四六話 考え方の変化
すみません、インフルエンザに罹ってしまい体調が優れないので今回はかなり短めです。
「――悪い、みっともないところ見せたな」
「んーん、楽になった?」
「おかげさまで」
本音を吐露できたおかげか、今の気持ちはとてもスッキリとしている。
それもこれも全部言葉にして吐き出させてくれた有栖のおかげだ。
有栖に抱き寄せられた時、もう高校生なのにも関わらず涙が思わず溢れ出てしまった。
不幸中の幸いか、今有栖が来ている服は俺の物なので汚してしまった事は気に病まなくても大丈夫だが、有栖の前で情けない所を見せてしまったせいで少し目を合わせづらい。
「雨はさっきよりは収まってきてるけど服がそれじゃあ帰れないし、乾燥が終わるまでまだ時間かかるだろうからお昼ご飯はここで食べてくか?」
「いいの?」
「ああ、今日来てくれたお礼って事で何か作るよ。材料は今家にあるものでしか作れないけど……炒飯かそうめん茹でるならどっちがいい?」
「んー……じゃあ、炒飯がいい」
「了解、まだ少し時間早いけど作ってくる」
そう言って足早にリビングからキッチンへと移る。
正直に言ってしまうと逃げた。
理由は言うまでもなく、つい先ほどまで有栖の胸で泣いていた事を冷静になって思い出すと、恥ずかしさでどうにかなりそうだったからだ。
自分でもまさか泣くなんて思ってもいなかった。
自分の中である程度踏ん切りはつけていたし、そんなもんだと諦めもつけていた。
しかしあんなに優しい言葉をかけられてしまってはたまっていた思いも漏れ出てきてしまう。
(俺の過去なんて有栖の物に比べたら大したものじゃ……)
いや、こんなことを言ったら、「過去は比べる物じゃない」って有栖に怒られてしまいそうだ。
そう考えるといい意味で俺は有栖に毒されてるのかもしれない。
今までの俺なら自分を卑下して終わっていただろうに、こうしてブレーキが掛けられている。
「……有栖には感謝してもしきれないかもな」
炒飯を二人分作り終えたのでそれをダイニングへと運ぶ。
そういえば有栖はよく家に来るが、リビングと洗面所以外に踏み入れた事は……いや、だとするとその次が風呂場だったのは意味が分からないな……。
「炒飯できたぞ」
「ん、今行く」




