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十六話 妹襲来



 今日は妹がこっちに来る日なので空港まで迎えに来ていた。

 ちなみに氷室との顔合わせは今日ではなく日曜日にした。流石に帰ってきてすぐは疲れているだろうし、何より飛行機の到着時刻も遅い。

 その結果二人ともに相談して、日曜日に氷室が家に来ることになった。


「さて、そろそろか」


 スマホを確認すると到着したよ、と連絡が入っていたので後少しすれば出てくる頃だろう。


 少しすると、きょろきょろとしながら空港から出てくる見知った顔が見えたかと思うと、俺を見つけたのかこちらに向かって走ってくる。



「兄さんっっ!!!」

「ぐぇっ……鈴音お前な、こんな公衆の面前でいきなり抱き着いてくるんじゃないよ」


 一切走りを緩めることなく、かなりのスピードで鳩尾に突撃された。

 ……一体俺の鳩尾に何の恨みがあるのだろうか。


「だって久しぶりに会えたんだもん! 兄さん成分を今すぐ補給しなきゃ」

「はいはい、抱き着くにしても家に帰ってからにしてくれ。お前も長時間のフライトで疲れてるだろ?」

「……はーい」

「嫌そうにするなよ、ほら荷物半分持つから」


 鈴音が持っているキャリーケースと鞄を手に取ってタクシーに乗り込む。

 流石に大荷物なので、公共交通機関は使いづらいと考えて先に準備しておいて正解だった。


「それにしても結構背も伸びたな」

「でしょ? 兄さんの肩くらいまで届くもんね」

「半年近く会ってなかったもんな、どうだ? そっちの生活は」

「最高だよ、やっぱり兄さんも来ない?」


 家族と一緒に海外に行くかそれとも1人で日本に残るか、これは凄く悩んだ。

 家族と離れるのは結構寂しいし、何度もやっぱり海外に行こうかとも考えたこともある。

 しかし何度か海外旅行に行った際、何となく海外は俺の肌に合わないと感じたことと、日本の方が自分の考え方に合っている気がして俺だけこっちに残ったのだ。


「それも魅力的だけど、そうすると今の家に住む人が居なくなっちゃうだろ?」

「うーん、確かにそれもそっか。あの家が無くなっちゃうのは悲しいもんね」

「それに鈴音達と離れるのは寂しいけど、今はスマホがあるからいつでも連絡取れるしな」

「その割には全然兄さんから連絡くれないじゃん」


 それを言われると痛い。なんだかんだそっちから連絡をくれる事が多いし、自分からしなくても……と考えてしまっているので、どうしてもこちらから連絡をする回数が少なくなってしまうのは許してほしい。


 その後もしばらく鈴音の海外での話や俺の近況を話していると、ようやく家に着いた。


「ふーっ、久しぶりの我が家だ!」

「まずは手洗いうがいしろよ」

「はーい」


 俺はその前にキャリーケースの足の部分を拭いてからリビングにまで運んでおく。

 その後手を洗い終えて、リビングに戻った瞬間俺に向かって走ってくる影が――


「ふぐっ……鈴音、確かに帰ってからにしろとは言ったが勢いをつけなくてもいいだろ……」


 さっきのと合わせて俺の鳩尾はもう瀕死になっている。是非とも鳩尾にはもっと優しくして欲しいものだ。


「兄さん」

「なんだ?」

「家から他の女の匂いがする」

「あー、この前言った氷室さんのじゃないか? 何度か家に来たことがあるからさ」


 匂いと言われても俺には全然分からないし、もし分かったとしたら変態以外の何者でもなくなってしまうので反応に困る。

 というか匂いだけで分かるって鈴音は前世が犬か何かだったのだろうか。


「ふーん? 匂いが付くくらい家に来てたんだ」

「言い方が悪いぞ、言い方が」

「だって私の兄さんが取られそうになってるんだよ?」

「俺はいつ鈴音の所有物になったんだよ……」


 いつだって俺は何にも縛られない自由な男だというのに……

 まあ法律とか校則とかは守らないといけないけど……あれ? 何にも縛られない自由って――おっといけない話がそれてしまった。


「ま、日曜日に全部聞けばいっか」

「全部聞くも何もただの友達なだけだけどな」

「確かに同性の友達なら家に来るのは普通かもしれないけど、異性の人はよっぽど信頼が無いと家に来るなんてありえないんだよ?」

「まあ……それはそうだよな、俺だってかなり忠告したんだが……まあ氷室はちょっと変わってるんだよ」


 友達が今までまともに居なかった反動というか、警戒心が全く無い所には俺も文句を言いたい。

 これを機に鈴音とも仲良くなってくれると嬉しいのだが、果たして仲良くできるだろうか……


「あ、そうだこれお土産ね」

「なんだ? これ」


 そう言って渡されたのは絶妙なデザインのなんとも形容し難い模様のお面だった。


「それをつけると運気が上がるんだって、兄さん運が無いってよく言ってたから運が欲しい時に付ければいいんじゃない?」

「いいんじゃない? って適当な……ま、まあ、ありがとう」

「あ、それとお菓子の詰め合わせね」

「そっちをおまけみたいにしなくても良かったんじゃないか?」


 どう考えてもお菓子のおまけにそのお面だっただろうに……

 




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