「紙飛行機の行方」(青春ドラマ)
教室の窓から、秋の風が吹き込んでくる。私は机に座り、ノートに落書きしてる。隣の席は空っぽ。私の親友だった子が転校して、もう3ヶ月になる。
「リコ、宿題出した?」
後ろからカイが声をかけてきた。彼はクラスで一番明るい奴で、いつも手をポケットに突っ込んでる。
「まだだよ。後でやる」
私は適当に答えた。期待なんてない。どうせ先生は気づかないし、みんなだって適当だ。
放課後、校庭に出ると、空に紙飛行機が飛んでた。誰かが投げたらしい。風に乗り、ふわふわ揺れてる。私は何気なく手を伸ばしたけど、届かなかった。
「リコ、あれ拾ってこいよ」
カイが笑いながら言った。私はため息をついて、紙飛行機が落ちた茂みへ向かった。
拾うと、紙に何か書いてあった。「屋上に上がれ」と。字は雑で、鉛筆の跡が薄い。私は眉をひそめた。
「何これ?」
カイが覗き込んできた。
「知らないよ。誰かのいたずらじゃない?」
でも、少し気になって、私は屋上へ行くことにした。カイもついてきた。協力するのは自然な流れだった。
屋上のドアを開けると、誰もいない。風が強くて、髪が乱れる。隅に、古いバケツが置いてあった。中に、折り畳まれた紙が入ってる。私は取り出して広げた。
「『秘密を知りたいなら、裏庭の木の下へ』だって」
カイが目を丸くした。
「マジか!? 宝探しみたいじゃん!」
私は笑った。不安が少し湧いたけど、期待の方が大きかった。
裏庭に行くと、大きな桜の木があった。根元に、小さな穴が掘られてる。私は手を突っ込んでみた。指先に何か硬いものが触れた。引っ張り出すと、古い手帳だった。表紙に「私の夢」と書いてある。
「これ、誰のだろ?」
私はページをめくった。そこに、知ってる名前があった。転校した親友、ナツの字だ。
「え!? ナツがこんなの置いてたの?」
驚きが声に出た。カイが首をかしげた。
「何書いてある?」
私は読み始めた。
「私は自分になりたい。みんなに合わせるのは、もう嫌だ。紙飛行機みたいに、自由に飛びたい」と。
胸が締め付けられた。ナツはいつも笑ってたけど、本当は苦しんでたんだ。私は手帳を握った。手を強く握る癖が、私にもあった。ナツと一緒にいるとき、よくそうしてたっけ。
「リコ、どうした?」
カイが心配そうに聞いた。私は首を振った。
「なんでもない。ちょっと、考えたいだけ」
その夜、家で手帳を読み直した。ナツは学校のルールや友達の期待に縛られて、自分を見失ってたらしい。最後のページに、「リコに伝えたいことがある。いつか会えたら」と書いてあった。
次の日、学校で変な噂を聞いた。転校生が来るって。教室で待ってると、ドアが開いて、女の子が入ってきた。ナツだった。
「ナツ!?」
私は立ち上がった。彼女は笑って手を振った。
「びっくりした? 戻ってきたよ、リコ」
私は走り寄って、彼女の手を強く握った。期待が現実になった瞬間だった。
「どうして戻ったの?」
ナツが少し照れて言った。
「自分になるために、逃げるだけじゃダメだって気づいたんだ。やっぱりここでやり直したい」
カイがニヤニヤしながら近づいてきた。
「おかえり。で、リコ、手帳どうする?」
私はナツに手帳を渡した。
「これ、読んだよ。ナツの夢、私も応援する」
彼女は目を潤ませて、うなずいた。
その後、私たちは屋上に集まった。ナツが紙飛行機を折って、投げた。風に乗って、高く飛ぶ。私はカイとナツの手を強く握った。不安は消えて、自分が何をしたいか分かった。ナツみたいに、私も自由に生きたい。
学校は変わらない。でも、私たちは変わった。自分を押し殺すんじゃなくて、やりたいことをやる。それが私たちの自己実現だった。




