六話!ーーダイナマイトフェスティバル〈開幕の鐘〉
チャラッチャッチャッチャ〜♪
ってあれ?ディスク(ラジカセ)は?
ちょっとディレクターディスクは?
「あ?今盛り付けしてんだから少し静かにしとけ」
ちょっとディレクター。仕事してよ〜
「黙れ」
グスン
ぴんぽ〜ん
気の抜けたベルの音に頭を上げる
昼過ぎの来客とは珍しい。まさか金欠教師が昼飯までたかりに来たのか?
隣で爆睡するノインを放っておいて玄関に立つ
「どちら様ですか?」
戸を開け放つと一人の女性が立っていた
「初めまして作間さん。ノインの母、パラノアと申します」
また問題が発生したか
居間にて対峙する俺とパラノアさん、そしてやたらとガタガタ震えるノイン。もう上下の落差が5cm近くなっている
しかし何がノインをここまで震えさせるのか
あれか?パラノアさんの肩に乗ってる妙な小動物か?しかしアレはアレで可愛いんだかな
「まふ〜〜」
小動物が鳴いた!まるっこい真っ白毛玉に猫みたいな耳。小さい金色の目がパラノアさんに何かをねだっている
「あら、お昼の時間だったわね。ほら、お食べ」
パラノアさんは懐から銀色のビー玉みたいなのを取り出し宙に投げる
するとまふ〜と鳴いた小動物はキュピーン瞳を輝かせ肩から飛びあがり、モシャモシャの口を一杯に拡げた
トラウマになりそう
剥き出しの牙に糸引く唾液、伸びる舌は標的のビー玉に絡み付き獲物を完全に捕獲した
ちなみに大きさは野球ボール程なのだが口を開いた途端内側から溢れでてきたのだ
口が
そして俺は見てしまった。口の奥、暗闇の中に煌めく眼光・・・・・・
バグン!
「(ガシュッガシュッガシュ)まふ〜♭」
これは確かにノインが震えるのが分かる
「そ、そそそそそそそそそれでママママ!何でこっちにににに来たの?」
ガタガタ震えまくるノインはなんとか人語を話している。若干聞き取り辛いのは無視しよう
「あらノインちゃん、お手紙送ったじゃない」
にっこり微笑むパラノアさんはテレビの上にある封筒を指差す
はて、あんな所に封筒なんてあったかな?
「ノイン、手紙が来てたって気付いてたか?」
「ううん、おかしいな。天界からの手紙なら気付くのに。あれ?この封筒って・・・ママ!」
「あら、これって見たら忘れる封筒だったわ。ゴメンねノインちゃん」
なんだ、そのデメリット満載の封筒は
ノインは早速手紙を読み出した
「は・・・はいけい?明日行きます」
「わ〜ノインちゃんが拝啓って読めた〜ママ嬉しい〜」
親馬鹿全開のパラノアさんは手を叩いてはしゃいでいる
とまあそんな訳で二者面談みたいな事になったのだがノインは相変わらずガチガチに緊張している
「で、パラノアさんは何で来たんですか?」
お茶菓子を置き、腰を降ろす。直ぐ様ノインがしがみ付いて来たので隣に無理矢理座らせた
「やっぱり我が子が知らない所で生活してると思うと不安でしょ。だから見に来たの」
渋茶を啜るパラノアさんは目を細める
「悪い人の所にでも居たなら・・・・ねぇ」
完全に眼が笑っていない。殺る気満々だなこの人は。ノインもまたガタガタ震えだした
「でも安心。作間さんって凄い良い人みたいだから」
また微笑むパラノアさんの眼は元に戻ってくれた
「それでね、逆にノインちゃんが迷惑掛けてないか心配なの。作間さんってとっても優しいから」
その瞬間隣で短い悲鳴が上がり、他の部屋に逃げる足音が聞こえる
「それで、ノインちゃん何か迷惑掛けてないですか?」
「て、典時!後生だから!後生だから穏便に!」
ちょっと聞こえ辛い救済コールが後方で聞こえる
「ええ。ほぼ毎日何かしらやらかしてますよ」
「てぇぇんじぃぃぃぃ!!おに!」
これでこいつにゃいい薬になるだろ
「例えば昨日寝てたらいつの間にか部屋に侵入して俺をカジってました」
「みぎゃあぁぁぁ!」
後方が一瞬光り、妙な奇声が聞こえる
振り替えると襖から此方に尻を向けているノインがプスプス煙を上げている。はしたない子だ
「他に何かありますか?遠慮せず言ってください」
「公園で小学生の顔面にサッカーボールぶつけました」
みぎゃあぁぁぁ!
「夜中意味もなく起こして悲しい手品見せてふて寝しました」
むみゃぎぁぁぁあぁあ!!
「知り合いの家で無礼千万やってます」
むぃむみぎゃあぁぁぁあぁ!!
「あと先月の食費が8万超えました」
「それはいつもの事ですよ。あの子育ち盛りですから」
「でもこの前パラノアさんの料理はちょっとしょっぱいって言ってました。あと種類が片寄ってるって愚痴ってます」
それ言っちゃダみぎゃぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあ・・・・・・・
もう一度振り替えると襖から此方に尻を向けてプスプス煙を上げているノインがいる
時折ピクンピクンと痙攣してるが無視しよう
「ま、そんな所ですかね。小さいのは省きましたが」
「あらあら〜ノインちゃん久々に壊れたわね〜」
全身から帯電した電気をパチパチと鳴らし、爆発した髪と煙あげる服でクルクル回っている
パタン
あ、倒れた
「あはははは、あはははははははははははは」
「ノインちゃん楽しそうね〜」
冷たい視線でパラノアさんを見てるとカメラを取り出し実の娘を激写している
天界は恐ろしい所だ。少しでも上手くやって行けると思ったが大間違いだ
「それで、パラノアさんはその為だけに来たんですか?」
ノインを未だ激写し続ける親馬鹿は首をかしげ此方を見る
なんだその『何言ってるのこの人?』的は表情は
「違うわよ〜。ノインちゃんはついでだもん」
あ、ノインがものスゲー表情してる。雷に撃たれた様なってあんな感じなんだな
「ひっぐ・・・ひっぐ・・ひっぐ・・てんじ〜。てんじ〜!」
「分かった。もう泣くな。ほれ、鼻かめ」
ち〜ん
「で、改めて何の用なんですか?」
「実はテンちゃんに危険が迫ってるの」
テンちゃん!いつのまにそんなフレンドリーな関係になったんだ!
「私達の世界は天地水炎の四界。それに死者の魂の循環を司る輪廻の園で構成されてるの。ほら、前ノインちゃんがテープに録音してたじゃない?」
「そういえばよく部屋の隅で皿を擦って一人言話してましたね」
「違うも〜ん。それ私じゃないも〜ん。悪霊だも〜ん」
「テンちゃん、悪霊がそこに居るわよ!」
「悪霊ですね。取り敢えず3日飯抜きで祓ってみますか?」
「うえぇぇぇぇぇん!典時とママがグルになったぁぁぁぁぁ」
二人で無視した
「それでね、地集界の方でちょっと反発があったの。『地界を統べる我等の許可無く異族を送るな』って。本来なら手続きを踏んで期日内の限定でのみ許される行為なの」
「それを独断で行った結果ということですか?」
エレノアさんはお茶を啜りため息をつく
「旦那が熱血な所があって下界に突き落としたのよ。ほら、獅子は我が子を突き落とすみたいな」
「なら俺に代わって旦那さん殴っておいてくれますか?」
「オッケ〜」
うわ軽いな〜。旦那さんの家庭内地位が見えてきた気がする
「それで、具体的にはどう気を付ければいいんですか?」
その問いに首をかしげるパラノアさん
いや、あんたが首をかしげたら駄目だろ
「実は地集界がどう仕掛けるか分からないの。兵を送るのか地盤沈下起こすのかテンちゃん10倍サイズリアル石像を出すのか検討つかないのよね」
切に最後のは止めてほしい。近所迷惑の代名詞を背負いたくは無い
「まあそんな所だから頑張ってね〜。ファイト〜テンちゃ〜ん!」
「まふふ〜♪」
そう言い残し一人と一毛むくじゃらは光の彼方に消えた
「典時。これって嵐が去ったって言うのかな?」
「いや。地震で言うと初期微動だな」
光に包まれた一人と一匹は置き土産と言わんばかりに盛大な突風を残していった
おかげで部屋がボロボロ。何から何まではた迷惑な家族だ
「ねえ典時」
「なんだ」
「次回は新キャラだね」
言うな!
チャラッチャッチャッチャ〜♪
もきゅもきゅ。ディレクターお代わり〜
「ね〜よ。五人前しか作ってね〜よ」
使えな〜い
「明日から祓ってやろうか悪霊が。滅するぞ」
ひぃぃぃぃぃぃ!リアルモンスタ〜テンちゃん!!!!!!
?「作間様、包丁を使われては後の料理に支障がありますので此方を」
鬼の青★竜☆刀♪
ぴぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・