「ハイエナのレシピ」(SF)
犯罪は、**「ちょっとの勇気」** と **「ちょっとの知恵」** でできている。
俺はそう信じてる。
世の中のルールってのは、破るためにある。
っていうか、そもそも **ルールを作ったやつだけが得する仕組み** になってる。
だったら、賢いやつは何をするか?
**ルールの外側で遊ぶのさ。**
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### **1. 仕事のルール**
俺は詐欺師だ。
もちろん、しがない小物じゃない。
ちゃんとプロとしてやってる。
ターゲットを選び、**弱み** を見つけ、**希望** をちらつかせる。
あとは、勝手に向こうから金を差し出してくれる。
シンプルな仕事だろ?
今日は、ちょっと大きな獲物を仕留める。
**ターゲットは、資産家の老婦人。**
持ってる金は億単位。
すでに家族とは絶縁してる。
つまり、最高のカモだ。
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### **2. 仕込み**
この手の詐欺は、演出が大事だ。
まずは、彼女のもとに **「あなたの息子が危険です」** って匿名の手紙を送る。
存在しない息子の話をすればいい。
驚くかって? そうでもない。
金持ちの孤独な老人ってのは、時々、自分でも忘れた過去があるもんだ。
次に、俺は **「探偵」** として彼女の前に現れる。
**「あなたの息子さん、実は生きてました」**
**「でも、危険な連中に追われてる」**
**「助けるには、どうしてもお金が必要なんです」**
すると彼女は **「お願い、助けて!」** ってなる。
あとは、金を引き出すだけ。
チョロい仕事だ。
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### **3. イレギュラー**
すべては完璧に進んでいた。
問題は――
**「彼女の息子が、本当に存在していたこと」** だ。
……は?
俺が架空の話をでっち上げたはずなのに?
なんで、目の前に男がいる?
しかも、こいつは妙に俺を見て、笑ってる。
「……やっぱり、お前か」
息子だと名乗る男が、ゆっくりと立ち上がる。
「久しぶりだな、兄貴」
――あ?
「……お前、何を言ってんだ?」
「もう忘れたのか? 俺たちは、母さんの遺産を奪うために組んでたんだろ?」
「……は?」
「兄貴が仕込みをして、俺が『息子』として金を受け取る」
「いやいやいや、そんな話、知らねえよ」
「……そうか。忘れてるんだな」
男はポケットから、小さなカプセルを取り出した。
「兄貴は、前回の失敗で脳を『リセット』したんだよ」
「リセット……?」
「お前は何度も同じ詐欺をやってる。**ただし、一度やるたびに『記憶を消す』** ことで、完全犯罪にしてきたんだ」
俺は息を呑んだ。
「嘘だろ……?」
「証拠が欲しいなら、次の『リセット』を試してみるか?」
男は、笑った。
俺の記憶は、どこまで本物なんだ?
俺は、今まで何度この詐欺を繰り返してきた?
そもそも――
**俺は、本当に『詐欺師』なのか?**
---
### **4. リセット**
男がカプセルを差し出す。
「どうする?」
俺は――
ゆっくりと、それを受け取った。
俺は、詐欺師だ。
いや、違うか?
俺は、何者だ?
……まあ、いいか。
このカプセルを飲めば、また最初からやり直せる。
たぶん、次の俺は、この話を何も覚えていない。
それなら、それで。
また、一から**仕事**を始めるだけだ。
カプセルを口に入れる。
――リセット開始。
***
空は青い。
世界は完璧に整っている。
俺は、詐欺師だ。
今日は、ちょっと大きな獲物を仕留める。
**ターゲットは、資産家の老婦人。**




