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いろんなショートストーリー集  作者: 霧崎薫


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「選択肢のない世界」(SF)


 目が覚めると、目の前に**選択肢**が浮かんでいた。


**▶ ベッドから出る**

**▶ もう少し寝る**


 何だこれは?


 私は目をこすりながら、宙に浮かぶ二つの文字列を見つめた。どちらかを選べということだろうか。


 試しに「ベッドから出る」を頭の中で強く思った。


 瞬間、私は何の躊躇もなく布団を蹴り、起き上がっていた。


 ――え?


 自分の意思で動いたはずなのに、そうではないような奇妙な感覚が残る。


 夢か? いや、そんなはずはない。これは現実だ。



 洗面所の鏡を見ると、また選択肢が現れた。


**▶ 歯を磨く**

**▶ 顔を洗う**


 ぞっとした。


 選択肢を選ぶまでは、私は動けない。


 試しにじっとしていると、数秒後には**「時間切れ」**と表示され、自動的に「歯を磨く」が選ばれた。私は歯ブラシを手に取り、機械的に歯を磨き始める。


 手の震えが止まらない。



 出社すると、同僚の佐々木が話しかけてきた。


「昨日のプロジェクトの件、どう思う?」


 彼の言葉と同時に、また選択肢が出る。


**▶ 良いアイデアだと思う**

**▶ 問題点があると思う**


 私は恐る恐る「問題点があると思う」を選んだ。すると、口が勝手に動き、私の意思とは関係なく言葉が出た。


「うーん、ちょっとリスクがあるかもね」


 佐々木は頷きながら「なるほど」と答える。普通の会話のように見えるが、これは私の意思なのか?


 私は試しに、**何も選ばない**ことを試みた。


 ……数秒後。


**「時間切れ」**


 次の瞬間、私の口が勝手に開いた。


「良いアイデアだと思うよ」


 違う。私はそう言うつもりではなかった。でも、私の体は私のものではないように、勝手に動く。



 何かがおかしい。


 もしかして、これまでの人生もすべて、**選択肢の結果**に過ぎなかったのでは?


 私が好きになった食べ物、進んだ学校、付き合った恋人……すべて、実は目に見えない「選択肢」に導かれていたのでは?


 私は自由に生きてきたと思っていた。


 でも、それはただ「選ばされた」だけなのではないか?



 帰宅すると、画面が変わった。


**「重要な選択肢です」**


 ……何だ?


 文字が表示される。


**▶ この世界の真実を知る**

**▶ 何も知らずに生きる**


 私は、震えながら「この世界の真実を知る」を選んだ。



 視界が暗転する。


 どこかで、機械の音がする。


 気がつくと、私は透明なカプセルの中にいた。周囲には、私と同じように眠る人々が何百人も並んでいる。


 目の前に、画面が浮かび上がる。


**「あなたは、選択肢を持たない人類実験の被験者です」**


 私は、実験されていた?


 画面は続ける。


**「人間の意思決定プロセスを最適化し、ストレスを軽減するシステムを開発するため、あなたの選択を誘導していました」**


 私は、自分で決めているつもりで、実は決めさせられていた?


 それは、私だけなのか? それとも――


 ふと、画面が消え、代わりに最後の選択肢が現れた。


**▶ 実験を終了し、現実世界へ戻る**

**▶ 実験を継続する**


 私は、何も選ばなかった。


 すると、数秒後――


**「時間切れ」**


 視界が暗転し、目が覚めた。


 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。


**▶ ベッドから出る**

**▶ もう少し寝る**


 私は、静かに目を閉じた。


(終)


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