一話 今年も結局図書委員
「よし、じゃあ委員会決めをするぞー」
つい1週間前に高校二年生に進級した俺こと木戸優佑は、そんな先生の声をBGMにうつらうつらしていた。
どう考えても昨日、というより日付的には今日の二時過ぎまで本を読みふけって睡眠時間があまり取れなかったのが原因な訳だが、それに加えてポカポカとした春の空気がより一層俺の眠気を誘っていた。
「――んー、残っているのは図書委員と風紀委員か……そういえば木戸は去年図書委員だったよな。どうだ? 今年もやるのか?」
「……」
「おーい木戸、確かに6限目で眠いのは分かるが返事してもらってもいいかー?」
ぽけーっとしていた時に急に先生に肩を叩かれてビクッっと身体が跳ね上がる。
完全にボーッとしていたため何が一体……と一瞬思ったが、そういえば最初に委員会がどうちゃらこうちゃら言っていたような気がする。
「今日欠席のやつと木戸以外の委員会は決まったんだが、木戸は去年もやっていた図書委員でもいいか?」
「えっ、あ、はい」
――あっ……
起きて直ぐという事もあって何も考えずに返事をしてしまった訳だが、数秒してそんな適当に返事をしてしまった事を後悔する。
去年はじゃんけんに負けてあまり選択肢がなかった事と、本……というよりライトノベルがまあまあ好きだという単純な理由で図書委員をしたのだが、これがまたそこそこに面倒な委員会だった。
週に1回、朝と昼休みに貸出をするためにカウンターに居なければならないのはまだいいのだが、放課後は最終下校時刻近くまで学校に居なければならないというのがとても面倒なのだ。
週に1回くらいで何をそこまでと思うかもしれないが、あまり本を借りる人も居ないのにただそこに居ないといけないというのが辛い。
大体2人か3人のペアでそれをやるので会話でもしてその時間を凌ぐのが普通、というかみんなそうしているのだが、去年の俺はそうもいかなかった。
くじ引きで決まったペアは三年の先輩だったのだが、かなり部活熱心な人だったので朝と昼休みこそ委員会活動はしていたものの、放課後は部活動の方を優先していたのだ。
その先輩のことを恨むような事は思ってないが、せめて自分のくじ運がもう少し良ければ……と当番の日が周ってくる度に考えてしまったのも仕方のないことだろう。
他にもいくつか図書委員をやりたくなかった理由はあるのだが、適当に返事をしてしまった為に結局去年と同じ轍を踏む事になってしまった。
今からやっぱり他の委員会が良いなんて言い出せるような図太い神経を持ち合わせている訳もなく、今年も図書委員にお世話になることが決定した。
「なーにやってんだか」
と、六限目の後のホームルームが終わって早々に校内で唯一と言っていい友達にして、小学生の頃からの付き合いがある遠藤隼人が呆れた表情で話しかけてくる。
「あれだけ今年は図書委員以外をやるって息巻いてたのに居眠りして結局今年も図書委員になるなんてアホだろ」
「……うっせえなあ」
「どうせ夜更かしでもしてたんだろ? 好きなことに時間を使うのはいいがそればっかりだとマジで海外に行く羽目になるんじゃないか? お前のとこの母さんは結構過保護なんだからさ」
「うっ……」
俺の両親は海外出張で家を空けているのだが、なんとか無理を言って条件付きで俺だけ日本で一人暮らしをさせて貰っている。
その条件の中身は平均以上は成績を取る事や、自炊、掃除、洗濯などはきちんとするなどなど様々だ。
「ま、程々に気をつけろよ? ……っとそろそろ時間ヤバイし行かないとな。じゃあまた明日」
「はいよ、また明日な――あ、そっちも頑張れよ生徒会長さん」
「……その呼び方はやめろ」
顔をしかめながら去っていく隼人にひらひらとからかいの意味も込めて手を振った後に俺もカバンを持って教室を出る。
図書委員を今年もやるのはあまり気が乗らないが、かといって委員会の集まりに初っ端から遅れる訳にもいかないので早歩きで図書館に向かう。
今年はまともな人がペアになってくれと切に願いながら……