序章:冷めた男が目覚める瞬間 1
キャンパス内に午後の講義終了のチャイムが鳴り響く。俺は気怠い眠気から開放されたいが為、大きく欠伸をしながら溜め息を吐いた。
「今日ゲーセン寄ってかね?」
「悪ぃ、これからバイトあるんだ〜」
そんな会話が飛び交うのもこの時間帯。
「よおっ鋭士、今日暇?暇ならカラオケいこーぜ?」声を掛けてきたのはクラスメイトの真行。この大学
に通い始めてからの友達の一人だ。ちょっとテンション高めな奴だが、どこにでもいるような普通の大学生って奴だ。
「いや、今日はちょいとヤボ用があって…」
…別にこれから俺に何かある訳でもない。もちろんヤボ用なんてある訳ない、真っ赤な嘘。じゃあなんでそんな嘘をつくのかって?そんなの答えは一つ。ただ面倒臭いだけ。ここ最近疲れがたまっていて、今日は帰ってすぐにベッドインしようと朝から考えていたところだ。カラオケなんざサラサラ行く気は無い。真行には悪いが、今日の俺は…いや、今日も俺は冷めていた。
「なんだよ〜鋭士は最近付き合いが悪いな。コレでもできたのか?」
そう言って指を立てる真行。
「んな訳ねえよ…」
「ま、いいや。明日から学祭だから今日は帰ってゆっくりしてるのがいいかもな。俺達露店やるからよろしくなっ!じゃあな〜」
そう言って手をひらひらさせて立ち去る真行。はぁ〜と溜め息ついて、重い腰を上げ帰途につく俺。明日から学祭か…だからといって何も目新しいイベントは俺にとっては無いがね。さぁて今日は帰って寝るだけだ。…とにかく俺は冷めていた。
ここで自己紹介を。俺の名は鋭士。今日は帰って寝るだけの大学生。それが俺だ。