表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人の季節―夏―  作者: 銀輪。
10/10

受容

完結回になります。

「俺は…、よくわからない」

 そう答えてしまった。そう答えることしかできなかったから。

 答えるとき、目をあわせられなかった。

「あはは。やっぱりか」

 そんなおれを見て皐月は笑った。

 その笑い声を聞いたとき、周囲の音が還ってきた。

 蝉の鳴き声、木々のざわめき。

「え?」

 俺は戸惑った。

 皐月は微笑みながらこちらを見ている。

 その視線を少しはずし、

「ホントはね、あたしもよくわからないんだ」

 そう言った。

「好きとか、付き合いたいとか。ずっと一緒だったからかな?」

 少し悲しそうな表情で、そう言う。

「でもね、そうだといいなと思うんだ」

 外れた視線が戻ってきた。

 その目がまっすぐに俺を捕らえる。

「あたしは、あたしが拓哉のこと好きだといいなと思うんだ」

 柔らかな風が俺たちを包む。

「だからたぶん、拓哉もおんなじだよ。同じだと良いなと思う」

「同じ?」

 また柔らかな香りが漂う。

「そう。あたしたち近すぎてわかんないんだ」

 自然と、心が落ち着いた。

「でも、自惚れかも知れないけど、拓哉もあたしのこと、大切に思ってくれてるでしょ」

 皐月の髪が、サラサラと揺れている。

「それは、あたしが拓哉に対して思ってるのと似てるんだ。だからその…」

 最後のほうが聞こえづらくなった。

 また視線が揺れている。

 俺は思った。

 今目の前にいる皐月を見て。

 俺は気づいた。

 今までの皐月と自分を考えて。

「そうかもな」

 え、とこちらを見る皐月。

 それを見ても思う。

 俺はこんなに皐月のことを見ているのだ。

「俺もお前が大切だ。好きとかそうじゃないとかはわかんないけど」

 変わってしまったように見えて、何も変わってない。

 昔から自分の隣には皐月しかいなかった。

「でも、俺も俺が皐月を好きならいいなと思うよ」

 近すぎて当然のように思っていた。

 近すぎて、離れてもそれに気づかなかった。

「ほ、ほんとにっ?」

 街に出て、足りないもの。

 ここに来て、満ちたもの。

 この町に帰ってきたからじゃない。

 二人でここにいることが、そうだったんだ。

「ああ」

 皐月の笑顔が俺の前にある。

 今、とても幸せなのだと思う。

「ははっ」

「えへへ」

 照れ隠しに二人で笑って、また手すりに体を預ける。

 町を見下ろすその場所で、並んで空を見上げた。

 さっきより、二人の距離が縮まっている。

 変わってゆくもの。

 変わらないもの。

 空には大きな入道雲が浮いていた。

最初の風景描写に比べて後半のこの体たらく……

集中と体力って意外と持たないですね。

もしここまで読んで頂けたのなら幸いです。

可能なら評価も指摘もして頂ければうれしいです。


別シリーズもあげようと思います。

今度はノリのいいやつを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ