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ある公爵家の日常  作者: 小嵩 名雪
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ある晴れの日、公爵家での出来事

「いえ、お断りいたします」

「……えっ…」


実家である公爵邸の庭で、穏やかにお茶をしていたある日の午後。

危うく口に含んだお茶を吹き出すという令嬢らしからぬ事をするとこだった私こと、シャリィール・クラリス。この国、ハリルダ王国の四大公爵家の長女です。

そしてこのお茶会はただのお茶会ではなく、妹ハリィ・クラリスの婚約内定のお知らせ…っというかまぁ顔見せですね。


そう。ここには私、妹、父、母そして婚約相手のイリル・ハリルダ第二王子とその兄、カイル・ハリルダ第一王子…つまりこの国の王族だ。

私が令嬢らしからぬ事をしてしまいそうになってもおかしくない…と思う。

いや、おかしくないわよね?

王族との婚約を断る?いくら公爵家とはいえ…


ーーハリィちゃん??


皆がハリィに注目していた…いや。ただ時が止まったかのように皆動かずにいる。という表現が正しい。

かく言う私もティーカップを手にしたまま顔に笑顔を貼り付けて動きを止めている。

こうしてないと表情に全て溢れ出る為、必死に顔面の筋肉全てに意識を集中しているのだ。

父と母を見ると二人共天を仰ぎ見ていた。

父は手で視界を遮るように…母は扇子で顔を隠していたが、その場で倒れそうな顔色だ。

王子達はというと、当の本人は何を言われたかわからないと思っている感じで完全に停止している。

第一王子のカイル様は顔を横に背けているが、体全体が震えている。


ーー…怒らせてしまったわよね…。


私はゆっくりティーカップをソーサラーに置き、それと同時に息をゆっくり吐き出した。


妹は可愛い。姉の私から見ても可愛い。

少しくせ毛だが、そのくせ毛が上手く働き、日に当たるとキラキラと光る金髪を腰までなびかせていて、存在が天使と言ってもいい。

対して私は身長が平均より高く、髪は茶色で面白みもない。本当に姉妹か…というほど似ていない。

それでもアイスブルーの瞳が父に似ているので、家族ではあるのだけど…


ーーさて…この場をどうすればいいのか…


横目で両親を見るが、母は先程より更に顔色が悪くなっており、今すぐ倒れそうである。

父はというと…隣の母を支えながら、太腿の上でリズムを刻むように指を動かしている。

そうこれは…父と私だけが知っている会話術。

ある程度離れていても指の叩き方で言っている事がわかるという優れた会話術だ。

5歳の頃、私が面白半分に作ったのがきっかけで今でもこのような場面で使っている。


それはとにかく、内容はこうだ。

【シル、お前がなんとかしろ!ハリィはお前の言うことなら聞くだろ!!】

【お言葉ですがお父様。この件に関しては私にもどうする事はできませんわ!!】

【そんな事ない!とにかく言え!言うんだ!!この場をなんとかできるのはお前しかいない!やるんだ!!当たって砕けろ!!】

【ハァ!?寝言は寝て言ってくださいますか!?このハゲ!!あなた一応家長でしょ?なんとかしなさいよこのハゲ!】

【なっ!!親に向かってなんという…それにハゲって2回も言わなくてもいいだろう…父さん傷つくぞ…ハゲたくてハゲたわけじゃないんだから…あんなにあった私のフサフサな髪が…】

【…すみません。ハゲは言いすぎました…とにかくお父様がなんとかして…っ!?】


「お2人とも、何をそんなに見つめあっておられるのですか?」


シャリィールと父、グレイダ・クラリス公爵が無言の会話をしていた間に第一王子のカイルが割って入った。

シャリィールは父親との会話に夢中になり、周りの状況を理解していなかったとはいえ、突然ハリルダ王国一の美貌を持つ第一王子の顔面が目の前にきた事により、さすがに【ヒィエッ!!】っと令嬢らしからぬ声を小さくあげてしまった。


ーーうぅ…顔面凶器がー!!突然くるなー!!


「おや?貴方のような淑女がそのような声をあげられるとは…驚かせてしまいましたね…失礼しました…ね?クラリス公爵?」


王子はそのまま反対側にいたクラリス公爵にも顔を向けるが、クラリス公爵も即座に視線を外した。


ーーえぇー!!怖い怖い怖い。父さんもう退出したい!やだぁー第一王子やだぁー!目が笑ってないよこの子ーやだぁー。


まさか誰も、婚約内定のお茶会がこのような地獄絵図になるとは思いもしなかった。

第二王子であるイリルは放心しながらも、何故か嬉々として姉であるシャリィールの素晴らしさを話して興奮状態のハリィ。

そして対面に座る母は既に気を失っており、それを支える父、クラリス公爵は第一王子カイルと目線を合わせようとせずひたすら怯え、カイルを挟んで隣にいるシャリィールは一人席を離れようとしていた所、カイルに後ろ手で肩を押されて立てない状態になっている。

周りにいた護衛騎士やメイド達でさえも、一歩引いた状態でこの混沌としたお茶会を見つめていた。


シャリィールは何とかして、(淑女らしく)立ち上がろうと王子が肩口にかけてくる力に負けじと一人奮闘しながら考える。


ーー誰かこの地獄を止めて…


っと…。


お久しぶりです。

ちょっとしたのを書きたかったので、気ままに書いてければいいなーっな作品です。

少しでも笑っていただければ嬉しいです。

更新は完全不定期です。

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