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五一話 報告



「そういえばそろそろだな」

「そろそろって、何がだよ?」


 今日は珍しく放課後に有栖が来ない事もあり、隼人が家に来ていた。

 といっても2人でゲームをしながらダラダラと会話をしているだけだが。


「この時期で、高校生と言えばあれしかないだろ?」

「中間テストか?」

「いや、確かにもうすぐ始まるけど……お前なぁ、この時期ならそろそろ文化祭ってなるだろ」

「ああ……文化祭か、確かにそうだな」


 中間テストが終われば、学校は一気に文化祭ムードに切り替わるだろう。

 去年は特に記憶に残ることも何もなかったのですっかり忘れていた。


「そういう俺は生徒会で見回りやらいろいろさせられるからあんまりクラスの出し物に出られないんだけどな」

「じゃあなんでその話題出したんだよ……」

「まあまあ、いいじゃん今年は楽しくなりそうだし?」

「……なんだよその含みのある言い方は」


 ニマニマとしながらそう言う隼人。

 いくらイケメンだとはいってもこれは少し気持ちが悪い。


「いんや? 優佑が深読みしてるだけなんじゃないか?」

「じゃあお前の顔はそれがデフォルトなんだな?」

「いや、それは違う」

「急にキリッとした顔になって言うな、なんかキモい」

「キモいってなんだキモいって」


 普通に考えてニマニマしてた男が急にキリッとした顔になったら気持ち悪いと誰でも言うだろう、一般論の話だ。



「――っと悪い、電話来たから一旦ストップしてもらっていいか?」

「はいよー」


 断る理由も無いので今やっていたゲームを一時停止すると、隼人は電話に出るために廊下に出ていった。


 そんなに長電話はしないだろうし、横に置いてあるスナック菓子が底をつきそうだったのでキッチンから適当にお菓子を見繕っていると、戻ってきていた隼人に手招きされた。


「どうした?」

「陽菜が今から会いたいって話だったんだけど、俺は優佑の家にいるし優佑さえ良ければ陽菜をここに呼んでもいいか?」

「俺は別に問題ないけど……」

「助かる、そんなに長居はしないから少しだけ場所貸してくれ」






 というわけで川口さんが家に来た。


「お邪魔します」

「どうぞどうぞ上がって」


「……それお前のセリフじゃないからな?」


 まるで家主かのように振る舞う隼人にツッコミを入れる。



「……それで、わざわざ有栖が居ない日に2人とも家に来た理由は?」

「お、察しが良いな」

「そりゃあ何の理由も無しに川口さんまで家に来るなんて事ないだろ」


 それに川口さんの家がどこにあるかは知らないが、電話してから家に来るまで妙に早かったし、そもそも川口さんに家を教えた事は無いのに迷わずここに来ている時点で最初から来ようとしていたのは間違いない。


 


「まず最初にこれだけは聞いておきたい、いじめられては無いよな?」


 唐突にまじめな顔になったかと思えば、わざわざそんな事を聞いてくる。


「まあせいぜい睨まれたり陰口を言ってる奴が偶に居るくらいで、いじめられては無いよ」

「それを良しとするかは悩ましい所ではあるんだが……とりあえず、じゃあ次に――優佑は氷室さんの事が好きなんだよな?」

「……なんでそれを二人の前で言わないといけないんだよ」


 わざわざ、「俺は有栖の事が好きです」と友達の前で言わなくてはいけないのか……

 というか今の返しだとほぼほぼ答えを言っているようなものだと言ってから気づいた。


「まあつまりそういう事なんだな?」

「……ノーコメントで」

「なら一旦俺の良いように仮定して話を進めるぞ?」

「もう勝手にしてくれ……」


 どうせ何を言っても無駄な気がするので反論するのは諦める。


(……あながち嘘という訳でもないし)


「俺が優佑にいつ告白しろとかそう言う事を言ったり、焦らせたりするつもりは無い。ただそれは一旦置いといて、俺と陽菜が付き合っている事を文化祭が始まるまでか文化祭中には公表しようかと思ってるんだ」

「……それは、どうして?」


 二人ともそれぞれ男女からそこそこ人気があるからこそ、面倒にならないように生徒会長と副会長という関係以上だとバレないように振舞っていたのに、どうしてわざわざそんな事をするのだろうか。


「最近陽菜に告白してくる人が多くなってきてな、断っても鬱陶しく関わろうとしてくる人も出て来たし、それ抜きにしても俺の彼女にちょっかいをかけようとする人が増えて来たから、牽制するためにもそろそろ言っていいかなと思ったんだ」


「隼人に告白してくる人も増えましたので」

「あー……確かにそうだな」


 川口さんがどうかは知らなかったが、隼人はちょくちょく女子に呼び出されている事があった。

 二人とも異性から見たらかなり魅力的だし、そんな人に彼氏彼女が居ないとなれば自分の恋路を成功させに来る人も多くいるのだろう。


「でもどうしてそれを俺に?」

「数少ない秘密を知っている友達だからな、それを報告しとこうと思って」


 そんな事のためにわざわざ二人揃って来たのだろうか、律儀なことだ。


「……んで、もう一つは?」

「これでいつでも心置きなくダブルデートをしようなって話」

「……んな事だろうと思ったよ」


 さっきの質問内容的にもそういう事を言うと思っていた。

 

「俺を焦らせたりはしないんじゃなかったのか?」

「別に焦らせるつもりは無いぜ? ただ俺達はいつでもそのお誘いを待ってるってだけ」

「へいへい」


「私も氷室さんとゆっくりお話ししたいので楽しみにしてますね」

「川口さんもそっちなのな……」


 隼人に余計な事を吹き込まれたか、それともこの前有栖に会った時に気になったのか――どちらにせよ俺ではなく隼人の味方な事に変わりは無かった。









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