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「語られざるもの」(不条理)

 ある日、私は **自分の人生が書かれた本** を見つけた。


---


### **1. 本の中の人生**


 それは、町の古びた図書館の奥にあった。


 埃をかぶった黒い装丁。

 金色のタイトル。


 **『アレンの物語』**


 開くと、そこには **私の人生のすべて** が書かれていた。


 **幼少期の記憶。**

 **家族との日々。**

 **今日、この図書館に来た理由まで。**


 そして、最後のページには――


 **「アレンは本を閉じる。しかし、その瞬間、背後に何かの気配を感じる」**


 


 ……何?


 私はページを閉じた。


 すると――


 背後に、誰かがいた。


---


### **2. 語り手の声**


 「よく見つけたね」


 振り向くと、そこには **黒衣の男** が立っていた。


 「君は、この本の登場人物だ」


 私は言葉を失った。


 「何を言ってる?」


 「君のすべては、すでに書かれている」


 男は微笑んだ。


 「そして、私はこの物語の語り手だ」


---


### **3. 逃れられない記述**


 私は、本をめくった。


 次のページには、こう書かれていた。


 **「アレンは恐怖を覚え、本を閉じて逃げようとする。しかし、扉は開かない」**


 バタン。


 私は、図書館の扉を押した。


 開かない。


 **「アレンは絶望し、本を握りしめる。しかし、語り手は静かに言う――『君は逃げられない』」**


 「……っ!」


 黒衣の男が微笑む。


 「ほらね?」


---


### **4. 書かれざる選択**


 私は、本を破ろうとした。


 だが、ページは指に張り付き、ちぎれない。


 「この物語は、君の運命そのものだ」


 男は言った。


 「なら……運命を書き換えたら?」


 私は震える手で、ペンを握った。


 白紙のページに、ゆっくりと書く。


 **「アレンは、本を閉じて逃げることに成功する」**


 次の瞬間――


 図書館の扉が開いた。


---


### **5. 語られざるもの**


 私は走った。


 町の外れまで駆け、息を切らしながら本を開く。


 そこには、新たな文章が綴られていた。


 **「アレンは、自分が物語を書き換えられることに気づいた。しかし、それは語り手の思惑通りであった」**


 ……何?


 「君が書くことさえ、すでに書かれているんだよ」


 黒衣の男が、そこにいた。


 「君は、この物語から決して出られない」


---


### **6. 結末**


 私は最後のページをめくる。


 **「アレンは、最後のページをめくる」**


 そこには――


 **「アレンは理解する。彼がどれほど抗おうと、すべては物語の中でしかないのだと」**


 私は、筆を取る。


 震える手で、一行を書く。


 **「アレンは、ペンを置く。そして、本を閉じる」**


 その瞬間、世界が――


 


 閉じた。


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