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二人の季節―夏―  作者: 銀輪。
7/10

気付き

後半、どんどん文が薄くなっていく気がする……

 気が付いた。

 皐月もずいぶん女らしくなっていた。

 大学生になって、それなりのお洒落もするようになったようだ。

 服装も今までの大雑把な雰囲気を残しつつ、それでもおしゃれに見えるように気を使っているようだった。よく見れば、うっすら化粧のようなものも見える。

「お、気付いた」

 俺が気付いたことに、気付かれた。

「ああ。なんか変わったな。お前も」

 最初の感想と変わってくるが、気づかなかったのだ。

「ふふふっ。拓哉もね」

「ん? 俺も?」

 あまり自分では気にしていなかった。

「そうだよ。体格とかもだけど、服装もちょっと変わった」

 言われてみると、そうなのかもしれない。自分では変わっていないつもりだったが、なんだかんだで影響は受けるものだ。

「また一段と男らしくなっちゃって」

 皐月がボソッと言った。

「……。お前だってずいぶんと女らしくなったな」

「えっ? そうかな」

「服装とか化粧とかもだけど、胸もな」

 高校時代はそんなになかったと思うが、服装のせいだろうか?

「あ、そんなとこ見てるんだ。拓哉のくせにエロっ」

「うるさいな」

 皐月はいつも通りの反応を返してくるが、その表情は少し赤くなり照れている。

 言った自分もちょっと恥ずかしい。

 そういえば、皐月とこんな話をしたのは初めてかもしれない。

 互いに会わない時間が、気がつかなかったことに気づかせてくれたのかもしれない。

「そういえば…」

 皐月がごまかすように話題を変えた。

「大学生になったんだし、彼女の一人や二人はできたの?」

「いやー、まったくだな。やっぱりサークルとか入ってないと、出会い自体がないもんなー」

 多くの同年代の男女が集まる大学。しかしながら、実際に人と人との縁はあまりあるとは言えない。授業に出ていても、隣近所に座っているのは見ず知らずの他人だ。話しかける理由もない。田舎の狭い世間で育ったおれには、周囲に話しかけるのには少し勇気がいった。

 同じ学部学科の奴ならいくらかは話はするが、それだけだ。

 中には次々声をかけて、自らそういう出会いを作ってるやつもいるが、自分はそんなことできないし、しようとも思わない。

「お前こそどうなんだよ」

 俺もそうだが、皐月も昔から色恋の話を聞かない。

「あたしもだめだなぁ」

 あははと頭をかきながら答える皐月。

「なんだよ。お前性格はともかく、見た目はましなほうなんだから、黙ってれば少しは釣れるんじゃねえの」

 皐月はスタイルも悪くないし、顔も整っているほうだ。

 性格はちょっとザツだが、そういえばなんでそういう話を聞いたことが無いんだろう。

「そうかな」

 俺の言い分にちょっと照れたようだ。今度は頬をかきながら赤くなっている。

 ちょっとかわいいなと、思ってしまった。

「ま、性格がアレだから。釣れてもすぐに逃げられるんだろうけど」

 適当にごまかしておくことにする。

「あ、なんだよそれー。あたしだってその気になれば…」

 すぐにいつもの皐月に戻った。

「その気になればなんだよ?」

 その反応にちょっと落ち着きつつこちらもからかいを続ける。

「え、いや、なんでもない」

 困ったような反応。

 なんだかやっぱりちょっと違う。

「やっぱり無理なんじゃないか」

 いつもの反応が欲しくて、追い討ちをかけてみた。

「そだね。無理無理」

 しかし皐月は、怒るでもなく納得してしまった。

「なんだよ。納得すんのかよ」

 なんとなく、気になった。

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