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〈ミッション2日目④〉契約成立

続きです。

-side 南条翼-



 俺は彼女の言葉が信じられずに再度聞き返す。



「おい柳。お前本気で言ってんのか? 自分が言ったことの意味理解できてるか?」


「うん、私は本気だよ。翼くんが困ってるなら私が協力してあげるって言ったの」


「俺はお前の親友のパンツを見ようとしてるんだぞ? それに協力するっていうのか?」


「だって茜ちゃんのパンツを見ないと翼くんが死んじゃうんでしょ?」


「もしそれが嘘だったら?」


「いや、翼くんは嘘をついてないよ」


「どうしてそう言い切れるんだ」


「翼くんは性格は最悪だけど変な嘘をつく人じゃないから」


「どうして俺のためにそこまで言ってくれるんだよ。お前が俺のためにそこまでしてくれる理由が俺には分からない」


「......翼くんが3年間ずっと嫌がらずに私に勉強を教えてくれたからだよ。ずっと恩返しがしたいって思ってたの。それが私が翼くんに協力する理由」


「......」


 俺はそれ以上何も言い返せなかった。


 ...負けた。高校に入って初めて口論で負けた。今までは1回も負けたことがなかったのに。教師すら打ち負かしていたというのに。まさかいつも勉強を教えているコイツに負けるなんて。そんなことがあるとは夢にも思っていなかった。


「.....降参だ柳。俺の負けだ」


「ということは...!」


「......頼む。俺にお前の力を貸してくれ」  


「うんっ! まっかせて!!」


 そう言って太陽のような眩しい笑みを浮かべながら右手の親指をグッと立てる彼女。



 --俺にはその姿がいつもよりなんとなく頼もしく見えた気がした。



----------------------


 

 そして俺たちの協力関係成立から数分後。


「いやー、まさか私が翼くんを黙らせることが出来る日が来るとは思ってなかったよ。今日は雪でも降るのかな?」


「ああ、間違いなく大雪が降るな。まさか正論が通用しない口論をする日がくるとは思ってなかったわ。つーかアレはノーカンだな。俺はまだ負けてない」


「言い訳は見苦しいぞー。1回降参したんだから潔く負けを認めなさーい」


「いや、マジでさ、普通あんな話を信じるヤツいないだろ。アレだな。お前将来絶対詐欺に遭うタイプだわ」


「いやー、それは無いと思うよ? もし翼くん以外の人から呪いの話をされても絶対信じないもん。私は相手が翼くんだから信じたんだもん」


「......なぁ、お前やっぱり俺のこと好きだろ?」


「ねぇ、翼くんは私にそんなこと言える立場なの? なんならさっきの話を全部茜ちゃんにバラすこともできるんだからね?」


「......すいませんでした」


 あれ? もしかしなくても俺ってコイツに弱み握られてね?


「ていうか私が翼くんを信じたのは翼くんが嘘をつくのがド下手だからだし。嘘つく時に鼻がピクってなるの知ってるんだから」


 え、何それ。俺知らなかったんだけど。初耳なんですけど。


「...でも上手に嘘をつけなくても生きていけるのって少し羨ましいな」


「別に生きてりゃ誰だって嘘はつくだろ。まあ、お前が俺のハイスペックさを羨ましいと思うのは仕方がないことかもしれんが」


「その性格のせいでハイスペックが台無しになってることにそろそろ気づいた方が良いと思うんだよね」


「フン、自分を偽って性格を変えるくらいならハイスペックなんて台無しになっても構わん」


「あー、うん。その芯の強さだけは尊敬するよ」


「......柳よ。無駄話はここまでにしようじゃないか。そろそろ本題に入るとしよう」


 本題。つまり呪い解除ミッションについての話だ。


「さっきお前は俺に協力するって言ってくれたけどさ、具体的には何をしてくれるわけ?」


「うーん...翼くんのお手伝い?」


 全然具体的じゃねえ。


「ていうか私まだ翼くんから呪いについて詳しく聞いてないんだけど。ねぇ、翼くんは今までどうやってミッションをクリアしてきたの?」


 あー、そういえばまだコイツにはザックリとした呪いの内容しか話してなかったな。まあ丁度良い機会だ。ここ最近の『俺vsパンツ』について語るとするか。


「...コホン。まず1日目。俺は片桐のパンツを見るための作戦を立てた」


「へぇー、作戦とかあったんだ。で? それってどんな作戦だったの?」


「ジャパニーズDOGEZA作戦だ」


「...」


「ジャパニーズDOG」


「いや、2回言わなくていいから。絶句してただけだから」


「...これは文字通り片桐に土下座で誠意を見せてお願いするという作s」


「いや、作戦の説明もいらないから。ていうか翼くんが土下座してるところ実際に見てたし」


 オイ。せめて人の話は最後まで聞けよ。


「...まあ結果から言うとこの作戦は失敗に終わった」


「だろうね。ていうかなんで成功すると思ったの」


「いや、なんとなくイケる気がしまして...」


「はぁ...アレだよね。翼くんって頭は良いけどバカだよね」


「え、それ矛盾してない?」


「いや、今はそういうツッコミ良いから。それで? 結局その日はどうやって茜ちゃんのパンツを見たの? 私が屋上の扉の隙間から覗いてた時はなんか変な風が吹いてるように見えたんだけど」


「カミカゼを使用した」


「...」


「カミカz」


「いや聞こえてるから。そのカミカゼってやつについてくやしく説明してよ」


「クッ...! コンチクショウ...! このカミカゼっていうのはなぁ...! お助けスキルってやつでなぁ...!」


「ごめん、言い間違えた。『悔しく説明』じゃなくて『詳しく説明』だった」


「カミカゼっていうのは悪魔から授けられたお助けスキルです」


「? お助けスキル...?」


「まあ超能力みたいなもんだ。でもあんまり作戦のアテにしない方がいいぞ。発動成功率5%だからな。存在価値は生ゴミと同じだ」


「超能力なんて本当にあるんだ...ってえ? 成功率5%? 翼くんめちゃくちゃ運良くない!?」


「まあそうだな。だが確率的にはもう2度と成功しないと考えた方がいいだろう」


「なるほどね...ってちょっと待って。つまり翼くんは運が良かったから初日を乗り切れたってこと?」


「ああ、そうだ。ラッキースケベってやつだな」


「いや、それはちょっと意味が違う気がする...」


「なんなら2日目のラッキースケベの話も聞くか?」


「2日目もラッキーで乗り切ったの!?」


「ああ。つーか今日ミッションクリアできたのは半分お前のおかげだわ。お前が昼休みに俺を呼び出してくれなかったら俺の命日は今日だったかもしれない」


「? 私のおかげ? なんで?」


「いや、今日の昼休みって片桐が屋上に乱入して俺にハイキックかましてきただろ? あの時にパンツ見えてたんだよ」


「え、あの一瞬でパンツの色まで確認してたの!?」


「俺の動体視力ならそれくらい朝飯前よ」


「もうその才能は他の誰かに分けてあげた方が世の中のためになるんじゃないかな」


「...あ、そうだ。1つ聞き忘れてたわ。お前ってなんで今日俺にパンツを見せようとしたわけ? すげぇ気になるんだけど」


「そ、それは...私が茜ちゃんの代わりに翼くんにパンツを見せれば茜ちゃんはパンツを見せなくても良くなるのかなって思って...」


「ほう。つまりお前は片桐の身代わりになろうとしたということか。フッ、美しい友情だな」


「いや、他人事みたいに言うのやめてくれない!? 1番悪いのは翼くんだからね!?」



----------------------



「......というわけでだ、柳。今までの俺の奮闘記を聞いた上で何か意見はあるか?」


「まあ意見はいっぱいあるよ。まず1つ目。翼くんは何の代償も無しにパンツを見ようとしてるけどさ、本当にそんなことできると思ってる?」


「つまり俺も何かしらの代償を払うべきだということか?」


「当たり前じゃない。等価交換よ。等価交換」


「等価交換...等価交換......つまり俺も自分のパンツを片桐に見せた方が良いということか...?」


「いや、それってただの公然わいせつじゃない!!」


【幼馴染と毎日パンツを見せ合うことになった件 〜じゃあ俺もパンツ見せるわ〜】




「じゃあどうしろって言うんだよ。そもそもパンツ見るっていうのが難題過ぎるんだよ」


「ふふ、実はね、1つだけパンツを見るハードルを下げる方法があるんだけど...知りたい?」


 なぜか突然ニヤニヤし始める柳さん。


「そんなの知りたいに決まってるだろ。勿体ぶってないでさっさと教えろ」


「ふふ、じゃあ教えてあげる。パンツを見るハードルを下げるためにはね...」


 この時、俺は勿体ぶっている柳に多少の苛立ちを覚えつつも、期待の眼差しで彼女を見つめていた。


 ...しかし次の瞬間、彼女の口から出たのは俺が全く想定していなかった方向性の提案だった。







「翼くんと茜ちゃんが付き合っちゃえばいいんだよ♪」

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