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六話 ジーッ



「なあ、俺って自意識過剰なのかな」

「唐突にどうした」

「どうにも今朝から視線を感じる気がするんだよ」


 別に特筆すべき点も無いただの男子高校生が何故他の人に見られているのか……気のせいだと思いたいのだが、1、2度ならまだしも昼休みに入った今も何度か視線を感じるのだ。


「なんか思い当たる節でもないのか?」

「あると思うか?」

「……ない、か」

「肯定されたらされたで腹立つな」

「自分で言ったんだろ……」


 隼人とそんな馬鹿みたいな事を言っているとまたどこからか視線を感じる。

 バッと後ろを振り返ってみるが特にこっちを見ていそうな人は居なく、逆に急に振り返ったせいで周りの人に変な目で見られてしまった。


「ん? なんか騒がしいな」


 唐突に隼人がそう言うのでもう一度辺りを見回してみると、確かに廊下の方がガヤガヤしている。

 普段は賑わっていないかと言われれ、別に普段からそこそこ賑わってはいるのだが、今はいつもに増してうるさい気がする。


 何が起きているのかと少し首を伸ばして廊下の方を見てみると、ある一点を中心に人だかりができているようだった。


「ん? あれ氷室有栖じゃないか?」

「……なんで有名人がこんなとこにいるんだ」

「お、人と関わらないことで有名な優佑でも流石に知ってるんだな」

「そんなことで有名になった覚えは無いぞ……それと知ってたのは入学式の時のインパクトが強かったからだ」


 痛いところを突いてくるな、と少しヒヤッとするがポーカーフェイスでなんとかやり過ごす。

 実は昨日財布を拾ってもらって、実は同じ図書委員で、同じ日の当番になって、更に友達になって一緒に帰ったから知ってます。

 なんて言ったら隼人はどんな反応をするのだろうか? すこし気になるが後が途轍もなく面倒になるのは間違いないので絶対にそんなことはしない。



(でも明らかに俺が目的だよなぁ……)


 薄々気づいてはいたが、朝からの視線は恐らく氷室だろう。というかそれしかない。

 さて、一体どうするべきか……



「……ちょっとトイレ行ってくるわ」

「いってらー」



 仕方がないのでトイレに向かう途中、通り道に居た氷室の真横でボソッと耳打ちする。


「放課後、図書館」

「……」


 周りに気づかれないように一定のペースで、なおかつ不自然じゃないようにそのままトイレに向かう。



「はぁ……何とかなった……か?」


 俺に何か言ってくるような人は後ろを見ても特に居ないし、氷室もどうやら自分の教室に帰っていったようだ。

 その証拠にトイレから出た時にはさっきまであった人だかりも無くなっていた。


(面倒くさい事させやがって……)


 昨日の事でまだ何かあったのだろうか。やはり昨日図書館で寝なければよかった……

 後悔しても仕方のないことかもしれないが、次からは特に気を付けることにしよう。




「お、おかえり」

「ん」

「お前がトイレ行ってる間に氷室有栖は居なくなったみたいだぞ」

「そうみたいだな」

「えらい淡白な反応だな、見に行ったんじゃないのか?」

「バカ言え、そんなわけないだろ」


 見に行ったどころか話しかけたなんて言う訳もなく、かといって普段こいつ以外と話していなかったおかげでバレることもなかった。

 








「それで? 一体何の用だったんだ?」


 昼休みに宣言していた通り、放課後俺と氷室は図書館に来ていた。

 カウンターには他の図書委員の人が居るが、そこからは死角になる場所で話をしているので余程騒がなければバレる事も無いだろう。


「まだ言いたいことがあったのに昨日あのまま帰っちゃったから」

「だからといって休み時間ごとに俺の事を見に来るのはやめてくれよ……」

「でもそうしないと話せない」


 確かに連絡先を交換してない現状では、毎週の当番の日以外は直接会う以外に方法は無い……のか。


「……来週まで待つというのは――」

「そんなに待てない」

「さいですか」


 朝から毎時間来るほどだ。どうせこう言われると分かってはいたがやっぱり無理だった。


「……連絡先」

「ん?」

「……連絡先交換すれば無理やり会いに来なくて済む」

「それは逆に良いのか?」


 同性ならまだしも、昨日知り合ったばかりの異性と連絡先を交換するのはいささか不用心ではないだろうか。

 昨日の家に上げようとすることといい、もう少し警戒心を持って欲しい。

 悪意を持って近づいてくる人に利用されてしまわないか心配だ。


「悪いことに使うの?」

「いやそんなことしないけどさ」

「じゃあ問題ない」

「……このアプリでいいか?」


 氷室はこういう時に何を言っても引かない事はこの2日でなんとなく分かっているので、観念して連絡先を差し出す。


(使うかどうかは分からないが、これで俺の連絡先に追加されるのは5人目か)


「……どうやって登録すればいいの?」

「えーっと、確かにここを押してだな――」



 まさか連絡先を登録するためだけにここから5分程かかってしまったが、2人の名誉のためにもこの事実は伏せておこう……


 




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