第26話 奪還の刃、魂の誓い ― 前半 ―
地下へ続く風は、冷たく、湿っていた。
王宮旧水路。
封鎖されたはずの古い通路の奥、星華はただ一人、剣を手に歩いている。
灯りは持たない。
影より生まれ、影を裂いて育った彼には、闇の奥行きが“視える”。
(……必ず……迎えに行く)
床に残る微かな黒影の術痕。
夜叉が引きずった“通り道”。
星華はその痕を追い、無言で足を進めた。
――シュッ。
闇から刃が飛ぶ。
星華は振り返りもせず、剣で弾き、踏み込み、暗殺者の喉元へ一撃。
影が地に落ちる。
「……遅かったな、星華」
前方の闇が割れる。
赤く濁った片目。
異様な気配を纏った男――夜叉が、ゆっくりと姿を現した。
「雫月は……どこだ」
星華の低い声。
「焦るな。まだ――生きている」
夜叉は薄く笑った。
「お前を呼ぶための“灯”だ。大切に保管してある」
星華の呼吸が強くなる。
(……許さない……)
「……返してもらう」
「できるかな? 夜死」
夜叉の影が地面から隆起する。
無数の黒刃が、壁と天井を這い回る。
「証明してみろ。お前が“夜死”ではなくなったことを!」
影が殺到する。
星華は突撃。
――一閃。二閃。三閃。
影の刃を斬り、床を蹴り、壁を踏み、夜叉の間合いへ一気に飛び込む。
「……速くなったな」
「守りたいものが……できた……!」
星華の刃が夜叉の頬を掠める。
血が落ちた。
夜叉は舌打ちする。
「……感情など、弱さでしかないと思っていたが……」
影を操り直す。
「それでも……奪った“絆”が、お前をどこまで導くか――見せてもらおう!」




