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〈ミッション0日目〉悪魔との出会い

主人公が呪いをかけられるお話です。

-side 南条翼-


 俺が呪いをかけられたのは屋上で片桐の右ストレートを喰らってK.Oされる前の日のことだった。その日の放課後、俺はいつも通り10階建てマンションの最上階に帰るべく、ロビーでエレベーターを待っていた。


「お、やっとエレベーターが1階まで降り始めたな。まったく。このマンション部屋数多いんだからエレベーターもう1つくらい追加していいだろ。なんでエレベーター1つしか無いんだよ」


 そう毒づいてみたものの、この時の俺はもうすぐウチに帰れるという事実に少しだけ歓喜していた。


 しかし次の瞬間。そんな俺のささやかな歓喜は打ち消されることになる。


「ねえ南条君、もしも君の願いが1つだけ叶うとしたら君は何を望む?」


 突然背後から男の声が聞こえてきたので振り向いてみるとそこには全身黒づくめの長身男が居た。フードを深くかぶっており男の顔はよく見えない。見るからに怪しい人物だ。


「あのー、どちら様ですか? このマンションの住人ではありませんよね?」


 こんな怪しい男今までこのマンションで見たことない。つーかさっきコイツ俺の名前呼んだよな? なんで俺の名前知ってるんだ? 


「とりあえず今は『メフィスト』と名乗っておこうかな。それで南条君、もし願いが1つだけ叶うとしたら君は何を望む?」


 コイツさっきも同じこと言ってたよな。いきなりなんなんだ? 新手の宗教勧誘か?


「おっしゃっている意味が良く分からないので自分はここで失礼します」


 こういう怪しいヤツは無視するのが1番だ。ちょうど今エレベーターも1階に着いたみたいだし早速乗り込もう。


 そう思ってエレベーターへと足を向けた時だった。


「南条君、私は君が望むことをなんでも叶えることが出来るんだ。もちろん代金は不要だよ。だって私は君を騙すつもりなんて無いからね。どうだい? 話だけでも聞いていかないかい?」


 男の声を聞いた俺は足を止めてしまった。


 ...え? コイツ今『なんでも叶う』って言ったか? なんでも、とはつまり言葉そのままの意味で捉えていいのか? もしかして美女とあんなことやこんなことができるようになったりするのか?


 ...よし、非現実的だしウマすぎる話ではあるが少しくらいならこの男の話を聞いてもいいだろう。金はいらないらしいし。


「話を聞かせてもらおうか」


「...はは、南条君って欲望に忠実なんだね」


 やかましいわ。


「アンタの俺に対する印象とかどうでもいいから早く話を始めてくれ」


「君はせっかちだなぁ。分かったよ。話を始めるよ。まあ話といってもそんなに難しい内容じゃないんだけどね。ただ1つ南条君にやってもらいたいことがあるだけなんだ」


「俺にやってもらいたいこと...?」


「はは、別に難しい事をして欲しいわけじゃないからそんなに身構えなくても大丈夫だよ。やってもらいたいことっていうのは単純なことでね。30秒くらい南条君に目を閉じていてほしいだけなんだ」


「...俺が目を閉じるとどうなるんだ?」


「君の願いが叶うよ」

 

「は? なんだそれ。そんな胡散臭い話が信用できるわけないだろ」


「確かに胡散臭いかもね。でもよく考えてみてよ。目を閉じるだけでいいんだよ? たったそれだけで君の願いが1つ叶うかもしれないんだよ? それに私の話が嘘だったところで君が困ることはないだろう?」


「...まあ確かに」


 確かにコイツの言う通り俺にリスクは一切無い。まあ目を閉じている間にコイツから襲われる可能性も無くはないがコイツにそこまでのことをする動機もない。それに見たところ武器になるものを持っている様子も無いしな。仮に襲われたとしても柔道黒帯の俺なら返り討ちにできるだろう。


 よし、話の信憑性は低いままだがこの男の話に乗るとしよう。ノーリスクで美女とエロいことができる可能性があるなら、じゃなくて願いが叶う可能性があるならこの男の話に乗らない手は無い。


「なあメフィスト、目を閉じればいいのか?」


「お、やっと私の話に乗る気になってくれたんだね」


「お前の話の内容は到底信用できないが俺にリスクは無いからな」


「なるほどね。でも私の話を信用できないならエレベーターに乗って今すぐ帰ればいいんじゃない? どうして信用してないヤツの話に乗ったりするんだい?」


「ま、まあそれはそうだが」


 どうして俺がお前の話に乗るのか? そんなのどうしても美女とエロいことがしたいからに決まってんだろうがハゲ。


「まあ話に乗ってくれるなら理由なんてどうでもいいよ。じゃあ南条君、早速目を閉じてもらえる?」


「お、おう」


 男の指示に従い目を閉じる。俺が目を閉じても男が怪しい動きを取る様子は無い。やはり俺を襲う可能性は無いと見ていいだろう。


「よし、じゃあ次は目を閉じたまま南条君が叶えたい願いの内容を心の中で唱えてくれ」


「分かった」


 美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい美女とエロいことがしたい


「よし、じゃあ最後に私の指を君の額に触れさせてくれ」


「一応忠告しとくけど額に触れる以外の怪しい行動を取ったら即お前に関節技決めるからな」


「はは、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。本当に額に触れるだけだから」


「よし、じゃあ始めてくれ」


「分かった。じゃあ行くよー! それっ!」


 男はそう言うと宣言通り指先を俺の額に触れさせ

た。


 しかし額に触れられた瞬間、俺の身に予想だにしない事態が起きた。


「...うっ!」

 

 男の指が額に触れたのと同時に突然激しい頭痛と目眩が俺を襲った。並行感覚が完全に狂ってマトモに立つことすら困難になる。


「おいメフィスト! お前さっき額に触れるだけって言ってただろ! 一体俺に何をしたんだよ!!」


「え? 額に触れただけだよ? まあそれと同時に1つ呪いをかけさせてもらったんだけど」


「は...? 呪い...?」


「まあ色々疑問はあるだろうけどさ、とりあえず詳しい話は君の平衡感覚が戻ってからってことにしないかい? そんな状態じゃマトモに会話できないでしょ?」


「チクショウ...悔しいけどお前の言う通りにするのが1番良さそうだな...」



-----------------------




「平衡感覚は戻ったかい?」


「ああ、戻ったぞ」


「あれ? 意外と冷静だね。私はてっきり並行感覚が戻った南条君が怒りに任せて私に関節技を決めてくると思ってたんだけど」


「そうしたいのは山々だがお前から呪いとやらについて詳しく聞かないといけないからな」


 多分俺は騙されたのだろう。ぶっちゃけかなり腹が立っている。でも今は状況把握が最優先だ。正直展開が予想外過ぎて頭が混乱している。


「詳しい話をするのはいいけどさ、ここで話すのもなんだし近くのカフェに移動しないかい?」

 

「そうだな」


 既に日は沈んでおり、もうすぐ帰宅ラッシュの時間帯に入る。ここで話していると人目につく可能性が高いからな。カフェに移動するのは賛成だ。


「じゃあ早速移動しようか」


「ああ」


 そして俺とメフィストは俺が住むマンションの前にあるカフェに向かった。



-----------------------



「お前は俺を騙したのか?」


「わーお、いきなり核心をついてくるね」


「いいからさっさと答えろ」


 カフェに入り、2人掛けのテーブル席に着いた俺は早速メフィストに尋問を始めていた。


「別に君を騙したわけじゃないよ。君の願いを叶えるという言葉に嘘偽りは無いさ」


「は? じゃあお前は俺の願いはもう叶っているとでも言うのか?」


「いや、まだ叶ってないよ。残念ながら君の願いはとある条件を満たさないと叶わない」


「条件...? まさかとは思うがさっきお前が言ってた『呪い』とやらがその条件に絡んだりしないよな...?」


「はは、南条君は勘が鋭いな。そう、お察しの通り『呪いを解く』というのが君の願いを叶えるために必要な条件なのさ」


「はっ、バカバカしい。『呪い』なんて現実にあるわけないだろ。そんな話を俺が信じるとでも?」


「じゃあ私が君の額に触れた時に君が感じていた頭痛や目眩についてはどう説明するんだい?」


「うっ、そ、それは...」


 コイツの話は非現実的で信じがたい。しかしその一方で実際に俺の身に『額に触れられただけで激しい頭痛と目眩が起きる』という非現実な出来事が起きたのもまた事実だ。


 そう、つまり今の俺にはコイツの話が嘘だと言える根拠が何一つ無い。それどころかコイツの話が現実味を帯びてきているのである。


「俺に目眩が起きたのはお前が呪いをかけたせいだ、とでも言いたいのか?」


「おー、すごいね南条君。大正解だよ。君のいう通り目眩が起きたのは私が呪いをかけたせいなんだ。多分君の身体が呪いの負荷に耐えきれなかったから目眩が起きたんだと思うよ」


「なるほど。じゃあ仮にその話が本当だったとして、だ。どうすればその呪いは解けるんだ?」


「君の幼馴染の片桐茜ちゃんのパンツを明後日から卒業するまでの間毎日見続ければ呪いは解けるよ」


 ......は? 今コイツ何て言った? 


「おいメフィスト、こんな状況の中で冗談を言うのはやめてくれ」


「いや、冗談なんか言ってないよ。私はいつだって本気さ」


「はぁ!? なんで呪いの解除のために毎日片桐のパンツを見なきゃいけねぇんだよ!!」


「うーん、ごめんね。なんで、って言われても私は何も答えることができないんだ。実は呪いの解除方法って毎回ランダムで決まるんだよね。まあ運が悪かったと思うしかないんじゃない?」


「毎回ランダムで決まるならなんでお前は呪いの解除方法を知ってるんだよ...」


「なんかよく分かんないけど呪いをかけた瞬間に解除方法が頭にビビッと入ってくるんだよー。アレは何回経験しても不思議な感覚だなぁ」


「その口ぶりから察するにお前って俺以外の人間にも呪いをかけたことがあるんだな..」


「まあ私は悪魔だからねぇ」


 は? 何言ってんのお前? 悪魔...?


「頭が良い南条君なら私の名前を聞いただけで私の正体を察してくれると思ったんだけどなぁ。まあ『悪魔なんて現実にいるわけない』って考えるのが普通だろうから気づかないのも仕方ないか」


「お前の名前? 本名かどうかは知らんがメフィストだろ? メフィスト...メフィスト...メフィスト...あ、分かった! メフィストフェレスか! ドイツの悪魔の!」


「お、ご名答だよ南条君。君は物知りだねぇ」


 メフィストフェレス。16世紀のドイツ文学作品に登場する悪魔の名だ。しかし現実に存在するなんて伝承は一切無い。つーか悪魔が現実に存在してたまるかよ。


 まあ今はコイツの正体なんてどうでもいい。今重要なのは俺にかけられた呪いの方だ。


「おいメフィスト、片桐のパンツを毎日見るとかどう考えても無理だろ。もう俺一生呪いかけられたままでいいんだけど」

 

 コイツは俺に呪いをかけたと言ったが別に今のところ俺の身体に異変が起きる様子は無い。ぶっちゃけ片桐のパンツを毎日見続けるくらいなら呪いをかけられたままでいい。


「え? 何言ってるの南条君? 呪い解かないと君死んじゃうよ?」


「...へ? あ、あのーメフィストさん? いくらなんでも冗談きついですよ?」


「いや、冗談じゃないって。本当に死ぬから。まあ信じるか信じないかは君次第だけど」


「お前マジでふざけんなよ! 命が危険に晒されるなんて聞いてないぞ!!」


「え、自業自得じゃない? 確かに私が君に詳しく説明してなかった部分があったのは認めるさ。でも性欲に負けて怪しい男の話に乗った南条君の方にも否があるんじゃない?」


「...おいお前。それを言うのは卑怯だぞ」


 いや、怪しいとは思ってたけどまさか命に関わる事になるとは思わないじゃん!? つーか呪いかけられるとか普通予想できなくね!?


「まあ呪いの解除に成功すれば君の願いは叶うんだ。明後日から頑張っていこうじゃないか」


「おい、言っとくけど俺はまだ呪いという概念が存在するのを完全に信じたわけじゃないからな」


「はは、まだ呪いが精神に馴染んでないからそんな事が言えるのさ。明日になったら君は嫌でも自分に呪いがかかっていることを実感することになる」


 あ、やばい。俺マジで呪いかけられてるっぽい。


「まあ私は悪魔だけど鬼ではない。君の呪い解除に役立つお助けスキルを1つだけ授けてあげよう」


「は? お助けスキル? なんだそれ?」


「まあ端的に言うと君が片桐さんのパンツを見ようとする時に助けになる能力のことだね」

 

「そんな能力があるなら先に言ってくれよ。今すぐ俺に授けてくれ」


 よし! まだ絶望的な状況であることに変わりはないけど少しだけ光が差してきたぞ! もしかしたらお助けスキルってのを使えば簡単に片桐のパンツを見ることができるかもしれないからな!


「南条君、いきなりで申し訳ないけど君のL◯NEの友達枠に私を追加してくれないか? ちょっとウェブサイトのURLを送りたくてね。能力を授けるためには君にとあるウェブサイトにアクセスしてもらわないといけないんだ」


「え? ああ、まあ別にいいけど」


 てか悪魔ってL◯NEするのかよ。


「じゃあ私がQRコードを出すから南条君が読み取ってくれないか」


 メフィストはそう言うと長ズボンのポケットの中から携帯を取り出し、QRコードが表示された画面をこちらに見せてきた。


 そして俺も制服のポケットから携帯を取り出してメフィストのQRコードを読み取った。


「一応聞いとくけどお前のL◯NEでの名前って『メッフィ〜☆』で合ってるか?」


「うん、合ってるよ。早速追加してくれ」


 お前悪魔のくせにギャルみたいな名前つけてんじゃねえよ。


「よし、追加完了だね。じゃあ早速URLを送るからトーク欄からサイトにアクセスしてくれ」


「おう」


 すると『メッフィ〜☆』からURLが送られてきた。よし、アクセスしてみるか。


「は? なんだこのサイト? お助けスキル抽選所...?」


 アクセスしてみると画面上部に『お助けスキル抽選所』と書かれたサイトが開いた。よく見ると画面中央部には『抽選!』と書かれた大きなボタンがある。


 は? マジでなんなんだこのサイト?


「そのサイトは名前の通り君に授けるお助けスキルを抽選で決めるサイトだよ。ちなみに排出率はSRスキルが1%、Rスキルが3%、そしてノーマルスキルが96%だよ。もちろんレア度が高いスキルほど強力になるね」


 【悲報】我のスキル、ガチャ形式で決まる


「おいメフィスト、こういうのって普通は不思議な魔法的な力で俺に能力を授けるんじゃないのか? なんでガチャ形式なんだよ!」


「ははは、南条君はアニメの見過ぎだよ。魔法なんてものがこの世にあるわけないじゃないか」


 呪いはあるのに魔法は無いのかよ!


「さあ南条君! 早く抽選ボタンを押したまえ! 日本人は皆ガチャが好きなんだろう? ワクワクしてきただろう?」


「ワクワクなんてするわけないだろ! 自分の命運がガチャで決まるとか嫌過ぎるわ!」


「まあいずれにせよ早く抽選ボタンを押すのをオススメするよ。そのサイトの有効期限あと1分だから」


「そういうことは前もって言え! 全然時間無いじゃねえか!」


 クソ、時間が無い。ガチャ形式とはいえお助けスキルは必要だ。さっさとボタンを押さないと。


「よし、抽選だ! 来いやレアスキル!!」


 そして覚悟を決めた俺は抽選ボタンを押した。




「ねえねえ南条君! 結果はどうだった?」


「えーっと、なんだこのスキル? カミカゼ...?」


 今俺の携帯画面には抽選結果、もといガチャ結果が表示されている。風のイラスト、そしてその上に『カミカゼ』というスキル名が書いてあるが、レア度は表示されていない。


「あー、カミカゼか。残念、ノーマルスキルだね。それは南条君が『カミカゼ!』って叫べば発動するスキルだよ。ちなみにスキルの効果は『スキル発動時に片桐茜の足元で突然風が吹く』だね」


「え? それ本当にノーマルスキルか? めっちゃ強くね? パンツ見放題じゃん」


「いや、まあスキル自体は強いんだけどさ、カミカゼって発動成功率が5%なんだよね。しかも1日1回しか使えないんだよ。まあぶっちゃけクソスキルだね」


「ふむふむ、クソスキルなのか。なるほどなるほど...」

   





【悲報】俺氏、ガチャで爆死して人生終了のお知らせ

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