展望台
仕事で更新遅れました。
日々見て頂いている人はいないと思いますが……
おれと皐月は、中学から高校を卒業するまで、ほぼ毎晩一緒にランニングをしていた。家からスタートし、町内を適当に走って展望台を目指した。コースを決めている訳でもなく、その日の気分次第で距離を延ばしたり短くしたりしていた。
展望台はちょっと小高い山の上にあるため、夏場はいい風が吹く。冬は寒いが、それでもそこまで走っていくので、身体は十分に温まっている。なので気持ちがいいことに変わりはなかった。
毎夜あそこでいろんな話をしていたからか、おれたちにとっては馴染みの深い大切な場所になっている。
毎晩走って登っていた道を、今日は原付で登っていく。皐月の原付をおれが運転し、後ろに皐月を乗せていた。田舎で車も少なく、そう咎められることも無い。
展望台の足元まで原付で乗り入れ、エンジンを切った。展望台の中に入り、螺旋状の階段を上っていく。
展望フロアに出ると、初夏のさわやかな空気が風に乗って流れていた。
「うおぉ、やっぱ気持ちいいなぁ」
「ふぅ、だねぇ」
二人して伸びをする。
町外れにある上に、人の少ないこの町だ。この公園に来る人はほとんどいない。
この展望台もおれたちだけの秘密基地みたいになっていた。
「おりゃ」
おれより一足早く伸びを終えた皐月がまた攻撃してきた。
昔からおれたちのコミュニケーションみたいなものだ。昔は俺も反撃をしていたのだけど、小学校、中学校と男女の差が出てくるにしたがって、俺からの攻撃は減っていった。
高校になってからは、ほとんど受けるだけになっていた。時々反撃に頭を叩くことはあるけれど。
体格差のはっきり出た今となっては、皐月の攻撃は避けずに受けてやることが多い。
が、今回は伸びをしている完全に不意を突かれた。
「ぐふっ」
見事に食らってしまった。
「ふっふっふ。甘いな拓哉。隙だらけだぜ」
勝ち誇る皐月。
「あはは。そうだな、確かに間があいて鈍ってたかもな」
その時、ふと思った。小さいころは互角に殴り合っていたのに、今ではほとんど痛くない。皐月が本気で殴っているわけではないのも承知しているが、それでも手加減をする皐月ではない。
大学生になった俺たちは、男女の差で大きく違ってしまった。気づけば目線もかなり低くなっている。
「拓哉、また背伸びたんじゃない?」
ふと、皐月がまじめな顔になった。
もしかすると、皐月も俺と同じようなことを考えていたのかもしれない。
「かもな。最近測ってないけど」
そういえば、大学に入学するとき持っていた服はもう着れなくなっていた。
「あーあ。なんだかなぁ」
「なんだよ?」
「だってさぁ、小学校のころは互角だったのに。中学高校のときも、もっと痛そうにしてたし」
やっぱり皐月も考えていたのだ。
いままで近すぎて、こういう変化を気にしたことがなかった。
「だなぁ」
改めて皐月を見た。
「あ……」
なかなか進まない。
ショートストーリーのつもりだったのに……