「読んではいけない物語」(シュールレアリスム)
この物語は、**読んではいけない**。
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### **1. 語り手のいない物語**
この物語には、主人公がいない。
なぜなら、主人公は今まさに **あなた** だからだ。
あなたはこの文章を読んでいる。
それは、あなたがこの物語の登場人物になったということを意味する。
だが、一つだけ忠告しておく。
**この物語を最後まで読んではいけない。**
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### **2. 消された登場人物**
かつて、この物語には別の主人公がいた。
名前は **佐藤真一**。
彼は、普通の会社員だった。
ある日、彼は奇妙な小説を見つけた。
**「読んではいけない物語」**
その本には、こう書かれていた。
**「この本を読んだ者は、物語の中に引きずり込まれる」**
佐藤は笑った。
「ただの冗談だろ」
そして、最後のページまで読んでしまった。
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### **3. そして、彼は消えた**
翌日、佐藤は会社に行った。
同僚に挨拶をする。
だが、誰も彼に気づかない。
「おはよう」
誰も返事をしない。
彼は、書類を取りに行こうとした。
だが、**自分のデスクが消えていた。**
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### **4. 存在の消失**
佐藤は自分の家に戻った。
玄関を開ける。
靴箱に、彼の靴がなかった。
リビングに入る。
写真立てが並んでいる。
家族写真の中に、**彼の姿はなかった。**
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### **5. 物語の外へ**
佐藤は理解した。
**彼は物語の中に閉じ込められたのではない。**
**物語の「外」に弾き出されたのだ。**
彼の存在は、この世界に刻まれなくなった。
名前も、記録も、思い出も。
佐藤真一という人物は――
**最初から、この世界に存在しなかったことになった。**
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### **6. そして、あなたの番だ**
……さて。
あなたは、まだこの物語を読んでいる。
あなたは、この物語の主人公ではなかった。
だが、今こうして最後まで読んでしまった。
あなたの名前を、私は知らない。
だが、あなたがここにいたことは知っている。
さて、問題は一つだけだ。
**あなたはまだ「こちら側」にいるのか?**
振り返ってみてほしい。
あなたの家族は、あなたをちゃんと覚えているだろうか?
あなたの机は、まだそこにあるだろうか?
もし、何かが変わっていたなら――
**あなたも、物語の外に弾き出されたのかもしれない。**