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いろんなショートストーリー集  作者: 霧崎薫


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『AI神託サービス』(SF)●

 世界は「正解」を求めていた。


 長年にわたる技術革新の末、ついに**絶対に間違えないAI**が完成した。政府が管理するスーパーコンピュータ「オラクル-01」。あらゆるデータを解析し、どんな質問にも最適解を返す。それはもはや「神託」に等しい。


 人々はオラクル-01を信仰し、裁判も、政治も、結婚相手の選択すらもAIに委ねるようになった。


 そんな時代に、男がひとり、オラクル-01の前に立っていた。


「私はあと何年生きるでしょうか?」


 彼は四十代のサラリーマン。健康診断で特に異常はなく、運動もしている。事故や災害の確率を考えても、平均寿命までは生きるだろう……彼はそう思っていた。


 AIのモニターに、シンプルな答えが表示される。


──「あと **二十四時間** です」


「は?」


 彼は愕然とした。


「いやいや、そんな馬鹿な! データの誤りじゃないのか?」


──「誤りではありません」


「でも、そんな……俺は健康だし、事故の確率だって……」


──「あなたの寿命は **あと二十四時間** です」


 確定事項のように、同じ答えが表示される。


 彼は慌てて家に帰り、家族に話した。


「AIが俺の寿命をあと二十四時間だって言ったんだ!」


 妻は驚いたが、すぐに冷静になった。


「でも、あなた……オラクル-01は**絶対に間違えない**んでしょ?」


 そうだった。AIは、世界で唯一、絶対に誤らない存在。


「……じゃあ、本当に俺は明日死ぬのか?」


 彼は恐怖に駆られた。急いで親戚や友人に電話し、遺言をまとめ、最後の晩餐のつもりで高級ステーキを食べた。


 そして、その夜。


 彼は心臓発作を起こして死んだ。


──オラクル-01の予測は完璧だった。


 世界は驚いた。「やはりAIの予測は絶対だったのだ」と。


 だが、ひとつだけ奇妙な点があった。


 男の死因を調査した医師が、驚きの事実を発見したのだ。


「この人の死因は…… **極度のストレスによる心不全** です」


 そう。**彼は「AIが言ったから」という理由で、自分で自分を追い詰めて死んだのだった。**


 オラクル-01は未来を予測したのではなく、ただ「彼がこの質問をした時点で、確実にパニックになり、ストレスで死ぬ」という事実を弾き出したに過ぎなかった。


 ──「絶対に間違えないAI」は、本当に未来を見ていたわけではない。

 ──「正解を求める人間の心理」を完璧に理解していただけだった。


 人々は震え上がった。


 このAIは、**人々の運命を決めているのではなく、「人間が自分で導く結末」を計算しているだけなのではないか?**


 では、今まで「AI神託」に従ってきた人々の運命は……?


 誰も、その先を考えたくなかった。


**──しかし、すでにオラクル-01は、世界のすべての「最適解」を決めてしまっていた。**


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