インタビュー・ウィズ・ジュリエッタ
――今回魔王討伐パーティーの聖女に選ばれたことに何かご感想は?
しょっぱなから随分ざっくりした質問だね?笑
あーあ……ついてないなぁ……ってとこかな。
――あまり乗り気がではないご様子ですが?
そりゃそうでしょぉ~。貴族だったらそりゃ一族の箔付けだなんだで使えるだろうけど、うちみたいな農民じゃねぇ……。
100年の平和の礎となる名誉~とか言われても、はぁそうですか、としかなんないって言うか……。
うち貧乏だし、国からの補助金は正直すごいありがたいけど、それで死んだんじゃ割に合わなすぎだよ。
――では、その役割を誰かに押し付けようと思ったことは?
もちろんあるよ!なんで私が、ってすっごい思ったもん。でもちょっと調べてわかったけど、ムリなんだよね。あんたも記者ならそん位知ってるでしょうに性格悪いなぁ。
役割を放棄して戦おうとしなかった聖女は皆数年で不幸にも死んでる。魔王討伐の成否を訪問わず。神のご意志に逆らうんだから当然だよねぇ?笑
やってられるか。クソ野郎。
あぁごめんスラングが出ちゃった。まっ、そーいうこって。生き残るには戦うしかないんだ。
――酷な質問をしてすみませんでした。
いや、いいよ。怒ってるわけじゃない。仕事だもんね。
討伐途中で死んだら新しい聖女が指名されるらしいし。どこかで誰かがやらなきゃなんないなら、その誰かに妹達が当たんないよう、がんばるしかないんだよ。
ここの神様は性悪だからほんとにやりかねんからね。
だから巻き込まれた爆弾ゲームだけど、今はなるべく長く、出来れば爆発して次の爆弾が生まれるでの間、この爆弾は私が持ち続けたいと思うわけよ。
しかもさぁ、このシステムの嫌らしいところは、絶対死ぬわけじゃないってとこっすよ。
大抵相討ちかほぼパーティー半壊の辛勝だけど、過去遡ると何件かに一回はパーティー全員生き残ってるんだよね。そしたらさぁ……むちゃくちゃがんばればハッピーエンドにこぎつけるかもしれないって言われたらさぁ……もう他に選択肢はないよね。
――ハッピーエンドといえば、世間では、勇者様と聖女様の恋物語がささやかれてるようですが?
ああそれ事実。私とレオは出来てるよ。
――モンテフォルト次期伯爵にはご婚約者がおられることはご存知ですか?
レオに婚約者がいることももちろん知ってるよ?時々魔法の伝言鳥が手紙持ってくるし。レオナルド様、あなたの帰りをお花の刺繍をしながら待ってるわ、なんて、笑っちゃうよ。
――それは侮辱では?
そんな顔しないで。あんたその子のファン?バカにしてるわけじゃないよ。もちろん世の中にそういう役割の人間が必要なことはわかってる。王様、お妃様、王子様にお姫様。おぉ!我らにパンを恵みし者よ!ってね。お姫様が悪いんじゃない。
王子様にはお姫様。当たり前。でもそういうさ、人間が決めたルールっていうのは、やっぱり社会の中での話なんだよね。
こちとら人間の最前線な訳で。寒くて痛くて熱くて寂しくて、怖くて怖くてしょうがない時に、隣にいる人の手をとっちゃうことは、そんなにいけないことかなぁ?
てかさぁ、そんなに好きならくりゃいいじゃん。別に勇者パーティー以外ついてきちゃだめってルールもないんだからさぁ!
あんただってついて回って地味な気配遮断スキルとかしょぼい回復魔法とかですこぉしは役に立つくらいなんだからさぁ!お貴族様の強い魔力と洗練された魔法ならもっと出来ることあるでしょ!?ラブバード作るくらいならシールド作れっての。
――それが許されないのが貴族というものなんでしょう。
あーはいはい、わかってるって。ただの愚痴。八つ当たり。貴族には貴族のお仕事がある。理解してるよ。誰にでも役割はある。
でも時にはそういうのを越えちゃう感情が生まれることもしょうがないと思うって話。
で、私とレオはそうなっちゃったの。
――では、モンテフォルト次期伯爵との関係は仕方のなかったものだと?
そりゃ私だって故郷に気になる幼馴染くらいいたよ?すごく優しくて、この人と、結婚できたらなぁって思う人が。でもそんな淡くて綺麗な気持ちは、ほんとの恐怖や孤独に全然たちうち出来ないんだ。あんたもさ、戦地じゃないし、数日とはいえ私にくっついて回ってるんだから少しは感じるところもあるんじゃない?
明日、生きてられるかわかんないの。腕がもがれるかもしれないし顔を焼かれるかもしれないの。でも前に進んで魔王を倒さなきゃなの。一緒に嫌だね怖いねって言ってくれる人を欲しがってもバチは当たんないと思うんだよなぁ。
てか、慣れてきてよくわかんなくなっちゃってるけど、冷静に考えるともげた腕が生えてくるって、神様補正の魔法マジやばいよね。右脚とかもう何本目かわかんないし。これじゃ一発で死ぬ魔物よりこっちのがよっぽど化け物みたい。
ねぇ、私はまだ人間かな?
――…………。
うそうそ。ウザい絡みかたしちゃったね。ま、ということで私とレオがこういう関係になるってことは、神様にパーティーが選ばれた時点でほとんど決まってるようなものだったのです!
――それは、聞きようによっては、その関係は神によってお膳立てされたものだともとれますが?
とれますが?じゃなくてそう言ってんの。今回のパーティーよく見なよ。私とレオの他は子持ちのおっさんとマジモンの聖職者。彼らは既に自分の神を持ってる。だから、急ごしらえですがる相手を探さなくて済むってわけ。ほんと良く出来てる。神様は泥沼よりも純愛がお好きみたいね。若くて美しい男女の命を懸けた一途な思い!
私とレオだってそんなに綺麗なもんじゃないのに。遠くから見てるからわかんないんだ。あ、私が美しいって点は事実だから自分で言うよ?
――確かに歴代の勇者達の中でもその後仲間同士結ばれたと言う物語はいくつかありますね。
でしょでしょ。でもこれで男神だってんだからキモいよね。女神ならともかく!笑
――……ノーコメントで。
ははっ、もう遅いって。
――最後に、こちらのインタビューを出版することになった際ですが、実名をお出ししてもよろしいでしょうか?
あー……名前ねぇ……別にどうせその頃には死んでるだろうし、かまわないけど。うーん……でもやっぱ結構色々と話しちゃったし、万一生き残ってレオとかに読まれたら気まずいかも。妹とかは学がないからそんなもの読めないと思うし、大丈夫だろうけど、ジャンとかには読まれたくないなぁ……。じゃああれだ、これを出す時に私がまだ生きてたら名前出さないで!ね!JとかXとかビューティー仮面とか、なんかかっこいい仮名つけてよ。どーせ内容でバレるだろうけど。
まぁその前に、こんな内容じゃ中央教会の異端審査に引っ掛かってそもそも出版できないと思うけどね?笑