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〈ミッション2日目①〉理性蒸発

2日目開始です。

-side 南条翼-


 呪い解除ミッション2日目。昨日片桐に殴られた右頬が痛い。普通に辛い。


 ま、まあ俺がMであるということは認めるよ。でもほら、痛いのって普通に辛いんだよ。俺は殴られたり蹴られたり罵倒されたり睨まれたりするという『行為』そのものに興奮するのであって、別に与えられた痛みを快感として受け取るわけではないからな。よって普通に辛い。証明終了。Q.E.D.


 しかし呪い解除ミッションは俺がどれだけ痛みを味わおうと終わってくれない。今日も今日とて学園のマドンナのスカートの中に意識を集中させなければいけないのだ。


 というわけで朝登校し、いつものように主人公ポジションの席に着いた俺は1人で思考を巡らせていた。


 昨日は奇跡的にカミカゼが発動してくれたからなんとかなったものの、この発動率5%のゴミスキルにいつまでも頼るわけにはいかないからな。今日はより確実に片桐のパンツを見る方法を模索せねば。


 よし、では早速脳内作戦会議開始だ。まずは昨日のDOGEZA作戦から分かったことが1つ。それは片桐が俺に好意を持っているという想定で動くのはやめた方がいいということだ。


 ...いや、片桐は多分俺のこと好きだよ? いや、でもさ、ほら、アイツ多分ツンデレじゃん? だから俺に対する当たりが強いんだよ、多分。ま、まあ要するに普通に『パンツを見せてくれ』と頼んでもダメだろうなって話だ。


 ならば強行策に出るしかあるまい。できればリスクは最小限にしたいが、多少の犠牲いたみは覚悟しないといけないだろうな。


 リスクが少ない強行策か...何かあるかな...


 ...いや、少し落ち着け俺。最初からリスクが小さい強行策そのものを考えようとしてもそんなのすぐに思いつく訳がないじゃないか。まずはリスク度外視でパンツの色を確認するための方法をいくつか考えるべきだろう。そして考案した強行策候補の中から1番リスクが低いものを選べばいい。よし、これで無駄な思考時間を作らずに済むな。うむ、やはり俺は天才だ。


 というわけで俺はパンツの色を確認する方法をいくつかノートにメモってみることにした。



----------------------


〈作戦候補一覧〉


・片桐に直接頼み込む(昨日失敗)

・片桐の友達に協力を求める(学校での俺の立場が色んな意味で終わる)

・スカートめくり(倫理的にアウト)

・更衣室にカメラを仕掛ける(犯罪)

・直接盗撮する(犯罪)


----------------------



 あはは、リスクしか無い。マジウケる。




「クソ...一体俺はどうすればいいっていうんだ...」


 と、頭を抱えていた時だった。





「作戦候補一覧...? 翼くん、それ何...?」


 クラスメートの女子に思いっきりノートを覗かれた。


「うぇ!? 柳!? お前いつからそこに居たんだ!?」


 慌ててノートを閉じる。ちなみに今話しかけてきた女子の名前は柳愛佳だ。短髪でボーイッシュな奴ではあるが、結構かわいい垂れ目をしてるし、鼻も高いから顔面偏差値は学園のマドンナこと片桐茜にも負けていないと思う。あと胸は片桐より小さいが、元バレー部ということだけあって非常に良いケツをしている。そして毎日俺に『勉強を教えろ』と言ってくる女だ。多分俺のことが好きなんだろう。


「あ、あのー、柳さん...もしかしてさっき俺のノートの中見ましたか...?」


「いや、『作戦候補一覧』って書いてあるとこしか見えなかったけど...なになに? 私に見られたくないようなことでも書いてたの?」


 柳はまるで良いイタズラを思いついた子供のようにニヤニしながらこちらを見下ろしている。


「いや、別にお前に見られて困るものなど無い。俺はただネセルセス問題の証明をノートに書こうと思っていただけなんだ。チンロギー法で証明しようとしていたのだが、ザバスがオイロンになってチマニギ状態になってしまったからこれ以上証明を進めることができなくなってしまってな。マジでペソサだわ」


「なーんだ、数学の問題解いてただけなのかー。相変わらず難しそうな問題解いてるんだねー」


 柳はアホである。故にテキトーなカタカナを言っておけばコイツは勝手に俺が数学の証明問題を解いていると勘違いし、それ以上の追及はしなくなるのだ。『チマニギ状態』とか『ペソサ』とかそんな言葉知らん。テキトーにでっち上げただけだ。


「で、お前は何しに俺の席に来たわけ?」


「あ、そうそう。物理の問題で分からないところがあるの。だから翼くんに教えてもらおうかなーって思って」


「またかよ。つーかお前手ブラじゃねぇか。教材はどこだよ」


「あっ、持ってくるの忘れてた! ちょっと取ってくるね!」


 すると柳は自分の席に戻り、問題集とシャーペンを手に持ってこちらに戻ってきた。


 そして俺の席に戻ってきた柳は問題集を机に広げながら俺のすぐ隣まで近づいて来た。


 ...あ、なんか良い匂いする。


「えーっとね、この4択問題が分からないんだけど...」


「答えは③だ。以上、解説終了」


「もう! 翼くんひどい! 性格悪い!」


 はい罵倒ごほうび頂きましたー。


「まあそう照れるなよ」


「いや、全然照れてないんだけど...いいから早く問題の解き方教えてよぉ」


「ふっ、仕方ないな。では偏差値70オーバーの俺が世界一分かりやすい解説をしてやろう」


「はぁ...その性格さえ直せば翼くんは普通にモテると思うんだけどね...」


「何を言っている。俺はモテモテだぞ。現に今もこうして柳という女子にモテている」


「いや、だから何回も言ったよね? いつも勉強を教えてくれる翼くんには感謝してるけど別に好きってわけではないって」


「まったく。素直じゃない女だな」


「翼くんってある意味すごいよね。もうポジティブっていう概念が服を着て歩いてるよね。ナルシストを一切隠さないのって逆にすごいよ。まあ翼くんに友達が全然居ないのはそのせいなんだろうけど」


「ストップ柳。一応俺も無敵というわけではないんだ。そういうガチで心にくる感じの悪口は守備範囲外。普通に傷つく」


「うわ、めんどくさっ。まあいいや。とりあえず早くこの問題の解き方教えてよ」


 それが人に物を頼む時の態度か?


「...コホン。まずは選択肢①について解説。①は『供給した電気エネルギーのすべてを光エネルギーに変換することができる』という記述が間違いだ。ほら、豆電球って触ったら割と熱いだろ? アレは供給した電気エネルギーが100%光エネルギーに変換されずに熱エネルギーとして外に出て行ってるってことなんだよ。ちなみに外に出て行くエネルギーを最小限に減らしたのがLEDな。だからLEDは触っても熱くないし長持ちする」


「ふむふむ、なるほど」


 そしてその後、俺は選択肢②〜④についての解説も同様に行った。


「ありがとう翼くん! 分かりやすかったよ! やっぱり勉強面だけは頼りになるね!」


「一言多いぞ、このアホ」


「うるさい、この天才ナルシスト」


 いや、天才ナルシストってなんなんだよ。称賛と悪口のハイブリットかよ。


「ね、ねぇ、翼くん」


「なんだよ」


「えーっと、その...今日の昼休みって時間ある?」


「突然どうした」


「いいから質問に答えて!」


「うーん、昼休み...昼休みかぁ...」


 呪い解除ミッションにおいて昼休みというのは結構貴重な時間だ。ぶっちゃけ昼休みは丸々片桐と接触する時間に費やしたい。だから仮に今から柳が『昼休みにエッチなことしよ♪』とか言ってきたとしても、ここは俺の理性をフル稼働させて彼女からのお誘いを絶対に断らなければならない。



「どうしても翼くんに伝えたいことがあるの。2人きりで話す時間が欲しいから昼休みに屋上に来て欲しいな」


「OK、昼休みはバチクソ暇だわ」


 俺に理性なんて無かった。



 ......い、いや? お、俺は別に? モテモテだから女子に呼び出されてドキドキなんてしてないし? つーか相手は柳だし? 確かにかわいいけど全くそういう感じの間柄じゃないし? だから、まあ? 『え、コレ告白されるんじゃね?』とか1ミリくらいしか思ってないけど? まあミッション実行は放課後に回すことができなくもないし? 昼休みに柳のために時間を作ってやるのもやぶさかではない...的な?


「じ、じゃあそろそろ予鈴の時間だから私は席に戻るね!」


 すると柳は教材とペンを抱え、小走りで席に戻って行った。


 ...そして柳を見送って少し冷静になった俺はある事を思い出した。




「あ、結局まだスカートの中を見る方法思いついてなかったわ......」

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