華ちゃん日記
この物語は第207甲殻魔導小隊の登場人物、姫路華の前日譚となりますが、本編を読んでいなくても内容はわかるようにはしているつもりですので一短編としてお楽しみいただければ幸いです。
八月三十一日
明日から新しい学校での生活!
どんなところかな? 友達いっぱいできるかな?
スッゴク楽しみで夜も眠れないよー
九月一日
今日は始業式だけで終わったよ!
自己紹介はちゃんとできたと思う。
隣の席の加西ちゃんと話した!
とってもきれいでいい匂いがする!
お父さんはこの辺じゃ有名な政治家さんなんだってねーすごいねー
あと私の目をほめてくれた!
きれいだねーって、でも、そうでしょって言ったらなんかふきげんになったような気がする。
気のせいだよね。
九月二日
朝教室に行ったら机の上に花瓶が置いてあって知らない黄色いお花がさしてあった。
誰かが置いて忘れたのかなって思って先生の机に置いたらあとですっごく怒られた。
なんでだろ? 先生は黄色い菊の花の花言葉が~って言ってたなー。
九月三日
今日は体育の時間にドッジボールをしたよ。
私は最後まで中に残ってチームのしょーりにこうけんしたよ。
顔面セーフでいっぱい当たったけどノーカウントだからね。
後で加西ちゃんが保健室までついてきてくれたの、やさしいなぁ。
九月四日
今日は学校に行って椅子に座ったらお尻がチクってして何かなーって思ったら画ビョウが一つ落ちてた。
誰かが落としたのかなー?
そういえば左前の席の休み時間にいつも本読んでる子が授業中に消しゴム落として拾ってあげたらすごく驚いてた。
なんでだろ?
あの子とも話してみたいけど加西ちゃんがあの子は一人が好きだからそっとしておいてあげてって言ってた。
九月五日
今日はママと一緒にお料理したよ。
パパは美味しいってカレーをいっぱい食べてくれた!
明日は一緒にお出掛けするんだー。
九月六日
今日はママとパパとお出掛けしたよ。
知らない所だから全部が初めてで楽しかったなぁ。
あと途中で左前の席の子、東条ちゃんに会ったよ。
挨拶したらおどろいてたけど、ビックリしやすい子なのかなぁ。
九月七日
今日、学校に行って上履きに履き替えようと思ったら中から三個くらい画ビョウが出てきた、両方から。
そんなこと有るかなーって思って先生に言ったらたまたま入っただけじゃないの? って言われた。
そうなのかな?
九月八日
今日、学校に行ったら教室に私の机がなかった。
探したらベランダにあった。
加西ちゃんが運ぶの手伝ってくれた。
やっぱりやさしいなぁ。
九月九日
今日は誰も私と話してくれなかった。
なんでかなぁ。
私何かしたかなぁ。
九月十日
今日はみんな話してくれたよ!
昨日のは遊びなんだって。
ジョーダンだよって笑ってた。
しんぞうに悪いからやめて欲しいなぁ。
九月十一日
今日学校に行ったら机の中にカエルの死んだのが入ってた。
誰がやったのかな。
そりゃ泣くよ。
九月十二日
今日はママと一緒におうちのお片付けしたよ。
お小遣いもらっちゃった、パパには内緒なんだって。
私今もしかしてブルジョワ?
九月十三日
今日もママとパパとお出掛けしたよ。
また東条ちゃんに会っちゃった。
少し大人しい子だけど話してみたら普通の子だったよ。
明日からまた学校かぁ。
九月十四日
今日は上履きが泥だらけになってた。
加西ちゃんが洗うの手伝ってくれたけどびしょびしょだからかわくまで先生にスリッパかりたら理由を聞かれて話したら加西ちゃんがえらいねーってほめられてた。
加西ちゃんはやさしいし友達としてハナが高いよ!
でも学校行きたくないなぁ。
でもそんなこと言ったらママとパパが心配しちゃう。
そういえば東条ちゃんが休み時間にいつもどっかに行ってる。
何してるんだろう?
九月十五日
どうしていやだって言ったのにみんなむしするんだろう?
いやだって言ったのに。
九月十六日
どうしてかなぁ。
何かしたかなぁ。
九月十七日
九月十八日
九月十九日
九月二十日
九月二十一日
九月二十二日
九月二十三日
九月二十四日
どうして? どうして? なんで? なんで? なんでみんなそんなひどいことするの?
私何かしたかな?
いやだ、もう学校行きたくない。
九月二十五日
ショックだった、トイレに入ってたら外で加西ちゃんが次は何して遊ぶか話してた。
私に対する仕打ちは全部遊びだったんだ。
ひどいよ、そんなのないよ。
月曜日にちゃんと聞こう、そして言おうもうやめてって。
九月二十八日、私は朝早くに学校へ向かった。
正直足取りはとてもじゃないけど軽いとは言い難かった。
友達だと思ってたのに、こんな裏切りはあんまりだ。
下駄箱で上履きの中に入った画ビョウを撒き散らしてから履き替える、もう画ビョウが入っているということは加西ちゃんはもう来ているのかな?
隠れて現場を押さえようと思っていたのに、まぁその方が話しは早いかな。
目指すは三年生の教室。
いつもは軽く片手でスライドするこの教室の扉も今日はとても重く感じる……いや最近は毎日重かったかなぁ。
私はガラリと勢いよく教室の扉を開けると一番に目に飛び込んできたのは今まさに私の机にノリを塗りたくっている加西ちゃんと二人の友人達の姿だった。
「何をしてるの?」
私の言葉に加西ちゃんは焦るでもなし、深くため息をついてこういい放った。
「あーあ、バレちゃった、もう少し遊びたかったのになー」
私はまさかそんなことを言われるとは思ってもいなかった。
あのやさしかった加西ちゃんがやってたなんてほんとは信じたくなかった。
「どうして? どうしてこんなことするの?」
自然と声が震えてくる。
駄目だ、今はまだ泣いちゃ駄目。
「んー、面白いからかな?」
それだけ?
たったそれだけ?
「だからってなんで……! 私が! うちが何したって言うの!」
「あんた忘れたの? 転校してきた日、私が綺麗な目してるねって言った時何て言った? そうでしょって言ったのよ? 優越感浸ってんじゃないわよ! 自分は特別だとでも言いたいわけ? ふざけないでよ! 特別なのは、わ!た!し! 家柄もいいし!見た目も可愛い! それをわからせてやろうと思ってね」
別に優越感なんて浸ってない。
うちはただ誇らしかった。
左目と髪をママから受け継ぎ、右目はパパから、うちはあの二人の子供なんだなって。
「この事先生に言うから」
「ちょっと待ちなさいよ」
うちはそのまま身体をひるがえし扉へと向かおうとするけど案の定呼び止められた。
それはそうだよね、そのまま行かせたら怒られるだけですまないもの。
謝るならまだ水に流してあげてもいいよ?
「先生が信じると思ってるの?」
「は?」
え? 加西ちゃんこの状況でまだいけると思ってるの?
だって被害者であるうちが見てるんだよ?
それを信じないってそんなことを有るわけ……。
「私のパパは政治家なの、それもこの辺じゃ有名な……ね、先生どころか校長先生だって頭があがらないわ、それに証拠が無いもの、私がやったって証拠が」
証拠なんて無い、そんなのあるわけ無いよ、何の用意もしてないもん。
加西ちゃんの完全に勝ち誇った表情、悔しい。
「あなたは大人しく私の点数稼ぎの道具になっていればいいのよ」
悔しい、悔しい、新しい学校で、どんなところかなって楽しみだったのに。
「あの……」
突然教卓から声がするもんだからうちも加西ちゃんとその両脇にいた二人もビクリと身体を震わせるよね。
だって人がいるなんて思わないもん。
視線を一身に向けられた教卓から出てきたのは東条ちゃんだった。
「証拠なら……あります」
東条ちゃんはそう言うと手に握られたボイスレコーダーのスイッチを入れてさっきの会話を全部まるっと流してくれた。
うん、空気が凍り付くってこういうことを言うんだなって実感した。
「あと……これも」
東条ちゃんが追加で聞かせてくれたのは加西ちゃんがトイレでうちにどんなことをするか話し合っている音声だった。
それが複数種類。
「これの音源は……家のパソコンの中にあります、今とりあげても……あの……意味ないです」
東条ちゃんは淡々と加西ちゃんに対して言葉を紡いでいく。
消して目を会わせず、少し震えているようにも見えた。
「あの……加西さんのお父さん……今年選挙ですよね? 娘がこんなことしてるって知れたら……どうなります?」
「あ……いや……その」
「もうこんなこと……やめてもらえませんか? 私たちは普通に学校に通いたいので、クラスのみんなにも言っておいてください」
「ご……ごめんなさい」
加西ちゃん達はそう言うとそそくさと教室を後にして行った。
流石にいたたまれなくなったのかな?
「ごめんねー! ありがとー!」
うち……私はもう安心したからか、怖かったからか、そりゃーもう泣き崩れましたよ。
その場に座り込んでね。
東条ちゃんはそんな私をそっと抱き寄せて謝ってた。
「ごめんね……絶対に止めなきゃって思ってたら時間がかかっちゃって」
「ううん、こわかったー」
もうそこからは何言っているのか全然わからなかったなぁ。
涙と鼻水でもうぐちゃぐちゃ。
九月二十九日
今日は東条真弓ちゃんにお礼がしたかったから放課後一緒に近くの公園に来てるクレープ屋さんに食べに行ったよ。
なんたってブルジョワだからね。
とはいっても一つしか買うお金がなかったから真弓ちゃんにご馳走しようとお店に行ったらタケってお兄さんが二人いるのに気付いてもう一つおまけしてくれたよ。
後で同い年位のお兄さんに怒られてたような気がするけど……。
その時真弓ちゃんにどうして助けてくれたのって聞いたら、消しゴムを拾ってくれたからって言ってた。
その時思ったよ、この子はそんな普通の事も特別に感じるくらいのけ者にされてたんだなーって。
今度何かあったらうちが助けるからね。
Fin
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