八話!ーー前編!だって世界は私の物だから
ぴんぼんぱんぽ〜ん
御早う御座います。1号です。今回は『低脳たる種族にでも分かる手作り料理(入門編)』を御送り致します
今回の御料理は焼きそばです。まず、御好みの具材(キャベツ・人参・ピーマン・もやし・イカ・海老等々)を御好みのサイズにカットします。人参等火の通りにくい物などは薄くするかよく炒めて下さい
「典時!イカが!イカが逃げた!ほら、真っ黒い体液吐き出してる」
「さっさと捕まえろ!つうか何だよ『海陸両用くらーケン』って!」
「作間く〜ん。先生お腹が空きましたよ〜」
「ならこれでも食ってろ金欠教師め」
「先生生ピーマン始めてですよぉ!でも行きますよ〜」
後書きに続きます。それでは本編をどうぞ
「はらしょ〜典時!エビバディプティ〜?」
「等々脳内障害か末期に到達したか。近寄るな伝染する」
「ノイン様。簡潔に申しますが自害と鋼の粛清どちらが宜しいですか?」
「あれぇぇ!死亡フラグ確定!」
朝から喧しいものだ
制服に袖を通し朝食のトースターをかじりながら横目でノインを見る
相変わらずパンクした頭髪で珍しく朝から元気だ
「作間様。後27分18秒で学校に行かねばなりません」
「もうそんな時間か」
俺はコーヒーの最後の一口を飲み干しバック片手に家を出る
後ろでは1号さんとノインが見送っている。頼むから止めてくれ。最近御近所さんから好奇の視線を送られているんだ
ほら、吉田さんの奥さん手を振ってるよ
「いっちご〜さ〜ん。今日のご飯な〜に?」
「今日の朝食はピザトースト風ハムサンドとワカメスープ型タマゴスープです」
「いっただきま〜す」
決して1号さんがふざけてる訳ではなく、ノインのご要望なのです
「はむはむ。おりょ、こにょおべぇんとょうなに(おりょ、このお弁当なに)?」
「そちらは作間様の御弁当です。御持参願ったのですが『校内で敵を作るわけにはいかない』との事で断られました」
「敵?学校って戦場なのかな?」
「私は此方の世界に来て日は浅いので詳しくは存じておりませんが勉学に励む場と聴いております」
「ふ〜ん。じゃあ行こっか?典時の学校」
ノインの問いに1号さんはスカートの裾を摘まみ上げ一礼をする
「主に付き従うが侍女の務めと。ノイン嬢、御命令を」
「一個師団に相当する火器とお弁当持って突撃ィィィ!」
「仰せのままに」
ゾクッ
四時限目の授業中に極度の寒気に襲われ睡眠から醒める。今は社会か
「あぁぁ!作間君が起きたぁ!先生嬉しいですよ〜」
「佐々木先生。生徒の前で両手あげてハシャぐのはどうかと思うぞ。恥を忘れたか?」
「寝起き一言目から毒舌ですかぁぁ!先生泣いちゃいますよ!」
しかしなんだ今の悪寒は。睡眠を妨げる程の悪寒なんて数年振りだぞ
「作間作間、先生マジで泣いてるぞ」
「教えてくれて助かるクラスメートA」
「僕は高枝だよ!」
「そうか、覚えておくよ高枝」
隅で本気で泣いてる佐々木先生を取り敢えず無視して外に視線を送る
願わくはば平穏を
「ノイン様。11分24秒程で目的地に到着致します。準備の程を宜しく御願い致します」
「よっしゃぁぁ!天下取るどぉぉぉぉぉ!」
「ノイン様。余りお弁当を乱暴に扱わないで頂けますか。中身が崩れてしまいます」
「刀をよ〜〜い!斬り込み始めぇぇぇぇ!」
歯止めの効かない嵐はすぐそこまで迫っていた
お昼休み10分前。一般生徒は学食を得るために静かな殺気を放ち、教師は延々と教科書をそのまま読んで時間を潰している
時計の長針が天を目指し動くにつれて生徒は空気椅子状態で臨戦態勢をとり、弁当持参組は嵐に巻き込まれないよう机に密着している
「え〜これにより古代ローマにおける文化の発展は・・・・・」
キーンコーンカーンコーーーーン
教室内の空気が変わる
「あ〜、それでは本日はこれま――――」
『起立っ!礼っ!』
20を越える戦士は礼90゜という究極姿勢
《ultimate form》
終結の咆哮
《conclusion of howl》を発動させる
教室に響くお礼の挨拶は既に周りの戦士に対する攻撃なのである
志乏しい輩が聴けば竦み上がって動けなくなる程の周波数なのだ
廊下側の人間(この席は必ず弁当持参組)は戸を勢い良く開け放ち、そこから飛び出す戦士
そしてその遥か後方を歩くのは作間典時である
彼はのんびり二階の窓を開けると雨避け用の小さな屋根を歩き渡り廊下の屋根に飛び移る
既に食堂を確認した彼は悠然と歩を進める
「なぐごはいねぇぇぇぇぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
屋根で硬直する男
ゆっくりと奇声の聞こえた方に視線を送ると黒煙が立ち上ぼり、定期的な破裂音と轟く爆発。それに重なる様に宙を舞う見知らぬ学生と教師
俺は何も見ていない
そう自分に言い聞かせ、大きな一歩を踏み出そうとする
「てぇぇぇんじぃぃぃぃ!何処いった〜!お弁当持ってきたよ〜」
屋根から飛び降り全力で校門に向かう
校舎の角を抜けるとそこには小さな戦場が広がっている
まさに戦争映画の終盤みたいに平地に固められたグランドの面影はなく、抉られた穴からは煙が漏れ、ボロ雑巾みたいになった人々は無惨な姿で転がっている。ちょっと歩くに邪魔だな
「さ、作・・間、これを・・・見ても毒舌か」
「おや?これは隣のクラスの逸樹ではないか。何を遊んでるんだ」
「いや・・・・もういいや。アレお前の知り合いだろ・・・・・・止めてくれ」
そこには紅の炎に囲まれながら毅然と立ち、撃ち終えた銃(βーSPETSNAZ※逸樹情報提供)を捨て、又々スカートの中からショットガン(TACTICAL LAUNCHER※以下略)のコッキングをスライドさせる鋼鉄の侍女
「何をしてるんだ?ここにアフガニスタンの惨状を再現するつもりか?」
1号さんは一礼すると更に手榴弾の安全ピンを軽く抜き校舎の準備室に投げ入れる
中で誰かか悲鳴を上げて飛び出してき、数秒後には色んな備品が飛び出した
「ノイン嬢の御命令です。『学校に着いたら制圧有るのみ!典時以外は敵よ!』との事で。先程武装した部隊が応戦してきましたので排除いたしました」
ああ、逸樹ってサバゲークラブにも入ってたな
「1号さん、俺とアホ精霊どっちが階級上?」
「作間様です」
即答ですか
「なら即刻破壊活動を終了。これより馬鹿の捜索を開始。見付け次第周囲を傷付けずに確保。但しアホ精霊には何をしても構わん」
「仰せのままに我が主。内に流れる血は主の要望に潤いを。鋼の四肢は主の要求に答えを」
二丁の拳銃(M92F+CZ75)を構え颯爽と校舎に向かう
今日の袖字は『少年よ、諦めを知るな』だった
『だが私は知っている』
逸樹は変な遺言を残して天に去っていった
学食で『これでアナタも明日から腹黒ワッサン』と『チャイルド練乳』を難とか購入し、漸く昼食にありつけた
下では小さな悲鳴が木霊し、破裂音(模擬弾)が連射している
グランドを見下ろすと見たこと無いゴツゴツした岩みたいなのがセッセと補修工事を始めている
「よう若造元気か。ん?後始末に来てやったぞ。ん?」
「・・・・・・地位最上級民主最下層のイマか。アレはお前の部下か?」
「てめぇ久し振りの挨拶が毒舌ってどんなもんよ。ん?深く心傷付いたぞ。ん?」
ああうざってぇ・・
「で、その格好なんだ?スーツにネクタイ。どっちもかなりの値がすると思うが?」
「ああこれ?これはこっちの世界での仕事着。ん?いつもは代役使ってっけどたまには本人出ないとよ。ん?ほら、ロシアの国防って所のトップ」
は?ロシア?
俺はしばし考え答えに至る。遂に急性ノイン型痴呆症候群に感染したか。空気感染を超えた空間感染するようだ。実に恐ろしい。取り敢えず感染しないためにも自我をしっかり持って対応しよう
「寄るな。今すぐ自分の世界に帰るがいい」
「お前本当に鬼だよ。スッゲー傷付いたなぁぁぁぁぁぁ!」
スーツ姿のイマが余りにも鬱陶しく泣くので校舎の屋上から蹴り落とした
どうせノインと同生物だ。死にはしないだろ
遥か下で何か凄い音がしたが気にするのはよそう
そうこうしてると昼の終了を告げる鐘がなる。急いで少ない昼食を押し込み校舎に戻る
流石に英語をサボる分けにはいかないからな。須藤先生は後処理が面倒で仕方ないし
廊下を疾走し、ギリギリで教室に飛び込む
そこにはカオス(混沌。原初にできた裂け目の意。ギリシア神話における原始混沌の神・keiosとされている。対はcosmos)が広がっていた
先に謝辞だが先程の無駄な解説は忘れて結構だ。少しばかり状況が読めなくてな
「ノイン様〜」
「ノインお嬢様〜」
「お姫様〜」
「おはほほほほほ!私の天下よ〜!」
教卓にふんぞり返るアホとひれ伏すドアホ
そしてアホの隣に首輪の紐を握る侍女。無論首輪はアホに繋がってある
1号さんは約束をちゃんと守ったようだ
もういいや。疲れた
「作間様。ノイン嬢の確保完了致しました。如何致しますか?」
「シメとけ」
ぴんぼんぱんぽ〜ん
如何でしたでしょうか?それでは皆様も試食です
「おかわり!」
「せ、先生もですよ!」
「おい、俺の食った奴出てこい」
「ち、ちがうも〜ん」
「はわわわぁぁぁ。知りませんよ〜」
それでは皆様、また次回御会い致しましょう。
御相手は、『一家に一体あれば便利、だけと私の主は一人だけ』の精巧人形、1号が御送り致しました
※BGMは作間様の拳の快音