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二五話 甘いケーキ



「――思ったより伸びたな」


 テストも終わり、学年上位30名が廊下に貼りだされているのだが、俺の結果は学年30位と思ったよりも成績を伸ばしていた。

 やはりここ2週間勉強を頑張った甲斐があったのだろう。


「優佑も遂にここに乗ったか」

「そういう隼人は毎回一桁常連だよな」

「流石に生徒会長として低い点数は取れないからな。優佑こそ平均点以上あれば良いって言ってなかったか?」

「今回は勉強に興が乗ったんだよ」


 思ったより人と一緒に勉強するのは集中できるもので、勉強した内容がしっかり頭に入ったように思える。

 特に暗記科目の点数が普段よりかなり良かったため、今回は30位に入れたのだろう。


「それはそうと相変わらず1位は不動だったな」

「流石は俺の彼女ってところだな」

「はいはい惚気は結構です――ていうかいいのか? こんな所で話して、他の人には内緒にしてるんだろ?」

「大丈夫だって、結構騒がしくて誰も聞いてないしわざわざ聞くほどの興味もないさ」


 隼人は1年生の頃から付き合っている彼女がおり、それを周囲には内緒にしている。

 というのも、その彼女である川口陽菜(かわぐちひな)は学年の中でもかなり人気者で、隼人も人気がある。付き合っている事がバレるとめんどくさい事になるので、誰にも言っていないらしい。


 なのになぜ俺が知っているのかというと、1年生の終わり頃に隼人の家に遊びに行ったところ、偶然鉢合わせしてしまいその流れで教えてもらった。

 俺としてもわざわざ二人の邪魔をするような事はしたくなかったし、そもそも言いふらすような人も居ないので秘密を守っている。



「俺も口は固い方だから優佑に彼女が居るなら教えてくれてもいいんだぞ?」

「生憎とそんな相手は居ないな」

「なら出来たら教えてくれよ、そんでもってダブルデートと行こうじゃないか」

「万が一そんな事があれば、な」


 まあそんな未来が訪れるとは思えないが。


「そういえば陽菜が今度優佑に聞きたいことがあるって言ってたから会ってくれないか?」

「いいけど、彼氏としては良いのか? 何回も他の男と会わせて」

「俺はそんなに束縛強くねーよ、それに知らない奴ならまだしも優佑なら何も問題ないだろ」

「そういうもんか、ならとりあえず俺はいつでも暇だから空いてる日でも聞いといてくれ」

「おっけ」


 おそらく前回同様に今回も隼人の好みやらなんやらを聞いてくるのだろう。

 相変わらずこの二人はかなりのラブラブカップルのようだ。

 





「一位おめでとう」

「優佑もかなり順位伸ばしてる、おめでとう」

「でもこれでようやくのんびりできるな」

「ん、勉強疲れた」


 いくら二人で勉強するのが捗ったとはいえ、別に勉強が好きかと言われるとそういう訳でもない。

 テストではそこそこ良い点数も取れたので、間違えた問題の復習だけしたらとりあえず放課後にわざわざ宿題以外の勉強はしばらくする事は無いだろう。



「せっかくテストも帰って来たことだし――」


 そう言って帰ってくる前に買っておいたケーキを二つ冷蔵庫から出してくる。


「……ケーキ?」

「そ、一位おめでとうって事で好きな方選んでいいぞ」

「……いいの?」

「もちろん」


 イチゴのショートケーキと、チョコレートケーキのどちらにしようかと有栖は悩んでいたが、少ししてチョコレートケーキの方を選んだ。


「……こっちもらう、ありがとう」

「じゃあ早速食べようか」

「ん」

「「いただきます」」


 なかなか一人でケーキを買う事は無かったので、ケーキを食べるのはまだ両親がこっちにいた時以来だ。

 早速一口口に入れると生クリームとイチゴの甘い味が口の中に広がる。


「美味しい」

「口に合ったようで良かったよ」


 有栖もケーキの味に満足してくれたようでなによりだ。

 その後もしばらく食べ進めていると、不意に有栖の手が止まる。何だろうと思い有栖の方を見ると、丁度そのタイミングで有栖も顔を上げたのか目が合った。


「……優佑のも一口食べてみたい」

「なら一口交換してみるか?」

「いいの?」

「もちろんいいよ」


 フォークでまだ俺が口を付けてない部分を切り分けて有栖のお皿に乗せようとしたところで、有栖が口を開けて待っている事に気付く。


(……これは、つまりそういう事なんでしょうか)


 少し、というかかなり躊躇ってしまうが、いつまでも有栖を待たせる訳にもいかない。

 切り分けたケーキにフォークを刺して有栖の口へと運ぶ。


「……ん、美味しい」



 あーんをさせられて、かなりドキドキとしてしまったが、有栖はおそらくそういう事に関して疎いのだろう。全く気にした様子が無い。

 なんとか一息ついたところに、今度は有栖がフォークを持って待っていた。


(……)


 最初にさせられた時点でもしかしたらそうなるかもしれないとは思っていたが、やはりそういう事なんだろう。

 しかしここで嬉しそうにしている有栖に嫌と言うのも無理な話だ。



 観念して口を開けると、チョコレートケーキが口の中に入ってくる。

 今食べたチョコレートケーキは今まで食べたものの中で一番甘い味がした。








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