一話!――脳無し精霊
チャラッチャチャ〜
おはようございます。NNN(ナイス・ノイン・ニュースの略)の時間です。アナウンサーのノインちゃんです♪
この番組は皆さんの疑問から不思議解決まで様々なモノを取材して皆様に御届けします。
それでは皆さんの最後までお付き合い下さい
それでは一旦CMで〜す
AM6:20、起床時間
チュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチュンチョンチュンチュンチュンチュンチュンチュン
「・・・・・うるさっ」
やたら騒がしい雀の大群の大自然の目覚まし。
目が覚めた俺を出迎えたのはベランダ一帯を占領した大自然の目覚まし200匹と、薄緑のショートヘアーに青い澄んだ瞳、ほっそりした顔付きで見た目は15かそこら。俺の学校のジャージ上下を着て目覚ましの群れと一緒にチュンチュンぼざいてる我家の迷惑防止条令を無視した暴飲暴食脳無し馬鹿たれ精霊
「あ〜〜!やっと典時が起きた〜」
その名はノインと言う
先に言っておくと俺は作間典時。まあ何処にでもいる様な普通の学生だ。今年から高校に通っていて一人暮らしをしている。たまたま受かった高校が遠いからこっちのマンションに住んでいる。
そしてベランダで雀の合唱に参加してるのが居候のノイン。あいつが言うには精霊らしい。まあ食って寝るが生き甲斐なんだろうな。詳しい経緯は聞いてないが自分の国から分けありで来てるらしい。迷惑だ
ベットを降りゆっくりした足取りでベランダに近づき
ガチンっ
「はぁいぃぃぃぃ?また典時が鍵かけた〜!でも20回以上やられてる私はもう怖くないもん!」
「ほう、怖くないか。ならこれならどうだ?」
ベランダと部屋を仕切る窓の前に置かれた白くてふっくら炊いたご飯。 そしてちょっとピリから明太子
炊きたてご飯の湯気は窓を曇らせる
「ゴメン典時・・・・・許して・・・・お願いだから・・・・・」
フラフラと崩れ窓に手をつけてまるで神に懺悔するように頭を下げる
「暫く頭を冷やせ」
そう言ってご飯の隣に熱々味噌汁と漬物を添える
「許して・・・・・お願いだから・・・・・・もう雀の合唱しないから・・・・生殺ししないで・・・・・」
カタカタ震えるノインはほっといてさっさと着替える。周りの雀達は心配そうにチュンチュン泣いている
するとノインは何を狂ったのか血走る目で呟く
「・・・・・20匹位で少しは空腹忘れれるかな」
バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ
「ああぁ!待って!冗談だから帰ってきて!独りにしないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ベランダから身をのりだし去っていく雀を懸命に引き留めようとするノインだが鳥業界の裏切りの罪は重いらしく、一匹も振り返る事なく飛び去った
「ひっく、ひっく、ひっく、グスッ・・・・・」
ベランダの隅ですすり泣くノインを横目にいつも通りの朝食。今日はちょと出掛ける予定があるんだよな
「ひっく、ひっく、ひっく、グスッ・・・・・・・・・ひもじいよ〜」
茶碗を片付けた後窓に近付きしゃがむ
「ノイン、食べたいかご飯?」
物凄い速度で何度も頷くノイン
「なら明日から雀の合唱は止めろ。序でに烏も鳩もインコも駄目だ。つうか鳥類禁止。OK?」
「ザッツライト!」
「交渉決裂と・・・」
「嘘嘘嘘ウ〜ソ〜!OKOKベリ〜オッケーです!」
まあ多少は反省しただろうと思い鍵を開けてやる。素早く部屋に転がりこんだノインは愛しの人生の友、箸に頬擦りして声高らかに叫んだ
「ビバ!食卓!!」
結局6杯もお代わりしたノインは満足そうにベランダで涼んでいる
その隙に俺はこっそり部屋を抜け一階の駐車場にあるバイクに跨る。ヘルメットを被りエンジンをかけたその時、天高くから何かが聞こえる
「てぇぇ〜〜ん〜〜〜〜〜じぃぃぃぃぃ〜〜!!!!」
一応俺の部屋は5階なんだが何故ノインはそこから飛び下りたんだ?自殺志願?
ノインは体を丸くしてクルクルと華麗に回転し、バッと両手両足を伸ばしてまるで側転の様に更に回転して地面にスタッと着地
したかったんだろう。だが運が悪いのかこの程度で済んで運が良いのか、ノインは微妙に足首を捻りその場にポテッと転んだ
涙目で体を起こしたノインは映画のワンシーンの様に手を伸ばし、無言の救助を訴えている
「・・・・・・・・」
訴えている
「・・・・・・・」
訴えている
「・・・・・・・」
訴えている
「あ、ポケットにクッキーが」
「もらったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バイク発進
「置いてかないで典時〜〜」
腰にしっかりしがみ付くノインは鯉のぼりみたいに宙に浮いている
まあ気にしないのもいいんだが流石に世間一般の方には良い印象を与えないので仕方なくUターン。ワザワザ部屋に連れていき(注意、ただノインが離れないだけ)部屋に放り投げる
「ったくさっさと着替えろ。今から利下ん所行くから少しは―――」
「利下・・・・キクサゲね!ついに敵陣に乗り込む日が来たのね!」
意気込んで部屋に向かい5分後には何故か旧日本軍の軍服で現れたノイン。肩には刺繍で【トイレにセボ○】と恥じを捨てた覚悟が刻まれていた
「よし、お前は留守番確定だ」
「冗談だから置いてかないでぇぇぇぇ!」
結局普通の私服に着替えたノインを乗せてバイクを走らせる
都心から離れ舗装された山道を登ると見えてきた御屋敷
本名高見沢利下
両親共に外国で働いているのであの屋敷に一人で住んでいる。有能な執事やメイドが沢山いるので不自由はないらしい
こんなお嬢様と一般市民の俺が知り合ったのは5才の辺りだった
高見沢の親父さんが経営する会社の系列に俺の親父が働く会社があり、ちょっとしたパーティーに上司の代役で参加した親父に連れてかれた時に初めて会った
今でも覚えている
両方の親父が難しい話をしていてつまらなさから二人で近くの椅子に座って時間を潰していた時の第一声が
「『つつもたせ』ってどーゆーいみかな?」
「・・・・・・わかんない」
「わかんないか」
今でも思うがなんつうガキだったんだか
そんなこんなで今でもこうして招待してもらっているのだ
でかい門をくぐった辺りで警備員に捕まったノイン
そりゃー三八式歩兵銃を持ってれば捕まるよ
警備員にノインを献上してさっさと屋敷に入る俺
「大和ぉぉぉ!大和の心は助けあいだよ〜〜」
こってり絞られろ脳なし精霊が
部屋に案内され軽くノックをする
「はいは〜い。入っていいよ〜」
中に入ると相変わらずの質素な部屋。8畳程の部屋に机と本棚、そして洋館に似合わない畳と布団
そして座布団に正座してにこやかに手招きするのはこの家の主、高見沢利下である。セミロングの薄い茶髪にほっそりした顔付きと柔らかい表情。大抵の場合は笑って過ごしている
「あれ?ノインちゃんは?」
「警備員に捕まったよ。三八式歩兵銃なんて持ってたから」
「へぇ〜、三八式か〜。撃ちたいな〜」
なんか諦めるしか無いのかなこの子の性格は
なんて考えながら向かいの座布団に腰掛ける
「んで、何か用か?」
「別に。ただ暇だったから呼んだの。ノインちゃんも一緒だから庭で遊ぼうかなって」
すると軽くノックする音がする
利下の返事を聞き入ってきたのは執事さんと半泣きのノインだった
「守兵が拘束しておりましたので御連れしました」
ノインは泣きながら背中にしがみ付いてくる
「大和の心は助けあいだよ〜。なんで置いてったの〜」
「あれは間違いなくお前が悪いだろ」
「そんなんだから栗まんじゅう食べちゃうんだよ〜」
「テメェェか食ったのは!俺の楽しみ盗った輩がぁぁぁぁぁ」
全力でホッペをツネってやった
「イタアァァァァァい〜!許して典時〜」
そんなやりとりをニコニコしながら眺める利下だった
結局その後利下の好意により晩飯を御馳走になり、腹八分目(ノインの場合は米6合に相応のおかず)をしっかり守ったノインは俺の背中で熟睡している
部屋に戻りベットに降ろそうとしたが物凄い腕力と握力により不可。下手に剥がせば肋を持ってかれる恐れがあったので仕方なくそのまま寝てしまった
俺も甘いもんだ
「てんじぃぃ・・・・・マカロニつゆだく御代わり〜」
「溺れちまえ」
もう寝よう
さて皆さん、それでは早速御便りを読みます
ペンネーム匿名さんからです
『我家に押し掛けてきた迷惑このうえない馬鹿はどう処理すればいいですか?』
う〜ん、中々良い御便りですね
ズバリ愛です!そのプリティーガールをこよなく愛する事で全て解決なのです!
匿名さん、一度二人っきりで夜の夜景をみたらどうです?
それでは皆さんまた来週〜。バイバ〜イ