「川沿いの約束」(日常)
朝日が川面に反射し、オレンジ色の光がキラキラと揺れていた。私はリュックを背負い、岸辺に立っていた。名前はサキ。16歳の夏休み、初めての冒険が始まる日だ。
「サキ、準備できた?」
隣に立つタカが笑顔で声をかけてきた。彼は私の幼馴染で、いつも一緒にいる。背が高く、日に焼けた肌が頼もしかった。
「うん、行こう!」
私はうなずき、二人は川沿いの道を歩き始めた。目的地は上流にある「隠れ滝」。村の古老が話す伝説の場所で、そこに行けば願いが叶うって噂だ。私たちの願いは単純だった。一緒にいること。ずっと。
自然の中を進むのは楽しかった。鳥のさえずりが耳に届き、風が髪を撫でた。川の流れは穏やかで、私たちの歩調に合わせて寄り添うみたいだった。
「タカさ、文明って必要かな?」
私はふと思いつきで聞いた。タカは少し考えて答えた。
「便利だけどさ、こういう自然の中の方が気持ちいいよ。スマホも車もいらないよね、今は」
その言葉に私は笑った。確かに、ここでは何もいらない。ただ一緒に歩くだけで幸せだった。
数時間歩くと、道が険しくなってきた。岩がゴロゴロ転がり、木の根が地面を這っていた。でも、私たちは手を繋いで進んだ。協力は当たり前だった。タカが岩を乗り越える時、私が手を貸し、私が滑りそうになると、タカが支えてくれた。葛藤なんてなかった。
昼過ぎ、隠れ滝に着いた。水しぶきが虹を作り、岩の間から流れ落ちる水が美しかった。私はリュックを下ろし、タカと並んで座った。
「すごいね、ここ。来てよかった」
タカが目を細めて言った。私はうなずいた。
「うん。願い、叶えようか」
伝説では、滝の前で二人で同じ願いを唱えると、それが現実になるって。私はタカを見た。彼も私を見返した。
「ずっと一緒にいられますように」
二人同時に、そう言った。声が重なり、滝の音に混じった。喜びが胸に広がった。シンプルで、疑いようのない瞬間だった。
帰り道、川の流れが少し強くなっていた。雨が降ったのか、水かさが増していた。私は少し悲しくなった。
「この冒険、終わるんだね」
タカが首を振った。
「終わりじゃないよ。次は別の場所に行こう。山でも海でもさ」
その言葉に、私はまた笑顔になった。悲しみはすぐに消えた。
村に戻ると、夕陽が川を赤く染めていた。私たちは手を繋いだまま、家に着いた。母ちゃんが玄関で待っていて、笑いながら言った。
「おかえり、楽しかった?」
「うん、楽しかった!」
私が答えると、タカも頷いた。
その夜、布団の中で今日を思い出した。自然の中での時間は、文明の喧騒とは別物だった。私とタカの絆は、滝の前で強くなった。必然だったんだ。だって、私たちは最初から協力してた。裏切りとか迷いとか、そんなの必要なかった。
翌朝、また川沿いを散歩した。流れは昨日より穏やかで、私たちを見守るみたいだった。タカが突然立ち止まり、言った。
「サキ、ありがとう。一緒にいてくれて」
私は少し照れて答えた。
「私もだよ。タカがいてくれるから、楽しいんだ」
川の流れがキラキラ光り、二人の影を映した。願いは叶ったんだ。これからもずっと、一緒にいる。それが私たちの結末だった。




