開店
「んん……よい、しょっ……と…」
薄暗い店内の中、棚の高い位置に酒瓶を置く、背伸びをした白髪の少女の姿があった。
「ねぇ〜お姉ちゃ〜ん!メジャーカップどこ〜?」
その背に声を投げるのは、同じくらいの背丈の赤髪の少女。
「えー?わかんな…うわっ!…っとと」
「っと…姉さん、危ないよ。ケガはない?」
スラリと背が高く、細身の少年が白髪の少女を支えた。
「ん…ありがと。大丈夫だよ」
「ふふっ、良かった。あ、ねぇちゃん。はい、メジャーカップ」
そうして赤髪の少女にカップを渡す少年は、ふっと微笑みを浮かべた。
「おぉ~!さすが弟。気が利くねぇ〜♪」
言いながら、カウンターにメジャーカップを置く。
脚立から降りた白髪の少女は、店内を見渡している。
「アレも…よし。…これも…大丈夫…お酒も…揃ってるね」
指をさしながら確認をする少女に、少年が笑いかける。
「大丈夫だよ姉さん。全部揃ってるし…足りなくなりそうな物は倉庫に入れてあるよ」
「おぉ~!さすが弟。ありがと〜♪」
そうして、開店準備はすすんでいく。
◇ ■ ◇
「みんな〜!お店開けたよ〜」
白髪の少女が店外から戻ってきた。
少年はカウンターでグラスを拭き、赤髪の少女は店内にあるピアノを奏でていた。
「かわるよ、ありがとねぇ」
「うん、姉さん。ありがとう」
カウンターから出た少年は、赤髪の少女の演奏にベースを合わせる。ゆったりとしたジャズが店内に響いた。
リンリン…リン…。
扉の鈴が鳴る。
「あ…!ふふ、いらっしゃいませ」
白髪の少女が、入店したお客に微笑む。
ゆったりと揺れる大きな尻尾。頭の上でぴこぴこと動く白い耳。
そう。ここはたぬき達姉弟の営む、森の中の小さなBar。
「ようこそ。Bar White Raccoonへ」
辿り着いた"あなた"に、どうか幸運がありますように。




