〈ミッション1日目②〉勝利の女神
茜vs翼、一回戦開始です。
-side 南条翼-
なんか意外とあっさり片桐が屋上に来てくれた。え、なんなの? めっちゃ拒絶されると思ってたから逆にビビってるんだけど。
「ねぇ南条、今日は一体何の用なの? 私も暇じゃないんだけど」
え、暇じゃなかったの...? 柳と一緒に昼飯食ってただけに見えたんだけど...?
「なぁ片桐、呼び出した俺が言うのもアレだが正直お前がこうも簡単に屋上に来てくれるとは思わなかったわ。昨日俺に『金輪際関わるな』とか言ってたし」
「そ、それは...こ、これ以上無視するのもそれはそれで面倒だと思ったの!」
「お前意外とチョロいな」
「う、うるさいわね! それ以上余計なこと言ったらアンタを無視して教室に戻るから!」
「いやマジでゴメン。いくらでも謝るからそれだけはホントやめて」
いや、ほんとに今教室に戻るのだけはやめてくれ。クラス全員の前でお前のパンツを晒すことになりかねん。
「で、結局私にどんな用事があるわけ?」
「用事の内容はL◯NEで送った通りだ。俺がお前に誠意を見せるんだよ」
「へ、へぇー。せ、誠意ね...」
「うむ、では早速今からお前に誠意を見せるとしよう」
「ち、ちょっと待って南条! まだ心の準備が出来てないから!」
は? 心の準備? 何言ってんだコイツ? お前お願いされる立場だろ? 別に身構えなくて良くね?
まあいいや。じゃあ早速誠意を見せるとするか。
「よっこらせっと」
「え...? ね、ねえ南条、アンタなんで私の前で正座してるの...?」
いやー、コンクリートの上で正座したらめちゃめちゃ膝痛いな。下手したら傷になるぞこれ。
「ねぇ! だからなんでアンタは正座してるのよ!」
「いや、お前に誠意を見せるためだが」
「なんなのよアンタ...もうワケわかんないわよ...」
そう、俺は片桐に誠意を見せるために今コイツの前にひざまづいている。これも今日考えた作戦のうちの1つなのだ。
「片桐様」
「な、なによ」
そして俺は正座したまま頭を下げて額を地面にこすりつけた。
「はぁ!? アンタいきなりなにしてんの!?」
よし、これで作戦はほぼ完了したようなものだな。あとは誠意を込めて俺の想いを伝えるだけだ。
よっしゃあ! 今日は誠意120%だ!! 届け! 俺の誠意!!
「片桐様...どうか今日から卒業式のまでの間毎日貴方様のパンツを私に拝見させて下さい...」
...よし、作戦完了だな。これでバッチリだぜ。
天才とは反省を怠らないものだ。だから俺は昨日実行した『お前昔から俺のこと好きだし毎日パンツみせてくれるだろ作戦』の反省をきちんと行った。
そして反省した俺は『昨日の作戦は誠意が足りなかったから失敗した』と考えた。その結果思いついたのが今日の作戦である。
今日の作戦では俺の誠意を伝えるために日本に古くから存在する『誠意を伝えるための伝統的な行為』を採用した。日本人は皆昔から今に至るまで謝罪の意や懇願の意をこの行為を通して伝えてきたのだ。採用しない手はないだろう。
そう、名付けて『ジャパニーズDOGEZA作戦』だ。
近頃やらかした芸能人が謝罪会見の場で薄っぺらい誠意でパフォーマンスとして嫌々土下座をすることがあるが、俺の土下座はそんなものとは格が違う。
なんせ俺は筋金入りのドMだからな。俺レベルになると土下座できることに喜びを感じられるんだよ。その辺のパンピーの土下座と一緒にしてもらっちゃ困るぜ。
さぁ片桐! 俺はパーフェクトな土下座で誠意を示したぞ! さすがに今度はパンツを見せる気になっただろ!!
......ってあれ? あのー、片桐さん? なんで君はまだ返事をしてくれないんだい?
「はぁ...なんかもう怒りを通り越して呆れてきたわ...あんたって本当にどうしようもない変態ね...」
片桐の様子を伺うために顔を上げると、呆れた顔の彼女に罵倒された。いいね、呆れた顔もかわいいよ。もっと睨んで。
って今はそんなこと考えてる場合じゃねえ! なぜだ! なぜ片桐はパンツを見せてくれないんだ!
「あのー、片桐さん? まだ俺にパンツを見せてくれないんですか...?」
「はぁ!? アンタ土下座すれば私がパンツを見せるとでも思ってたわけ!? そんなことするわけないでしょ!? バッカじゃないの!?」
え、そうなの?
「はぁ...もう用は済んだでしょ。じゃあ私教室戻るから」
そう言うと片桐は俺に背を向けて屋上の出口へと歩き始めてしまった。やばい、このままだと今日のミッションが達成できない。
いや、待て。もしかしたら土下座している今の状態ならスカートの中覗けるんじゃね...?
...ちくしょう! ここからスカートの中覗こうとしても今日はガードが固くて太ももしか見えねえ! 相変わらず綺麗な太ももしてるなお前! ニーハイ最高! 絶対領域ごちそうさまです!!
いや、ほんとにこのままだとヤバイ。土下座という切り札を失った俺にはもう手段が何も残っていない。このままだとマジでパンツ見れずに死ぬことになっちゃう。
ちくしょう...もう俺は『アレ』に頼るしかないというのか...1日1回の限定発動で成功率5%の例のスキルに頼るしか方法が無いのか...この手は使うことがないと思っていたのにな...
仕方ない! もうなりふり構ってられないし5%の確率にかけてやる! 万が一失敗しても社会的に死ぬことを覚悟してスカートめくりすればいいだけだ! さようなら俺の高校生活!!
「おい片桐、まだ用は済んでいないぞ。最後に1つお願いがあるんだ。申し訳ないけどもう一回俺の目の前に来てくれないか」
「な、なによ。いきなり真面目なトーンで話しかけないでよ。びっくりするじゃない」
片桐はそう言うと出口前から引き返してまたこちらに戻ってきてくれた。うん、やっぱりチョロいわコイツ。
そして片桐が目の前に来たのを確認した俺は立ち上がって彼女と目を合わせた。せっかくのスキル発動だ。どうせ失敗するだろうけどここは派手に決めてやる。
覚悟を決めた俺は右手を高く挙げて目を閉じた。よし、多分意味はないが目を閉じて精神統一だ。集中...集中...集中......
...よし! 今だ!!
「カミカゼェェェェ!!!!!」
「は? アンタいきなり何を言って...ってえ!? ちょっと何よこの風!! きゃっ! ちょっと待って! このままだとスカートめくれちゃう!」
......え? マジ? もしかして俺5%の確率当てちゃった?
吹き荒れる風。スカートを抑える片桐。しかし抵抗虚しく晒されている美尻と至高のおパンツ。なるほど、これが俺の起こした奇跡か。勝利の女神は俺に微笑んだというわけだな。やったぜ、我、大勝利。
「今日の色は純白だぁぁぁぁぁ!!!!」
「もう!! ホントなんなのよこの風!! 早く止まりなさいよ!!!」
「うおぉぉぉぉぉ!! やっぱり白は最強だぁぁぁ!!!」
「ほんっっとアンタ後で覚えときなさいよ!!! 絶対許さないから!!!」
結局その後も数分間風は吹き続け、その間はずっと『狂喜乱舞する俺&風と俺にブチ切れる片桐』というカオスな構図のままだった。
なお、風が止んだ後にまた俺が片桐の右ストレートを喰らったのは言うまでもあるまい。
茜と翼の戦いはこれからも続く...