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十五話 妹が帰ってくるらしい



「あのー、氷室さん。つかぬ事をお聞きしたいのですが……」

「なに?」

「氷室がこの学校理事長の孫って話を聞いたんだけど、それってホントなの?」

「ん、おじいちゃんが理事長してるって言ってた」


 今日は図書委員の当番があったので家には寄らず先に氷室を送って帰っているのだが、この前隼人に聞いた話の真意を聞いていた。


 隼人に聞いた時はかなりビックリしたが、やはり話はホントだったらしい。

 という事はやっぱり俺はかなり失礼なことをしていたのではないだろうか、という気持ちが湧き上がってくる。


「ちなみに敬語に――」

「いつも通りにしてくれないとイヤ」

「はいっ」

「それがいい」


 確かに友達なのに敬語を使われる方が気持ち悪くて嫌だろう。

 氷室はきっとこういう事が多かっただろうから、今のは俺の方がデリカシーが無かったかもしれない。


「それはそうと今週の金曜日からなんだが、どうやら妹だけ2週間こっちに帰ってくるみたいなんだ。だからその間は家で本を読むのは無しになるかもしれない」

「優佑って妹居たの?」

「あれ、言ってなかったっけ? 俺には一つ下に妹が1人居るんだ」

「会っちゃだめなの?」


 氷室と妹を会わせる……それは考えてもなかったが、もし会わせたらどうなるだろうか。


 妹がグイグイ氷室に絡みに行って、氷室が困っている未来が見える気がするな……

 それに加えて俺と氷室の関係を1日かけて聞かれる事になりそうだ。


「……ダメではないけど、大変なことになるとは思うぞ。主に氷室が」

「大変?」

「ああ。妹は俺と違ってめちゃめちゃグイグイくるから、質問攻めとかボディタッチとかがかなり多くなると思う。悪い奴じゃないんだけど、そこは相性によるな」

「でも優佑の妹なら会ってみたい」


 氷室はグイグイ来るような相手は苦手だと思っていたのだが、氷室は妹と会うことに乗り気のようだ。

 そうなると今度の問題は妹にこれをどう説明するかだが……


「ホントに会いたいんだな?」

「いいの?」

「あいつは結構変なところで勘が良いからな、隠したところでなんやかんやバレそうだし氷室が会いたいって言ってくれるなら、最初っから話を通しておいた方がいいだろ」


 今向こうはまだ夜なので、起きる頃に後で連絡してもらえるようにメッセージを送る事にしておこう。


(俺はそれまでになんて説明するか考えとかないとな)


「優佑の妹の写真って無い? 見てみたい」

「あるけど……一応本人に見せていいかだけ聞いときたいからそれも連絡した時に聞いてみるよ。じゃあまた明日、晩御飯食べ終わった後くらいに妹に連絡するから結果は後でメッセージに送るな」

「ありがとう、楽しみに待ってる。また明日」






 晩御飯も食べ終え、ある程度ひと段落ついたところで妹にさっきの話をするためにメッセージを送る。


『今週金曜日の事でちょっと話したいことがあるんだけど、時間があったら電話してくれないか?』


 30分もすれば反応があるかなと思い本に手を伸ばそうとした瞬間、スマホの着信音がけたたましく鳴り響いた。


「……流石に早すぎるだろ、鈴音」

「兄さんこそ、この前電話したばっかりなのにもう私の声が聞きたくなったの?」

「はいはい、そうかもな」

「適当すぎる、そんなんじゃ女の子にモテないよ?」


 それは余計なお世話だ、と口にしたいのをグッと我慢してさっさと要件を話す事にする。


「それでな、今度鈴音が帰ってくるときに鈴音に会いたいって言う友達が居るんだけど、鈴音は会いたいか?」

「えーっと、遠藤さんだっけ? 中学の頃から兄さんと仲の良い人って。別にいいけどあんまり話す事はないよ?」

「いや、隼人じゃなくってだな。最近仲良くなったんだが、今日鈴音が来るって話をしたら会ってみたいって」

「兄さんにも新しい友達が出来たんだね、でも私あんまり男の人に興味ないから口説いてくるようなら直ぐ帰ってもらう事になるけど」

「……ああ。それなんだけどな、会いたいって言ってるの男じゃないんだよ」


 そう言った瞬間だった、一瞬鈴音からの声が途切れたかと思うといつになく静かな声で鈴音が喋り出した。


「彼女?」

「いやいやまさか、俺と釣り合うような人じゃないし、そもそもただの友達だから」

「ふーん、まあ会った時に確かめればいっか。その人には会ってもいいって言っといて」

「分かった、ありがとな」


 色々聞かれると思っていたが、全くそんな事も無くオッケーが貰えた事に驚きながらも、こうなると恐らく会った時が大変なんだろうなと思う。

 もう今年で高校生になっているんだし、とっとと兄離れして欲しいところだ。


「あ、その友達が鈴音の写真見たいって言ってたけど見せても大丈夫か?」

「……いいよ、その代わり見せるのは兄さんとのツーショットのやつにしといてね」

「分かった、じゃあ金曜日帰って来るの楽しみにしてるよ」

「うん、金曜日会えるの楽しみにしてる」




 鈴音との通話が終わった後、会ってもいいという旨と、鈴音と俺のツーショット写真を氷室に送った。


 すると、優佑も妹もお互いの事が大好きなんだね、と返された。

 なるほど、これが狙いだったか妹よ……






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