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Ep39 嵐(後)

『あーあ、物騒な獲物なんか持っちゃって・・・』

刃物を向ける愁の兄弟子達に嬉しそうに微笑みかけながら一夜が言う。

『手加減なしでオッケー・・・って受けとってもいいんだよね?これは』

笑顔のまま手にした木刀を構える。

剣護が近づいてきてこそっと耳打ちする。

『あいつ・・・今相当キレてるから、あんま近寄らないほうがいいぜ』

『剣護、聞こえてるよ?』

愉快そうに笑いながら言う。

『俺に限って女の子を巻き添えになんて、するわけないじゃん』

『・・・・・・そうだな』

同じように木刀を構える剣護。

『でも、俺らがここは引き受けるからさ・・・藍は先に行きな』

一夜の言葉に黙って頷く。

『・・・・・・笹倉道場だかなんだか知らねえけどなぁ・・・』

愁の兄弟子達が手にした武器を構える。

『バカにしやがって・・・痛い目見せてやる!』

一斉に飛び込んでくる彼ら。

『一夜、剣護!』

『いいから行け!藍』

剣護の声がして、目の前の男達の攻撃をかわすとそのまま『天球儀』に飛び込んだ。

・・・大丈夫かな。

しかし、すぐにその心配は無用であったことを悟る。

彼らはなかなかの手練であったらしいのだが。

突然起こった阿鼻叫喚に驚いて振り向くと、大勢いた兄弟子達は大半が瞬殺されていた。

『すごい・・・・・・』

木刀で凶器をなぎ払い、次々に仕留めていく二人の様子に唖然とする。

強いんだ、二人って・・・

初めて見る彼らの実力に半ば見とれていると、一夜が笑いながら大声で言った。

『藍〜、俺らに惚れるのは後にして、早く愁を探しなー!?』

『・・・バカ!!!』


来斗が近づいて、小さな声で聞く。

「大丈夫か?」

うなずいて来斗を見る。

孝志郎にやられた傷はかなり深いようだ。

みんなぼろぼろなのに・・・なんでこんな・・・

愁は自由自在に『螢惑』を操っている。

一見復活したようにも見えるが、実際は気持ちだけで立っているようなものだ。

孝志郎にも疲労の色が見える。

けど・・・愁と比べたらまだまだ余力がありそうである。

「孝志郎って・・・こんなに強かったんだね」

「・・・ああ」

愁が『螢惑』を構えて怒鳴る。

「これで・・・どうや!?」

『朱雀』!!!

愁の周囲に巻き起こった巨大な炎の渦から、朱雀が力強く羽ばたく。

「行けぇ!!!」

孝志郎は『村正』で防御の構えを取る。

「ううっ・・・・・・!!!」

一度は持ちこたえたかに見えた。

だが、朱雀は大きく羽ばたいて孝志郎を吹き飛ばす。

「ぐぁっ!!!」

炎に巻かれ、孝志郎の体が宙に舞う。

「行け!!!」

愁が怒鳴ると、孝志郎の体は猛スピードで地面に叩きつけられた。

小さなうめき声を上げて、ぐったりとする孝志郎。

「やった!」

愁くんの必殺技、『朱雀』。

これで仕留められないはずがない。

仕留められないとすれば・・・・・・

がくっと膝から折れるように地面に倒れこむ愁。

「愁・・・・・・」

来斗が傷口を押さえながら愁に近づこうとする。

だが、愁は静かに来斗に言う。

「来斗・・・来るな」

「何?」

「まだ・・・決着はついてへん」

はっとして孝志郎を見る。

孝志郎は立ち上がって、まっすぐ愁を見据えていた。

かなりのダメージを与えたらしいことはわかる。

でも・・・・・・

あれで仕留められないなんて。

孝志郎が叫ぶ。

「愁!!!これが最後だ」

「ああ・・・お互いもう余力ないからな」

「全力で来い!」

愁と孝志郎が向き合い、構える。

再び巻き起こる炎の渦。

思わず拳を握ってつぶやく。

「死なないでね・・・二人とも」


走れるだけ走って、僕は一つの扉に飛び込んだ。

照明のついていない暗い部屋の中、扉を背にしてしゃがみこむ。

さっきやられた傷からはずっと血が流れていて、打撲もひどい。

ぜえぜえと息をしながら虚空を見つめる。

昔はよく・・・叱られてこんな暗い部屋に閉じ込められたものだった。

『闘犬・・・か』

僕には幼少の記憶が全くない。

それでも、師匠が僕の身の上について何も聞かないことは気になっていた。

学校のことも、何も聞かない。

興味がないのだ・・・僕の『神力』以外には。

彼らの言うとおり、そんなものだったのかもしれない。

『僕が死んでも・・・誰も・・・・・・か』

頬を涙が伝う。

『独りで生きてきて・・・独りで死んでいく・・・・・・』

そんなこと、今まで考えたこともなかった。

『ちょっとそれは・・・酷やな』

つぶやいた時。

急についた明かりの眩しさに目を細める。

『浅倉!!!見つけたぞ!!!』

見るとその部屋は予想以上に広く、もう一つあった扉から入ってきたらしい兄弟子達が目の前に立っていた。

しまった、見つかったか。

『あかん・・・もう・・・動けへん・・・・・・』

つぶやいて天井を見上げる。

『俺らから逃げようなんてなぁ・・・』

顔を引きつらせた兄弟子が『神器』を構える。

『今度こそ死にやがれ!!!』

ぐっと目をつぶる。

しかし。

・・・攻撃がない。

何だ?

ゆっくりと目を開ける。

『愁くん、お待たせ!』

にっこり笑った藍が、兄弟子の一人の首にステッキのようなものを突きつけていた。

『・・・何だてめえ!?』

『はーい先輩方動かない!動くと・・・』

藍がステッキを天井に向かってかざすと先端から閃光が走り、激しい音と共に天井に大きな穴が開いた。

『・・・こうなりますよ?』

青ざめた兄弟子たちが一気に後退する。

そんな中『神器』を持った一人が怒鳴る。

『そんなもん・・・通用するか!』

『神器』からかまいたちが放たれる。

『藍はん!!!』

襲いくるかまいたちをちらっと見ると、藍は何連ものブレスレットをした左腕を大きく振るった。

ブレスレットからは一回り大きなかまいたちが放たれ、兄弟子の攻撃を弾き返すとそのまま付近の兄弟子達を吹き飛ばす。

『・・・それ』

『『神器』の破片をくっつけて来斗が作ってくれたの、ガラクタだけど簡易の『神器』みたいなものかな。かっこいいでしょ!?』

藍は得意そうに聞く。

士官学校のブレザーに白いステッキと色とりどりのブレスレットを身に着けているその姿は、一見どこかの魔法少女か何かのようである。

だが・・・

『・・・こんな恐ろしい魔女っ子、見たことないわ・・・・・・』

こんな有り合わせのものでここまでの威力を発揮するというのは・・・

藍の実力、推して知るべしである。

藍は無線機のようなものを懐から取り出す。おそらくこれも来斗の発明品だろう。

来斗は天才なんだと、藍が以前自慢げに言っていたのを思い出した。

『来斗!愁見つけたよ!!!』

『『そうか、ご苦労!』』

無線機を手にしたまま微笑む藍。

『じゃ、愁くん帰ろう?』

『帰る・・・って』

『迎えに来たの!私だけじゃないわ、外には一夜と剣護もいる』

『・・・迎えに?』

『友達のピンチなんだから、助けに行くのは当然でしょ?』

『・・・友達・・・・・・』

うつむく僕に、再度声をかける藍。

『どうしたの?ね、帰ろうって・・・・・・』

藍の声が不自然に止み、はっとして顔をあげる。

藍に『神器』を突きつける、最後の一人の兄弟子。

ちっ、と舌打ちする藍。

『浅倉!この子の可愛い顔に傷つけたくなかったら、無駄な抵抗は止めてその手に持ってる『神器』を渡しな』

憎たらしく笑っているのは最初に僕を拉致した奴だ。

ぎりっと唇を噛んで、僕は手にしていた『神器』を手放す。

短剣の形の『神器』は赤い光を放ちながら床に転がった。

『いい子だ・・・』

奴は憎憎しく笑うと、僕に『神器』を向けて何か唱えた。

青白い光が放たれ、氷の刃が突き刺さる。

『ううっ・・・・・・』

『愁くん!!!』

藍は兄弟子の腕から抜け出すと、身動きの取れなくなった僕に駆け寄ろうとする。

『・・・てめえ!』

兄弟子が怒り狂って藍の首根っこを掴み、僕のすぐ傍の壁に叩きつける。

『あっ!!!』

藍は頭を強く打ったらしい、ぐったりとそこに崩れ落ちた。

『・・・藍・・・・・・』

何とか藍に近づこうとするが・・・全身を貫く痛みに、身動きが取れない。

兄弟子はそのまま僕にまっすぐ近づいてきて『神器』を僕の首に突きつけた。

『これで最後だ・・・浅倉』

睨みつける僕に歪んだ笑顔を向けて奴は言う。

『最後の最後まで歯向かうとはな・・・たいした奴だったぜ』

『神器』の先端に青白い光が集まる。

『・・・あばよ、浅倉』

そのときだ。

『『愁!!!お前そんな程度のもんだったのか!?』』

藍の懐の無線機から聞こえてきたのは・・・孝志郎の声。

『『お前は俺に喧嘩売ったような男なんだろ!?そんなチンケな野郎にむざむざ負けて死ぬんじゃねえ!』

孝志郎の声は続く。

『俺は・・・お前なら藍達にハッパかけられてちょっとやる気出しゃあ、そんなところから一人で脱出できるだろうって思ってたんだ!だから外に残ったんだよ!!!俺が見込んだ男だったらなぁ、絶対勝って藍連れて帰って来い!!!』』

『・・・孝・・・・・・志郎』

『『俺はなぁ!俺は・・・』』

その言葉は、今でも僕の耳に焼き付いている。

『『お前を信じてるぞ!!!』』

はっとして拳を握る。

その瞬間、床に転がった『神器』が赤く眩しく光った。

『何だ!?』

兄弟子がひるんだ一瞬をついて、渾身の力を込めて体当たりをする。

『な!!!』

床に転がる兄弟子の上に馬乗りになって、握り締めている『神器』を奪い遠くに放る。

そしてめちゃくちゃに奴を殴りつけた。

『やられてたまるか・・・お前なんかに・・・お前なんかに!!!』

顎にありったけの力を込めた一撃を食らわせると、奴はぐったりと気を失ってしまった。

僕はふらふらと立ち上がると、さっき僕を救った炎属性の『神器』を拾い上げる。

頭がうまく回らない。

呆然と、その切っ先を兄弟子に向ける。

『神器』が赤く光り、僕の周囲に炎が巻き起こる。

・・・こんな奴、消えてしまえばいい。

ぼんやりした頭に浮かんだ言葉は瞬時にかき消された。

『それを放ったらお前もそいつらと同じだぞ!!!愁』

孝志郎の声。

無線でなく直接聞こえてきた声にはっとして、周囲を見渡す。

部屋の入り口に孝志郎と来斗、背後には一夜と剣護も立っていた。

『孝・・・志郎・・・・・・?』

孝志郎はまっすぐ歩いてくると、突然僕の頬を思い切り殴りつけた。

『孝志郎!』

来斗が声を上げる。

びっくりして見上げた僕に、孝志郎は厳しい顔で言った。

『・・・情けねえぞ、愁』

『・・・何?』

『藍だよ、藍!!!』

鬼のような形相で藍を指差して怒鳴る孝志郎。

『俺の妹をあんな目に合わせやがって・・・こんなクズのトドメなんかどーでもいいんだよ!!!それよか先に藍の・・・』

『藍なら大丈夫そうだよ』

孝志郎の声を遮るように一夜の穏やかな声が飛んでくる。

『ちゃんと息してるし・・・気絶してるだけみたい』

『そ・・・そうか』

一夜は藍を背負うと、にっこり笑って孝志郎に言う。

『色んなとこで話には聞いてたけど・・・孝志郎は本当に藍を大切に思ってるんだね』

『ま・・・まあな』

剣護が僕の目の前にしゃがみこんで、小さな声で言う。

『ごめんな愁・・・遅くなった』

『・・・いや』

僕に笑いかけた後、剣護は少し厳しい口調で孝志郎を呼んだ。

『・・・何だ?』

『孝志郎さん、愁に何か言うこと・・・あるんじゃないですか?』

少し間があって、孝志郎は頭をかきながら僕の前に座り込んだ。

『何か、言って欲しいことがあるか?』

・・・・・・何?

カチンときて、僕は黙って孝志郎を睨み返す。

孝志郎はひるまず、しかし声を荒げることもせず、静かな口調できっぱり言った。

『お前なら、こんくらいのこと出来て当然だろ?』

意外な言葉に、僕は何も言い返すことが出来ない。

孝志郎は同じ調子のまま続けて言う。

『お前は大分年下だけどな・・・俺はそんな風には見てないぜ?愁。お前とは対等だ・・・って、俺は思ってる』

『孝志郎・・・・・・』

『だからガキみたいに拗ねたり甘えたりすんな!俺がライバルと認めた男がそんなじゃ、俺もみっともないじゃねえか、な!?』

僕にそう問いかけた後、少し優しい顔になって孝志郎は笑った。

『でもまぁ、今回は・・・よくやった』

言い返す言葉が見つからない。

後から後から涙が溢れてきて、しまいには嗚咽が止まらなくなってしまった。

来斗も一夜も剣護も、優しい笑顔でそんな僕を見守っている。

おいおい、と苦笑しながら孝志郎が言う。

『今日だけだぞ?お前が泣いてたってこと、みんなには黙っててやっから・・・・・・忘れんな、さっき俺が言ったこと!』

その時は頷くので精一杯だったけど・・・

僕は一人じゃない、助けに来てくれる仲間がいる。

それに、僕を認めてくれる人がいる・・・

そう思えた瞬間だった。

孝志郎の『ライバル』。

その後付き合いが深まっていくにつれ、彼のすごさが理解出来ていくにつれ、驚嘆すると共に思った・・・『ライバルの名に恥じない自分でいなければ』って。

それがなければきっと、ここまでやってこれなかった。


両腕を羽ばたくように広げ、態勢を低くする。

僕は・・・勝てる。

孝志郎も余力がありそうに見えるが、至近距離で見れば限界が近いことがよくわかる。

僕の前に来斗とも戦っているのだし、舞とも戦っているのだ。

勝つんだ、絶対に。

体の芯から熱い炎が沸き起こるような感覚。

それは雪の降るあの日の感覚に似ている。

これが・・・僕の精一杯や。

「行くぞ愁!!!」

孝志郎が叫ぶ。

『阿修羅』!!!

遅れて僕も唱える。

『朱雀』!

二つの赤い炎は再びぶつかり合う。

ものすごい衝撃が体を襲う。それは今までのどんな攻撃より重い。

「うううっ・・・」

苦痛に思わず顔を歪ませて、ぐっと奥歯を噛みしめる。

勝つんだ・・・そして孝志郎を止める。

この暴走を止めて欲しいという、孝志郎の心の叫びを感じた。

舞には止められなかったと言っていた。

来斗にすら止めることが出来なかった。

だから・・・僕が止めるしかないんだ。

それが僕を認めてくれた孝志郎に応えることになるはず。

「いい加減・・・・・・」

ぐっと体に力を込める。

「降参しいや!!!」

朱雀は更に激しく孝志郎に迫る。

「うおおおっ!!!」

孝志郎の炎も勢いを増して応じてくる。

「・・・くそっ」

脳が沸騰しそうな熱さ。

全身の『神力』のストックが尽きてきたような感覚にとらわれる。

意識がふっと薄くなる。


『風』

優しい声・・・

『螢惑』か?

いや・・・違う。

これは・・・・・・

『助けてあげて・・・あんたなら出来るはずや?』

「・・・・・・母さん」


全身が燃え尽きるような猛火が巻き起こり、孝志郎の炎を巻き込む。

「・・・何!?」

孝志郎の体が熱風に吹き飛ばされる。

「愁!!!」

舞の悲鳴。

倒れこんだ孝志郎に走り寄る。

「うう・・・・・・」

「孝志郎はん・・・・・・いい加減・・・目覚ましや!!!」

僕は孝志郎の胸倉を掴むと、その頬を思い切り殴りつけた。


「龍介!そっちは大丈夫か!?」

無線に向かって叫ぶ。

『ああ!お前んとこの隊士が頑張ってくれて・・・・・・おっと』

一瞬龍介の声が途絶えて、背後にうめき声がいくつか聞こえた。

『わりぃ、こんな状況だ。姫様達は!?』

「霧江様はここに。霞様は右京と一緒なんだが・・・」

霧江様が『オンブラ』を切り伏せながら叫ぶ。

「お姉様と右京様がいらっしゃる広間の扉が開かないんです!!!」

ばったばったと敵をなぎ倒す凛々しい姿に半ばあっけにとられながら言う。

「・・・と、いうことなんだが」

『大丈夫だ!右京が一緒なら・・・だからお前は霧様を頼んだぞ!!!』

「・・・承知」


『水鏡』を構える。

黒い大きな影は目だけを赤く光らせて、じっとこちらを向いて立っている。

ものすごい殺気。

容易に動けばたちまち切り刻まれてしまいそうな緊張感。

騒然とした外の様子とは対照的に、ここはしんと静まり返っている。

全身の注意を『ベルゼブ』に向けながら、僕は心の中で問いかける。

こいつは・・・一体何者なんだろう?

紺青へ来てから沢山の『オンブラ』を目にしてきたし、対峙してきた。

だが・・・この『ベルゼブ』という存在。

その姿、身にまとう『妖力』、発する言葉や思考まで何もかもが今まで見てきた『オンブラ』とは違っている。

以前戦ったときにはあまり意識していなかったことだし、こいつが他の『オンブラ』を動かしているのだから、違っているのも当然のことなのかも知れない。

しかし・・・・・・

人?

まさか。

だって現にここに存在しているのは、明らかに人間の肉体じゃない。

空っぽの器のようでもある。

でも・・・気配は確かに人間の気配なのだ。

額を冷たい汗が一筋、流れる。

得体の知れないモノに出会った恐怖と大きな違和感が入り混じったような感覚。

『恐いか?燕支の皇子よ・・・』

ぞくっとして、刀の束を握る手に力が籠もる。

沈黙が破られたことで、空気に若干の緩みが生じた。

物は試し・・・・・・問いかけてみる。

「お前は・・・人なのか?」

しばし沈黙。

そして、『ベルゼブ』は高らかに笑い出した。

『なかなか鋭い質問だな、橘右京。孝志郎ですら・・・今までそれを問うたことはなかったぞ。良いところに気づいたものだ』

「気づいた?・・・ということは、やっぱりそうなのか?」

『正確には、人間『だった』といったところかな』

張り詰めた空気の中、『ベルゼブ』は少し目を細めた。

『今は・・・そうだな。人間『以上』の存在・・・といったところか』

「お前は紺青に・・・何か恨みでもあるのか?」

『ベルゼブ』は愉快そうに高らかに笑う。

『・・・そうだな。私もお前や孝志郎と同類、ということになるかな』


病院内は騒然としていた。

負傷者が次々に担ぎこまれている。

だが、それだけではない。

『隊長!『オンブラ』が・・・』

「応戦出来そう!?」

『・・・頑張ります』

強い口調で答える隊士だったが・・・実戦経験の乏しい彼らでは難しいだろう。

「待ってて!今行きます」

『でも・・・』

その時。

バン!と勢いよく隊長室の扉が壊される。

振り返ると、そこには一ノ瀬隊長配下の騰蛇隊士達が刀を手に立っていた。

「カシラを潰せば下の奴らもおとなしくなるかな、と思ってね」

黙って睨みつける私に、皮肉っぽく笑う隊士達。

「紺青の連中を叩いても叩いても、あんたたちが余計なことしてくれるから・・・埒が明かないんだよな」

刃先を私に向ける。

「まあ、その綺麗な顔は傷つけないようにしてやらあ。無駄な抵抗は・・・」

『神器』の指輪、『薄緑』をはめた手を隊士に突きつけたのとほぼ同時。

彼らの背後で旋風が起こる。

「何・・・・・・!?」

ある者は顔面に蹴りを入れられ、ある者はみぞおちを一撃。

次々になぎ倒されていく。

そして彼が私の前に飛び出してきた時には、隊士達は一人残らずノックアウトされていた。

「咲良ちゃん無事か!?」

「・・・宇治原くん」

宇治原くんは珍しく武器系の『神器』を身に着けていた。

風の力を利用して打撃系の攻撃力を増す、グローブ形の『飛燕』。

「咲良ちゃんあかんで・・・至近距離で『薄緑』ぶっ放したら、このごっつい兄さん達でもどうなるかわからへんやんか」

そう言って笑う彼はいつもの眼鏡をかけていない。

「眼鏡・・・どうしたの?」

「ああ、邪魔やったから置いてきた」

「あなたこそ・・・眼鏡かけてないと手加減出来ないんじゃなかったの?」

「・・・あ」

もう、とため息をついて一応礼を言う。

『宇治原伍長!四之宮ですけど!!!』

四之宮さんの慌てた声が無線から響く。

『裏庭で騰蛇隊士が沢山倒れてるんです!月岡伍長はまだ動けないはずだし・・・』

はっとして宇治原くんの顔を見ると、げんなりした様子で視線を返してくる。

『峰打ちですけど・・・瞬殺って感じで・・・・・・一体誰が・・・』

「どっかの隊の隊士が応援に来てくれたんと違うか?」

『そ・・・そっか!そうですよね!?』

「とりあえずお前は負傷者の治療に専念してくれ」

そう無線に呼びかけて、小さく舌打ちをして部屋を出て行く宇治原くん。

「・・・探してきますわ、一応」

「宇治原くん?」

「・・・はい?」

「職場で『咲良ちゃん』は、禁止」

「・・・はいはい」


静まり返った広間には、僕と霞様、それに『ベルゼブ』の3『人』だけ。

「・・・僕は」

『あるはずだ。紺青に恨みが・・・』

脳裏に浮かぶ、紫苑兄さんの笑顔。

振り払おうとするが、記憶が次々に蘇ってくる。

丘の上の基地、負傷した兄さん、笑って僕を逃がしてくれた。

そして。

あの爆発。

「やめろぉ!!!」

僕の怒鳴り声が広間に響き渡る。

愉快そうに笑うと『ベルゼブ』が言う。

『見よ、お前も孝志郎と同じだ。紺青が憎くて憎くてたまらぬのではないか?』

紺青へ行け、と父から言われたあの日。

兄さん達の最期の地となった丘に登って、とにかくめちゃくちゃに剣を振り回した。

・・・何が仕官だ、何が王直々のご命令だ。

今の今まで兄に対する謝罪の言葉一つ、かけてきたことのない紺青の王。

それどころか、僕はあいつらのためにこれまでどれだけの血を流してきた?

近隣国の内戦のたびに借り出され、沢山の大事な人を失った。

あんな奴らが・・・今更どんな顔をして僕を召し上げるだって?

ふざけるな。

紺青へ来てから封印したはずの、そして克服したはずの思いが次から次から溢れてくる。

どうしたんだ?一体・・・・・・

青ざめた顔で立ち尽くす僕に、霞様が小さく呼びかける。

「右京様・・・・・・」

「・・・大丈夫です」

『ふっ、大丈夫なものか。なあ、橘右京よ?・・・本当はその娘が憎いのであろう?』

「・・・そんなわけないだろう!」

『この1年程の間も・・・どうだ?お前はその娘のために、大事な人間を失ったのではないか?その娘を守るため・・・と、失った者がいたであろう?』

玲央?

『戦いは嫌いだ』

いつもそう言って笑っていた。

それは臆病から来る言葉ではない、強い決意の上での言葉だった。

『争うことが正しいとは僕には思えないんだ』

玲央・・・

『紺青を・・・姫達を守れ』

どうしてあんなこと・・・・・・

「違う!!!あいつはちゃんと生きてるし、あいつの決断が間違ってたとは僕は思わない」

『ほう。確かに姿形は同じであろうが・・・果たして本当にお前の幼馴染本人であるという証拠があるのか?』

ぞくっと背筋が寒くなる。

『あの姿では・・・本人に直接確かめることも出来ぬであろう?』

そんなこと・・・

「もし・・・そうであっても僕は・・・・・・」

『水鏡』を握り締めて、大きく一つ深呼吸をする。

そして、霞様のほうを見る。

恐怖からか、少し顔が青ざめている。

だが、しっかりを僕を見据えるその瞳の光は強い。

まだまだ少女の域を出たばかりという年頃なのに、王の不在を感じさせないだけの治世を行なっている彼女。紺青の人達にとって、霞姫の存在はとても大きい。

力がない自分が口惜しい、彼女はいつもそう言って唇を噛む。

『私に力があれば・・・』

辛い過去と向き合って、精一杯生きている霞様。

彼女を守ると、決めた。

『大事な人を守るために戦う』、紫苑兄さんとの約束だ。

玲央はどんな姿になったって・・・帰ってくるっていう僕との約束を守ったんだ。

僕もあいつとの約束、果たさなくちゃいけない。

『姫達を頼むね』一夜さんも・・・そう言っていた。

僕にとって、紺青に来てからの日々はかけがえのないものだ。

その全てを忘れて後ろを振り返るなんて・・・馬鹿げてる。

『そうだ』

脳裏に響いた『水鏡』の声に少しほっとして、きっ、と『ベルゼブ』を睨む。

「・・・悪いが、お前の好きにはさせない」

低い声で言う僕に、愉快そうに笑って『ベルゼブ』が言う。

『いやはや、持ちこたえたか・・・右京よ』

「今のは・・・まさかお前が?」

悲しみや憎しみ、その時の空気まで生々しく甦る、過去の記憶。

これはこいつの『妖力』の仕業ということか。

「孝志郎さんにも・・・やったんだな?」

『さあ・・・どうかな』

「・・・そういうことだったのか」

『あんな遠い昔のことを覚えているはずがない』

以前一ノ瀬公がそう嘆いていたのを思い出す。

そんな昔の記憶がまるで昨日のことのように甦ってきたならば・・・

しかもそれが、想像もつかないくらい恐ろしい記憶であったならば・・・

何事かを彼に決意させるには・・・十分すぎる。

「許せない」

『水鏡』が青白く光る。

『戦おうというのか?この私と・・・』

余裕たっぷりに笑って『ベルゼブ』が言う。

『以前の私と同じと思ってもらっては困るな』

「それはこっちの台詞だ」

大きく一つ息を吸い込んで、唱える。

『水無月』!

青白い光が『ベルゼブ』に向かう。

『ベルゼブ』の構えた黒い刀は光を受けて眩しく光る。

しかし、光はすぐにかき消されてしまった。

「何!?」

『言ったはずだ、以前とは違うと』

黒い刀から赤い光が放たれる。

『水天』!

水のバリアがその光を受け止める。

ものすごい振動で刀を握る腕がガクガク震える。

何だ・・・この重さ。

「う・・・うう・・・」

『何だ、そんなものか?』

余裕たっぷりに言うと、『ベルゼブ』は何か唱える。

赤い光が瞬時に強さを増し、ものすごい音とともに水のバリアをぶち破る。

赤い光は僕の腹部を貫通して、背後の壁に風穴を開けた。

「右京様!!!」

血を吐いた僕に、霞様が悲鳴をあげる。

膝から崩れるようにかがみこむ僕に『ベルゼブ』が冷たく言い放つ。

『その程度の力で守るだと?・・・片腹痛いわ』

「く・・・そ・・・・・・」

必死に『水鏡』を掴む。

そして立ち上がって構える。

しかし。

その瞬間飛んできた黒い霧に弾き飛ばされる。

「うぁっ・・・・・・」

壁に叩きつけられる。

・・・まずい。

『ベルゼブ』はゆっくりと僕に近づいてきて言う。

『安心しろ、苦しまぬようにしてやるわ・・・』

「待ちなさい!!!」

霞様が叫ぶ。

見ると霞様は懐刀のようなものを自分の首に突きつけている。

「その人から離れなさい!さもないと・・・私は自害します」

『・・・ほう』

「あなた達は私が死んでは困るのでしょう!?」

あざ笑うように『ベルゼブ』が言う。

『ならば・・・やってみよ』

「・・・何ですって?」

『出来るものか・・・貴様のように育ってきた小娘が、一人で死ぬ度胸などあるわけがない』

唇を噛んで霞様は『ベルゼブ』を睨みつける。

『どうだ?・・・出来ぬであろう』

「霞・・・様」

霞様は僕のほうを一度じっと見た。

彼女は少し笑ったように見えた。

静かに言う。

「・・・よく見ていなさい」

そして、腹部に懐刀を突きたてた。

「霞様!!!」

『何!?』

ふらっとその場に崩れ落ちる霞様。

僕が駆け寄ると、真っ青な顔で大丈夫です、と微笑んだ。

「どうです?『ベルゼブ』・・・これでわかってもらえたかしら」

『愚かな・・・』

「次は・・・確実に・・・・・・だから・・・・・・」

霞様はそこまで言うと気を失ってしまった。

「・・・霞様」

僕を守ろうとして・・・

腹部の痛みはどこかへ消し飛んでいた。

「時間がないな」

『水鏡』を構えて言う。

「このままでは霞様が危ない。そうなったらお前も困るんだろう?」

『・・・そのようだな』

・・・一撃で。

精神を統一して全身の『神力』を集中させる。

僕の周囲に青白い光。

傷を癒していくような感覚。

ぐっと足に力を込める。

『ベルゼブ』が黒く光る刀を振りかざし、より一層強い赤い光がこちらに向かってくる。

「・・・行くぞ」

『水鏡』をかざして一直線に『ベルゼブ』に向かう。

赤い光を勢いよく弾き飛ばし、僕は大きく跳躍して『ベルゼブ』に切りかかった。

『秋水』!

青白い光はその空間全体を包み込む。

そして『水鏡』は『ベルゼブ』の体を脳天から真っ二つに切り裂いた。


「・・・さんきゅ」

孝志郎は小さな声でつぶやくと、胸倉を掴んだ僕の手を払いのけた。

そして懐から無線様のものを取り出すと、静かに言う。

「全員に告ぐ・・・前半戦は終了だ。これより後半戦に入る」

そして僕たちをゆっくり見ると、続けて言った。

「・・・皆のもの、周囲の『オンブラ』を斬れ」

!?

「俺はこれより『ベルゼブ』を追って城に入る。俺が出てくるまでに『オンブラ』を殲滅しておくこと!いいな」

舞が目を見開いて言う。

「・・・どういうこと?」

ふっ、と笑って孝志郎が言う。

「俺が紺青の街をぶち壊そうとしてるなんて・・・お前本気で思ってたのか?」

「・・・・・・だって・・・孝志郎?」

孝志郎の体が白い光に包まれる。

「何や!?」

「悪い・・・先に行くぜ」

そして光の中に消える瞬間、孝志郎はつぶやいた。

「あの化けもんも・・・これで最後だ」


静かになった広間で、僕はゆっくりと霞様に近づいた。

「霞様・・・・・・」

息はあるようだが、まだ意識は失ったまま。

早く手当てしないと・・・・・・

その時だ。

『やるではないか?右京』

「・・・・・・まさか」

さっき『ベルゼブ』が立っていた空間に目を凝らす。

黒い影が次第に集まり、また一つの人型を成す。

『今のは痛かったぞ・・・なかなかにな』

「・・・くっ!」

立ち上がってもう一度『水鏡』を構える。

「待て!」

背後で声。

振り返るとそこには、満身創痍の孝志郎の姿があった。

「右京、そいつは本体じゃねえんだ。そいつをいくら叩いたところで、とどめを刺すことは出来ない」

明らかに以前と様子の違う孝志郎に戸惑いながら聞く。

「・・・じゃあ、一体どうしたら」

「こうするんだよ」

孝志郎は何かスイッチのようなものを手にしている。

『孝志郎・・・貴様』

「あんたの『本体』のすぐ傍に爆薬を仕掛けさせてもらった。このスイッチを押せばあんたの野望もたちまちオジャンだ。悪いな」

『おのれ・・・裏切るのか?』

「裏切るっつうか・・・最初からそのつもりっつうか?」

天を仰いで笑うと、孝志郎はきっ、と『ベルゼブ』を睨んだ。

「・・・じゃあな」

ボタンを押そうとした瞬間。

白い光に目が眩む。

「・・・何だ!?」

「・・・・・・残念だったな、孝志郎よ」

ベルゼブの声。

はっとして見ると、そこには一人の男が立っていた。

筋肉質で肌が浅黒い、目だけが赤く光っている。

驚愕の表情で、孝志郎がつぶやく。

「・・・・・・陛下」

「何だって!?」

「まさか・・・そんな・・・・・・」

男は皮肉っぽく笑う。

「まさかだな。私が貴様の父親であるはずがなかろう」

「・・・・・・だが・・・」

「よく似ておろうな。若かりし日のあの男に・・・」

せせら笑うように言う。

「一歩遅かったな。お前の企みは失敗に終わったようだ」

「それが蘇った姿・・・だってのか?」

孝志郎は恐怖を振り払うように『村正』を抜く。

「よせ。今のお前にはまったく『神力』が感じられん・・・韓紅の小僧との戦闘で使い果たしたようだな」

孝志郎の体を炎が覆う。

『阿修羅』!!!

ものすごい炎が巻き起こり、ベルゼブに襲い掛かる。

しかし。

「無駄だ!!!」

ベルゼブが刀を振るうとそれはかき消され、孝志郎の体に赤い光が幾つも突き刺さる。

「うっ・・・・・・」

「孝志郎さん!!!」

全身から血を流し、孝志郎はその場に崩れ落ちた。

ぎりっ、と奥歯を噛みしめる。

「『水鏡』!!!今度こそ仕留める!!!力を・・・」

『・・・右京・・・』

「力を貸してくれ!!!」

『水鏡』が眩く光る。

・・・・・・行くぞ。

『伊耶那岐』!!!

広間を覆う、青白い光。

そしてそれは一直線にベルゼブに向かう。

光はスパークして、旋風が巻き起こる。

「くっ・・・」

足場がずるずると後退し、ぐっと足に力を込める。

霞様・・・・・・

孝志郎さん・・・・・・

「おおおおおお!!!!!!」

目の前が真っ白になる。

「うっ!!!・・・・・・・・・」

ベルゼブの叫び声。

そして光が収まったとき、ベルゼブは床の上に倒れていた。

「やった・・・か・・・」

ふっと意識が遠のく。

がくっと崩れ落ちて、体の自由が効かなくなる。

これが『神力』を使い果たした・・・って・・・やつか。

しかし。

耳を疑った。

「今のは・・・見事だったな」

「・・・なんだと?」

ベルゼブはゆらゆらと立ち上がると、僕にゆっくり近づいてくる。

「所詮韓紅の混血無勢・・・貴様など敵ではないと思っていたが、あてが外れたようだ」

奴は僕の頭を思い切り蹴り飛ばす。

「ぐっ・・・」

「橘右京という男は・・・危険だな」

黒い刀を僕の首に当てる。

「ここで始末しておくべきか・・・」

その時、背後で霞様のうめき声が聞こえた。

ふっ、と笑ってベルゼブは僕の首から刀を放す。

「肝心なものを忘れておったわ・・・命拾いしたな、小僧」

「・・・・・・何を・・・・・・」

ベルゼブは霞様を抱き上げると、ゆっくりと空中に浮上する。

「待て!!!」

「ついに『玉』を手にした・・・これで・・・世界は私のものとなる」

にやりと笑うとベルゼブは天井に視線を向ける。

ものすごい轟音を立てて、天井に風穴が開く。

「・・・またいずれ会おう。だがその時は・・・最後だ。貴様の命も・・・紺青もな」

そう言い捨てると、ベルゼブは天井の穴から空へ飛翔した。

霞様を・・・抱きかかえたまま。

「右京!!!」

草薙さんの声が背後に聞こえる。

「大丈夫か!?」

続けて藍さんの悲鳴。

「孝志郎!?孝志郎しっかりして!!!」

「・・・・・・く・・・そぉ・・・・・・」

「・・・右京?」

「・・・・・・・・・・・・ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


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