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三九話 仲の良い姉妹



 この前家庭教師をやってから早一週間、今日は2回目となる日だ。

 ここ一週間は特に何かする事も無く家でゴロゴロしたり、教えられるように高校入試をチェックして解きなおしてみたり、有栖が一度家に来たりと夏休み感は一切無いような日々を送っていた。



「――あれ? 定休日になってる」

「ホントだ」


 有栖と二人で英二郎さんの喫茶店の前まで来ると、店の前には定休日の看板が置いていて中の電気も付いていない。

 曜日を間違えたのかとスマホを確認しても、間違えてなかったのでどういう事だろうかと二人で首を傾げていると、タイミング良く目の前の扉が開いた。


「あ、有栖先輩と木戸先輩もう来られたんですね! ごめんなさい、今週から本格的に勉強を教えて貰うので今までの定休日をずらしたのを伝えられてませんでした。なので次からはこっちの裏口の方のインターホン押してもらえると助かります!」


 そう言って連れてこられたのは、お店の裏側にある裏口だ。

 そちらの方はごく普通の家と同じような造りで、横にインターホンが備え付けられている。


「「お邪魔します」」



 この前と同じ二階のリビングに行くと、瑠奈さんは勉強する準備をして待っていた。


「こんにちは」

「こんにちは、です」


 俺達も教える時間は2時間だけなので素早く準備をして、教えられる状態にする。


「じゃあ、今日は1時間やったら10分休憩して、残り50分勉強するって感じでいいかな?」

「分かりました!」「分かったです」


「有栖もそれで大丈夫か?」

「ん、頑張る」





 この前一度教えた事でコツを掴んだこともあり、今日はスムーズに進んでいく。

 瑠奈さんもちゃんと復習と予習をしていたようで、この前出来ていなかった問題は難無く解けるようになっていたり、この前に次やると言っていた部分も滞りなく解けていたりと、瑠奈さんの頑張り具合が伺える。



 集中して勉強していると時間はあっという間に過ぎるもので、気付けば最初に言っていた1時間がもう経過した。


「それじゃあそろそろ休憩にしようか」

「……この前言ってた珈琲淹れてくるです。ホットとアイスどっちがいいです?」

「じゃあホットでお願いしようかな」

「分かったです」

「何か手伝うことはある?」


 流石に今回も年下の女の子に飲み物を用意して持って来てもらうというのは気が引けるので、何か手伝えることは無いかと提案する。


「大丈夫です、いつもやってる事なので木戸先輩は有栖先輩と待ってて下さい」

「……分かった、じゃあお願いするね」

「はいです」


「じゃあ私も一緒にジュース取ってきますね!」

 

 丁度麗奈さんの方も一区切りつけたようで、姉妹揃って部屋を出ていく。


 その間に有栖とどこまで進めたか確認しあったり、消しカスなどを片づけたりして5分ほど経つと麗奈さん達が戻ってきた。


「お待たせしました~」

「「ありがとう」」


「珈琲はまだ熱いので猫舌なら気を付けてください」

「ありがとう、じゃあ頂きます」


 瑠奈さんから珈琲を受け取って、熱いので控えめに一口飲んでみる。

 珈琲のいい香りと、ほどよい苦みが口の中に広がる。この前言っていたように酸っぱさはほとんどなく、そのまま喉をスッと通る。


「――美味しい」


 そう口から言葉がこぼれ出る程にこの珈琲は美味しかった。


「……良かった、です」

「――瑠奈良かったね、今日は朝からちょっと不安そうにしてたし」

「余計な事言わないでいいです」


 麗奈さんに余計な事を暴露されて、瑠奈さんはホッとした表情から一転してむすっとしている。


「まあまあ、喜んでもらえて良かったじゃん」

「それはそうです、が、後でお姉ちゃんにはお話があるです。それと、木戸先輩もニコニコしないでください」


「ご、ごめんなさい……姉妹の仲が良くていいなと思いまして……」

「仲良くないです」


 からかわれたと思ったのか、それともただの照れ隠しか瑠奈さんはむすっとした表情のまま、それを否定する。

 ただそれを真にとらえてしまった人もいたようで……


「えっ……仲良しだと思ってたの私だけ……」

「……仲悪くはないです」

「ホント? 嫌いじゃない?」

「そんなにしつこく聞いてくるお姉ちゃんは好きじゃないです」


 それを聞いた途端、瑠奈さんに詰め寄っていた麗奈さんはスッと元の位置へと戻る。



「……もう10分経ったけど、勉強しなくていいの?」

「ごめんなさい、すぐやります」


 アップルジュースをのんびりと飲みながら一連のやり取りを眺めていた有栖がそうつぶやく。



 有栖は微笑ましく見ていたというよりも、どちらかというと羨ましそうに見ていたので、おそらく一人っ子という事もあって姉妹というものが羨ましいのだろう。

 麗奈さんや瑠奈さんも再従兄弟にあたるとはいえ、姉として見られているというよりは先輩として敬われているような感じなので、そういうのとはまた違う。


 それでいくと鈴音は有栖の事を友達のようで姉のような関係だったが、如何せん距離が遠すぎる。

 

「やっぱり同じ学年で友達が出来ると良いんだけどなぁ……」


「どうかしたですか?」

「いや、なんでもないよ。じゃあさっきの続きから始めようか」

「はいです」










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