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〈ミッション3日目②〉ログインボーナス

続きでし。

-side 南条翼-


 --柳は軽々しく言った。『パンツは水色だった』と。


 --俺は思った。『いや、俺はそれを確認するためにグーパン2発食らったんだけど』と。


 ......いや、マジで柳のやつどんな手品使いやがったんだよ。朝登校した瞬間ミッションクリアとかさすがに予想してなかったわ。え、なんなの? これってもしかしてログインボーナスなの? ついに学校にもログインボーナスが導入されちゃったの? 


 はは、まあ俺の高校生活は残り1ヶ月足らずでサービス終了なんですけどね。なんなら呪いを解除できずに人生がサービス終了する可能性もあるな。はは、マジで笑えねぇ。




「なぁ、お前どうやって片桐のパンツ見たの?」


 あまりにもあっさりミッションをクリアされたことに驚きを隠せない俺は小声で柳に問いかける。


「うーん...それは企業秘密かな」


「パンツ見る方法を企業秘密って...一体柳さんはどんな企業に勤めてるんですかね...」


【柳パンツカラー解析社(株)】



「...おい柳。今お前のせいで死ぬほどどうでもいいこと思いついたじゃねぇか。どうしてくれるんだよ」


「いや、さすがに翼くんの思考にまでは責任とれないんだけど...ていうかこんな話はどうでもいいの。早く本題に入りましょう」


「本題? パンツの色報告が本題じゃねぇの?」


「もう! 翼くん忘れたの? この3日間のうちにできるだけ茜ちゃんと仲良くなるって話だったでしょ?」


 ......そういえばそうでしたね。


「とりあえず私が昼休みに茜ちゃんを屋上に呼び出しとくから。翼くんも来てね」


「え? お前が片桐を誘ってくれるの?」


「だって翼くんが誘っても無視されるかもしれないじゃん」


 ......チクショウ。ぐうの音も出ねぇ。


「じゃあ今日は屋上で3人でランチね。茜ちゃんと翼くんを2人きりにしたらロクなことが無さそうだから」


 やべぇ。さっきからずっとボロクソ言われてるのに全然言い返せねぇ。


「......了解した」


「よろしい。じゃあ私はそろそろ席に戻るから。また昼休みね」


「おう」


 すると柳は小走りで自分の席に戻って行った。


 ...そしてそんな彼女の背中を見送りながら俺は思った。




 --やべぇ。柳さんってめっちゃ頼りになるな。



-side 片桐茜-


 最近南条と愛佳の仲が良すぎる気がする。


 今までは勉強を教わっているだけっぽかったけど最近は明らかにそれだけにとどまっていないように見える。今朝だって2人で小声で何かヒソヒソ話してるし。


 ......べ、別に2人の仲に嫉妬している訳じゃないから。あんな変態と仲良くしている親友のことが心配なだけよ。2人の話に混ぜて欲しいなんて全然思ってないんだから。最近愛佳が私のそばを離れるようになって寂しくなったりなんてしてないんだから。


 --それに私は南条のことなんて全然気にしてないんだから。


----------------------



「茜ちゃん、今日は屋上でランチにしない?」


 4限終了直後。隣の席の愛佳から突然妙な提案をされた。


「愛佳? 急にどうしたの? 屋上でランチ? 今日結構寒いのに?」


「た、たまにはいいじゃん! ほら! なんか青春っぽくない? 卒業を控えた3年生が屋上で一緒にお弁当を食べるのって!」


「ま、まあ言いたいことも分からなくはないけど...」


「あー、あと今日は翼くんも来るよ」


「え!? な、なんで南条も来るのよ!!」


「え、えーっと...友達が居なくて寂しいんだって!」


「えぇ...アイツはそんなことを言うようなヤツじゃないでしょ...」


 アイツがそんなことを言うわけが無い。むしろアイツは他人を見下して自分から周囲と距離を置いてるようなヤツよ。


「うーん、多分翼くんはツンデレなんじゃないかなぁ。本当は人に優しくしたいのにそれができない不器用クンなんだよ、きっと」


「ふ、ふーん...あ、愛佳は南条のことをフォローしてあげるんだね...」


「あ! ち、違うよ茜ちゃん! つ、翼くんには誰も味方が居なくて可哀想だから仕方なくフォローしてあげただけだよ! た、確かに翼くんは悪いところの方が多いよね! 変態だしナルシストだし上から目線だし変態だし...」


「あ、愛佳ストップ! 後ろ見て! 後ろ!!」


 愛佳の背後から『とある人物』が近づいてきたのが見えた私は慌てて彼女の言葉を止めさせようとする。


「ん? 後ろ...?」


 --けれどそれはもう手遅れだったようだ。





「はっはっは、おい柳。3年間勉強を教えてやった恩人に対して随分ボロクソ言ってくれるじゃねぇか。つーかお前今変態って2回言っただろ」


「あ、あはは...おはよう翼くん...」


「なーにが『おはよう』だ。もう昼だぞ。このアホ」


「アホって言うなし! この変態!!」


「あ! お前それ3回目だからな! 『南条ほとけの顔も3度まで』だぞ! もう許さん!!」


「いや、何言ってんの。翼くんって仏から1番遠い存在じゃん。この煩悩の塊!」


「......あ、俺やっぱお前には勝てないわ」


 なんか突然南条が現れた。



「な、南条...なんでアンタがここに...」


「あ、片桐師匠...お、お疲れ様です...」


「いや何よ、その喋り方」


「いやー、俺みたいな庶民が片桐様と昼食をご一緒するなんておこがましいことだと思いまして。せめて上下関係はハッキリさせた方が良いかと」


 め、珍しく南条が下手に出てる...? でもなんか怪しいな...


「とりあえずその喋り方やめて。気持ち悪いから」


「おう、分かったわ」


 いや、すぐ喋り方戻しちゃうの!? じゃあさっきまでの態度は一体何だったの!?


「もー、翼くんは素直じゃないなー。普通に茜ちゃんと仲良くなりたいって言えばいいのに」


「バッカお前!! それを直接言うんじゃねぇよ!!」


 え...? 仲良くなりたい...? 南条が!? 私と!?


「な、南条...それ本当...?」


「......違うと言ったら嘘になる」


「! で、でも今更そんなこと言われても...」


 私はいつもと少し様子が違う南条を見て思わず動揺してしまった。


 ...ていうかなんで南条相手にちょっと緊張してんのよ私! 小さい頃から知ってる仲でしょ!!   




「...まあ片桐が嫌って言うなら俺は別に1人でm」


「ほ、ほら2人とも! 早く屋上行こ!! ご飯食べる時間無くなるよ!!」


「うおっ! ちょ、柳! いきなり腕引っ張んなって!!」


「ちょっと愛佳! なんで私の腕も引っ張るのよ!!」


 なぜか突然私と南条の腕を引いて教室を出ようとする愛佳。抵抗しようにも、愛佳の握力が思ったよりも強くて離れられない。


「うお! どうなってんだよ柳! お前握力強すぎだろ! なんなんだよお前! バケモンか!?」


「コラ! 女の子にバケモンとか言うな!!」


 ......ていうか男子の南条すらも拘束できてしまう握力だった。



「ふふふーん♪ 3人でランチ〜♪」





 こうして私と南条はなぜか妙に上機嫌な愛佳によって屋上へと強制連行されることとなった。

次回、屋上でランチタイム

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