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三七話 双子



 今日はこの前英一郎さんが言っていた、家庭教師をする子に会いに行く日だ。


「どんな子なんだろうな。そういえば英一郎さんの弟の孫って事は有栖は会ったことあるのか?」

「1回だけある。でもまだ小さい頃だったからあんまり覚えてない」

「そっか。でも、仲良く出来るといいな」

「ん」


 家はそう遠くない所にあるらしく、今は徒歩でそこまで向かっている。

 残念ながら英一郎さんは仕事があって来れないとの事なので、家の場所だけ教えてもらって俺と有栖の二人だけでだ。


 有栖の家から十分くらい歩いた頃だろうか、目的地と思われる場所が見えてきた。



「喫茶店、か?」

「ここの2階って書いてる」

「とりあえず喫茶店に入ってみるか」


 少し重そうなドアを押して中に入ると、凄くお洒落な店内が目に入る。



「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「あ、えっと、氷室英二郎(ひむろえいじろう)さんに用があって来たんですけど……」

「分かりました、――おじいちゃんにお客さんだって!」


 そう言って受付に居た女の子はカウンターの方に居る人を呼びに行った。


 話している内容を鑑みるに、どうやらこの子が教え子のようだ。



「――おお、君たちが木戸優佑君と有栖ちゃんだね、よく来てくれた。じゃあ麗奈(れな)、表の看板を裏返して来てくれるかい?」

「分かった」


 初老の男性に麗奈と呼ばれた少女は外にある看板をCloseにしてから戻ってくる。


「……お店閉めちゃっていいんですか?」

「今は他にお客様も居ないからね、それに従業員も今から勉強しに行く事になるから今日はもうお休みで大丈夫だよ」

「それじゃあやっぱり――」

「ああ、ここにいる麗奈、そして奥に居るもう一人が私の孫だよ」

「もう一人、ですか?」


 てっきり俺は一人を教えるものだと勝手に思っていたので首をかしげる。


「あれ、兄が言いそびれてたかな? 瑠奈(るな)ちょっと来てくれるかい?」


 そう言って英二郎さんは奥に居る少女を呼んだ。



「じゃあ改めて紹介しようか、こっちが双子の姉妹の姉の篠田麗奈(しのだれな)

「お願いします!」

「そしてこっちが双子の姉妹の妹の篠田瑠奈(しのだるな)

「お願い、するです」


 姉の麗奈さんは元気よく頭を下げ、妹の瑠奈はおずおずと控えめに頭を下げた。



「そちらも自己紹介してもらってもいいかな?」


「分かりました。俺は木戸優佑です、今回は有栖と友達という事で来させてもらいました、よろしくお願いします」

「……氷室有栖、よろしく」


 やはりほぼ初対面の人には緊張してしまうのか、有栖の自己紹介はかなりぎこちない。

 と思ったのだが、しかし姉の麗奈さんは元から有栖の事を知っていたのか、目を輝かせて有栖の方を見ている。



「――氷室先輩、いや、有栖先輩って呼んでもいいですか?」

「……え、あ……」

「ダメ……ですか?」

「……ダメ、じゃない」

「! ありがとうございます!」


 急にぐいぐいと来られてビックリしている有栖とは裏腹に麗奈さんは、ぱぁっと顔を輝かせて喜んでいる。


「えっと、木戸先輩もお願いしますね」

「ああ、よろしく」


 有栖との露骨な温度差を感じるが、俺は知らない男の人なんだしそんなものだろう。

 




 喫茶店から移動して、場所は喫茶店の2階にある居住スペースのリビングへと来た。


「じゃあ自己紹介も済んだ事だし、早速勉強を教えて貰ってもいいですか?」

「それもいいけどその前に、どの高校を受けようと思ってるのか聞いてもいいかな」

「はっ、すっかり言うのを忘れてました。私達は先輩達と同じ高校を受けようと思ってます!」

「なるほど、じゃあ未来の後輩になってもらう為にも頑張ろうか」

「はい!」


 俺も有栖もこれといった苦手教科は無いし、有栖に至っては学年1位の成績を維持しているくらいなので、自分が一度受かっている高校の入試問題は一通り教える事ができるだろう。

 後は2人にどうやって教えるかだが……



「どう、する?」

「とりあえず分からない所を知ってからそこを重点的にやっていきたいけど……二人いるからそれぞれ分担するか? それとも一緒にやる?」

「……一緒にやりたい。けど、二人で同時に二人教えるの難しい?」

「あー……確かにそうかもしれないな」


 

 有栖も一人でやるのは不安そうにしているが、教え方的にはそちらの方が良いと分かっているのだろう。

 確かに一緒にやるよりは、それぞれで教えた方が効率はいいかもしれない。


「――じゃあ、とりあえず今日はお試しでペア組んでやりませんか? ほら、くじ引きとかで」



 ――という訳で厳正なるくじ引きの結果、有栖は姉の麗奈さんに。俺は妹の瑠奈さんに勉強を教える事になった。






「じゃあ今日はよろしくね、篠田さん」

「……お姉ちゃんか私か分からないから瑠奈でいい、です」

「えーっとじゃあ、瑠奈さんでいいかな」

「はい、木戸先輩もよろしく、です」


 瑠奈さんは第一印象では有栖と同じようなタイプかと思ったが、思ったより人見知りしないで喋れるようだ。

 今日は教えるというよりかは、苦手を知る事とそこからの方針を決める事が主な目的になるだろうが、これから分かりやすく教えられるよう頑張っていこう。


 







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