再会
固い話で盛り上がりはしないですね。
でもいい話には出来るように頑張ります。
白壁の町並や古い歌舞伎劇場があり、田舎ながらも観光資源に恵まれている内子。今でこそ高速道路のインターチェンジが出来て、ほとんどの観光客がバスで来るようになってしまったが、内子駅は割と立派に造られている。小さな町であるにもかかわらず特急は止まってくれるし、昔は多くの観光客に利用されていたのだろう。
ホームのある二階から、改札のある一階へ降り、無人のそこを通過する。狭い券売所を抜けると、ついに内子の地に足を付けることになる。
駅前には何もなく、SLのレプリカが一台置いてあるだけだ。他には、暇そうにラジオを聞いている運転手が乗ったタクシーが2、3台いるだけだ。
「あっ」
変わらない風景に目を向けていると、ちょっと離れたところから声が上がった。
見ると、ショートヘアの女が立っていた。しっかり運動をしてそうな、スラリとした体形。ちょっと勝気な目をした元気そうな娘だ。
その顔は、久しぶりに見ても見間違えようがなかった。
「久しぶり。皐月」
片手を上げて声をかける。
彼女はすぐには答えず、駆け寄ってきた。
「せいっ」
そのままの勢いで拳を突き出してきた。
「ぅぐっ」
突然の一撃をみぞおちに食らい、驚きと呻きが混じった変な声を出してしまった。
「なーにカッコつけてんだよっ」
あははと笑いながら、似合わないぞと言ってくる。
皐月は相変わらずだった。
昔からこんな感じで、女のくせにコミュニケーションに拳を使ってくる。子供のころはそれでもいいのかもしれないが、もう大学生にもなってそれはどうなのだろうかと思う。
その一方で、昔から変わらない皐月に、そしてこの雰囲気に、居心地の良さを感じる俺がいる。
「久しぶりっ。拓哉」
皐月も片手を上げて言ってくる。でもそれはおれがやったのとは少し違っていて、
「おう、久しぶり。皐月」
おれも応えながら手を上げ、パシンッとハイタッチを交わす。
昔と同じ二人の挨拶。
そして二人で、にししと笑いあった。
なかなか進まない……
ここに来てやっとの再会です。