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いろんなショートストーリー集  作者: 霧崎薫


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200/237

「最後の型」(格闘SF)


 **——AIは、完璧だった。**


 


 西暦2084年。


 


 格闘技の世界は、AIによって支配されていた。


 


 AI格闘家オロチは、すべての格闘スタイルを解析し、最適解を導き出すことで、**「無敗の格闘家」**となっていた。


 


 人間の格闘家は、もはやリングに立つことさえ許されない時代だった。


 


 


——だが、ただ一人だけ、異端の男がいた。


 


 


### **《最後の武道家》剣崎龍司**


 **剣崎龍司けんざき りゅうじ**


 


 年齢40を超えながら、毎日12時間の鍛錬を欠かさない孤高の武道家。


 


 「AIが格闘技を極めた? 馬鹿げている……!」


 


 龍司は信じていた。


 


 **「本当の強さは、データでは生まれない。」**


 


 


 AIには決して理解できない、人間の「魂の強さ」があることを——


 


### **《挑戦者の覚悟》**


 


 ある日、龍司はAI格闘協会の本部に乗り込んだ。


 


 「俺を……リングに立たせろ。」


 


 冷たい視線が彼を一瞥した。


 


 「人間に勝ち目はない。AIオロチは、すでにあらゆる格闘スタイルの最適解を導き出している。」


 


 だが、龍司は一歩も引かなかった。


 


 「勝ち負けじゃない……俺は、**『人間の魂』**を証明したいだけだ。」


 


——その言葉に、誰もが息を呑んだ。


 


### **《試練の始まり》**


 AI格闘協会は、龍司の挑戦を受け入れた。


 


 それは、**「人間 vs AI」** の最後の戦いとなるはずだった。


 


 


 「お前に……人間の強さを見せてやる。」


 


### **《オロチとの対峙》**


 試合当日——


 


 リングには、AI格闘家オロチが立っていた。


 


 その動きは、無駄がなく、完璧だった。


 


 「勝てるはずがない……」


 


 観客の誰もがそう思っていた。


 


 ——だが、龍司だけは違った。


 


 


 **「AIには、理解できないものがある。」**


 


 


 それは——**「かた」**


 


### **《魂の型》**


 龍司は、静かに構えた。


 


 


——それは、極真空手の「三戦さんちんの型」。


 


 


 「型……? 無駄だ。」


 


 オロチは瞬時に動きを解析した。


 


 だが、龍司の型は——


 


——**「変化」していた。**


 


 


 「……?」


 


 AIの計算が、一瞬だけ遅れた。


 


 


 **「型は、単なる形じゃない。」**


 


 龍司の瞳は燃えていた。


 


 **「魂の軌跡だ!」**


 


### **《人間の強さ》**


 龍司は、変幻自在の「型」を繰り出した。


 


 それは、千日、万日の稽古の末に身体に刻まれた**「魂の動き」**だった。


 


 「AIに理解できないもの……それは『変化』だ。」


 


——龍司の拳が、オロチの防御を突き破った。


 


### **《勝利の果てに》**


 オロチは倒れた。


 


 AIは、**「人間の強さ」**の本質を理解することはできなかった。


 


 「……勝ったのか?」


 


 観客は、息を呑んでいた。


 


 しかし、龍司は静かに言った。


 


 


 **「俺は……ただ、自分を超えたかっただけだ。」**


 


——そして、リングに跪いた。


 


 


### **《魂の継承》**


 龍司の勝利は、人間の「魂の強さ」を証明した。


 


 しかし、彼はこう言った。


 


 **「強さとは、己を超え続けることだ。」**


 


——その言葉は、未来の武道家たちに受け継がれていった。


 


 


 **「千日をもって初心とし、万日をもって極みとする。」**


 


(了)


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