教えて下さいね!」


「ええ、もちろん!私がナオ君に教えてあげるわ!」


帆乃風が胸を張る。


「あの、それともう一つ。」


那秧は俺達に聞き出す。


「バンド名ってあるんですか?」


「…。」


「そういえば決めてなかったな。」


「ハイ、ハイ!“キューティーサキ”ってどう?」


「却下。」


「え〜なんで〜?!」


ふざけんな!なんだその自画自賛的な名前は!?


「こういうのはどうかな?“ハードモヒカンfeat.クリクリ”」


「それってメンバー全員ハードモヒカン?!しかもさりげなく店の宣伝してる!?」


「そうだね〜。三つ編み付きで激しくね!」


「絶対ヤダっ!!」


咲姫が猛反対する。よく言うぜ、オマエがその髪型を勧めてきたのを俺は忘れちゃいないぞ?


「はぁ〜。帆乃風はなんかある?」


「…“デトネイション”(異常燃焼)とか?」


うおっ危険な香りが!?


「“ランちゃんと愉快な仲間達”ってどう?」


オマエは黙ってろ!!何度もいうがウチのバンドとランちゃんは一切無関係だ。

しかしバンド名ってなかなか決まらんもんだな〜。ふと那秧をみると店のアンケート用紙の裏側に何やら文字を書いている。


「那秧、なんか考えたのか?」


その紙を覗き込んでみる。


「どうですコレ?」


「なるほど!いいかもな!」


俺はそれを見て納得すると、メンバーに見せる。


「那秧のアイデアでこんなのどうかな?」


残りの三人が那秧の書いた紙をみて、


「咲姫のSと、」


「帆乃風のHと、」


「郁斗のIと、」


「那秧のNと、」


「鋭士のEで、」


SHINE(シャイン)。」


「イイね!それでいこうよ!」


「私達全員あっての名前ね!」


「オレ達らしい感じでいいよね。」


3人は了承してくれた。もちろん俺も。


「良かったな、那秧!俺も気に入ったよ!」


「ありがとうございます!」


「出来れば、後ろに“withランちゃん”って付けたいんだけど…」


「却下!」


新しく加入したドラマー那秧。そして俺達のバンド“SHINE”が誕生した。メンバーは一人一人個性的だが、きっとこのバンドなら素晴らしい音学を生み出してくれると俺は思う。さて来週はいよいよ那秧のドラム購入だな。楽しみにしておくか。


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