〈ミッション2日目②〉煩悩モンスター
続きです。
-side 南条翼-
--女子から昼休みに屋上に呼び出される。
それは一般的な男子諸君ならドキドキしてしまうイベントだろう。甘酸っぱいイベントを期待してソワソワするのもまあ無理はない。
だがしかーし!! 友達の少なさ以外は欠点が皆無な完璧ボーイこと、俺、南条翼は女子に昼休みに呼び出されてもドキドキなんてしない。
...は、はは、つーわけで今屋上で柳と向かいあってる訳だけどさ、じ、じ、自分でも驚くくらいお、お、おおお落ち着いてるぜ。だ、だ、だってお、俺は天才だからな。か、か、掛け算だって得意だし。1×4=聖徳太子だし。
「翼くんなんかいつもと様子ちがくない? 具合でも悪いの?」
「は、はは! べ、別に具合は悪くないぞ! 150%いつも通りだぜ!!」
「100%超えてたら逆にいつも通りじゃなくない?」
「......確かに」
「ねぇ、翼くん」
「はひ」
「あのね...朝も言ったけどね、私どうしても翼くんに言いたいことがあるの...」
目の前で何やら覚悟を決めたような表情で俺を見つめてくる柳。
「お、お、俺に言いたいこと? な、な、なんだよ」
落ち着け俺。天才は常にクールに冷静に、だ。そう、こういう時は母親の顔を思い出すんだ。身内の顔を思い出すことで昂った心を静めようじゃないか。
(母の顔を)Now Loading...
......ダメだ! 昨日屋上で見た光景が強烈過ぎて片桐の白パンツしか思い出せねぇ! こういう時までホントなんなんだよ俺! 煩悩モンスターかよ! いっそのこと討伐されちまえクソが!
「ねぇ翼くん」
そう言うと目の前に居る柳は突然俺との距離を詰めてきた。
......え、ちょっと待って近い近い近い近い息当たってる息当たってる息当たってる実は俺童貞童貞童貞童貞童t
「昨日屋上で茜ちゃんと何してたの?」
「......え? 今なんと?」
「だーかーら! 翼くん昨日茜ちゃんと屋上で何かしてたでしょ!? 何してたのか教えてよ!!」
「......あー、そういうことね」
オーケー、オーケー、理解理解。はっはーん、なるほど。柳さんは昨日の必殺カミカゼ(必殺とは言ってない)を見てたわけね。だからアレが何だったのか気になって俺を屋上に呼び出したわけね。ま、まあ? 別に最初から告白なんて期待してなかったし? 全然ドキドキとかしてなかったけどな!
...ってちょっと待てぇい! 昨日のアレを知られた!? は!? なんだそれ! 大ピンチじゃねぇか!!
「で! 結局何してたの!」
だから息当たってるっつーの...お前も一応女子なんだから少しは気を遣えよ...
「...すまん、顔が近いから少し離れてくれないか」
「あっ! ご、ごめん!」
すると柳は慌てた様子で3歩ほど後ろに下がった。
「お前昨日の昼休みのアレ全部見てたわけ?」
「い、いや! 全部は見てないよ! 翼くんが茜ちゃんに殴られたところまでしか見てないよ!」
「いやそれ全部じゃねぇか!!」
「...で、結局アレは何だったの?」
「え、えっーと、それは......」
い、言えねぇ...『命懸けで女子のパンツを見ようとしてたんだ!』なんて言えるわけねぇ...つーかそんなのどう説明すればいいかも分からねぇ...
「え、えっと...翼くんは女の子のパンツが見たいの?」
「......否定はできない」
「じ、じゃあ私が...」
「......は?」
「......わ、私がパンツ見せてあげようか...?」
「......」
昔に誰かから『人は本当に驚いた時は無になる』と聞いたことがある。当時幼かった俺はその言葉を信じていなかった。だがこの時、俺はその言葉に人生で初めて納得した。
...いや、マジで展開が予想外過ぎて何も言えなかった。
だってさ、普通は『翼くん最低!』とか『もうそんなことやめてよ!』とか言われると思うよね? それがどういう因果を経たら『うふふ、パンツ見せてあげる♪(誇張)』になるわけ?
うーん、でも片桐のパンツじゃないとダメなんだよなぁ...他の誰かのパンツを見ても俺の命が救われるわけじゃないし...
......いや、待てよ? 柳がパンツを見せてくれても俺の命が助からないというのは確かだ。でも柳がパンツを見せてくれるのならそれはそれで良いのでは?
はっはっは、いやいや。別に下心があるというわけではないさ。本人が見せたいと言ってるなら見てやろうという話さ。俺は紳士だからな。決して邪な気持ちなんて無い。
「つ、翼くんは私のパンツ見たい...?」
当たり前だろ。ついでにバレー部で3年間鍛え上げた太ももも見せやがれ。
「ま、まあ見たくないと言えば嘘になる」
「......翼くんのエッチ」
残念、ノーダメージだ。その言葉は男子が女子に言われたい言葉ランキング第3位だからな。(俺調べ)
「わ、分かった。じゃあ見せてあげる...」
「え!? マジで見せてくれんの!?」
俺は半分冗談だと思っていたのが、柳の方は100%マジだったようだ。
俺から目を逸らし、頬を紅潮させながらスカートを少しずつめくり始める柳。それと同時に元バレー部の引き締まった太ももが少しずつあらわになっていく。
そして片桐のパンツを2日連続で見ているにもかかわらず興奮MAXの俺。やべぇ。少しずつめくられるのってたまんねぇな。焦らされるのもアリだわ。
さらにスカートはどんどんめくれていく。もうまもなく楽園が現れてくれそうだ...!
もう少し...! もう少し...! もう少し...!
--しかし人生とはそう上手くいかないものらしい。
「...この変態! 愛佳に何やらせてんのよ!!」
「フゴァッッ!?」
突如屋上の扉が開くと同時に飛び蹴りが俺を襲った。
「か、片桐...なぜお前がここに...」
右肩をフルパワーでキックされてうずくまる俺。
「怖かったね、愛佳。さぁ、こんな変態は放っておいて早く教室に戻りましょ!!」
「え、いやでも翼くんだけが悪いってわけじゃ...」
「さぁ愛佳! 早く戻るわよ!!」
「あー、ちょっと茜ちゃん! 手引っ張んないでよー!」
すると片桐は柳の手を引いて屋上から出て行ってしまった。
「......フフ、フフフフ! ハハハハハ!! ハーッハッハッハァ!!」
そして屋上で1人取り残されて高笑いする俺。ああ、別に片桐から蹴られて喜んでるわけじゃないぞ。柳のパンツを見られなかった代わりに1つ収穫を得られたから笑っているんだ。
ふっふっふ。片桐、お前は俺の動体視力をナメ過ぎていたようだな。スカートのまま飛び蹴りしてくれたのはラッキーだったぜ。お前のおかげで俺はバッチリ見ることができたよ.....
--黒のエッロいパンティーをな。
次回、放課後編