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5 マオと双剣とスキル


「それにしてもお前はほんと頑固だよなぁ」


訓練の休憩中に汗を拭っていると僕より少し体格のいい親しみやすそうな青年が話しかけてきた。

彼はケント・グランツ。 スラク村の道場で僕によく話しかけてくれる先輩だ。

この道場の師範の息子がグランツさんである。


「グランツさん、お疲れ様です。」


「おいおい、ここでは敬語は無しっていつもいってるじゃないか。」


「でも、僕はグランツさんを尊敬してますから。」


グランツさんは誰にでも慕われるこの村の兄貴的存在だ。

僕も彼のように強くてみんなから慕われるような男にいつかなりたいと目標にしている人物だ。


「やれやれ、まいったな・・・じゃあ、なくてだな。」


照れている仕草をしてると思ったらはっと思い出したかのように言ってくる。


「お前、やっぱりその戦闘スタイルはあんまりお勧めしないぜ。」


僕の持つ2つの竹刀を指さしながらグランツさんがあきれたようにため息をつく。


「すいません、僕にはこの戦い方で強くなりたいんです。」


基本剣士というのは1つのロングソードに重心を両手で安定させて持ち、体重をかけることによって相手を切ることを生業としている。

しかし、僕の両手剣は見た目こそ2つあるので強く見えるが、これでは力が入らず、威力も入らない

剣術の中でも悪手だ。堅い木を両手なら1発で切れるものが両手剣では難しい可能性がある。

しかし、僕はこれだけは曲げられないのだった。


「まぁ、お前がそれでいいっていうのなら俺は止めないけどよ。」



「すいません・・・。」


せっかく気を使ってくれたのだが、応えることが出来ず僕は申し訳ない気持ちになってしまった。


「いや、謝るようなことじゃないって・・・でも、まぁお前もスキルが使えればその戦い方でもきっと勇者として認められると思うのになぁ」


「・・・。」


ーースキル


スキルとは、僕たち力のない人間が魔物に対抗できる唯一の手段である。

15歳になった子供達はスキル獲得の儀式を教会で行うことによって1つだけ自分に合うスキルを得ることができるのだ。

それにより、炎を出し自在に操ることが出来るようになったり、致命傷を回復することが出来るようになったり、自分の体を別のものに変えたりもできる。

なんでも望む力を1つ使うことのできるもの・・・まさに奇跡のような力、それがスキルである。


「なにいってるんですかケントさん、その()()()()()にスキルなんて使えるわけないじゃないですか。」


その時、ケラケラと笑いながら1人の男と複数の取り巻きが近づいてきた。

その鋭く三日月型に笑う男はイーブル。

この道場で一番強い男だ。


「おい、イーブルやめないか!」


グランツさんが慌てて止めに入る。


「だって、そうでしょう勇者の息子の癖にスキルが使えないんですから。」


そうなのだ15歳の儀式のとき僕には一切スキルを得ることが出来なかったのだ。

そのことはこの村に広まりいつしか僕は能力を使えない勇者の息子

()()()()()と呼ばれるようになっていた。

どんなに努力をしてもスキル持ちの彼には勝つことが出来なかった。

だからどんなことを言われても受け入れるしかなかった。


「し、しかしイーブルお前のスキルも邪道なものではないのか」


グランツさんが僕の代わりにむっとしたように言い返してくれる。


「勝てばいいんですよ、どんな力でも。」


イーブルの口角がさらにあがる。


イーブルのスキル

【魔物召喚ーサモンイービルー】

自身を守る魔物を召喚することができる。

その能力と個体数は自身のレベルによって決まる。


彼が儀式の時に望んだこと。

それは魔物には魔物、自身が戦わずとも魔物退治は魔物にやらせる。

そんなスキルだった。


実際、彼のいうように勝つことを常とした戦闘

彼との戦闘訓練には3匹の1つ目コウモリが付いてくる。

1対4を常に強いられ、その上彼を攻撃しようとするとコウモリの目から暗黒魔法が放たれ近づくこともできない。

騎士道というものからはかけ離れたものだが、実力があるのも違いないのだ。


「お、おまえ・・・っ」


グランツさんがこぶしを上げる。


「グランツさん、大丈夫です・・・本当のことですから。」


僕はグランツさんを止める、日常的に言われて僕は悔しい気持ちにもならなかった。


「ふんっ・・・臆病者が・・・。」


イーブルは鼻で笑うと僕たちに背を向けて去っていくのだった。




「はぁ・・はぁ・・・。」


日差しが一番強くなる中、僕は必死に体を動かす。

やはり、イーブルの言葉に練習に力が入る。

どんなに頑張ってもスキル持ちのみんなにはどうしても勝てない。

奥歯をぎゅっと噛みしめる。

ー悔しい。

やっぱり僕は悔しいのかな。


「おーい、マオ昼にしようぜー!」


練習相手になってくれていたグランツさんが休憩を促す。


「はいっ!」


グランツさんの言葉に僕は頭を冷やした。

お昼になればユウのおいしいお昼が待っている。

それが僕の午前中の活力だった。


ーーその時、かすかに小指がうずくのを感じた。

これは胸騒ぎというのだろうか。

かすかにうずいただけだが、なぜか不安になるというのだろうか。

僕は自宅のある方角を見た。


遠くから必死に走ってくる2つの影。

それは、うちの隣に住む老夫婦だった。


「はぁ・・・はぁ・・・あぁ、やっぱり!!」


この道場までは自宅から結構な距離があるのに、この老夫婦たちは年齢も年齢なのに肩で息をするほど急いでこちらに向かってくる。

それほど急を要することなのだと僕には一目瞭然だった。


「どうしたんですか!?」


僕は落ち着かせるように肩を擦る。

額に大量の汗をかいて辛そうな姿に心が痛む。


「はぁ・・・はぁ・・・ユウちゃんが・・・はぁ・・・隣の町の貴族に攫われてしまったのよ!!」


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