マンドラゴラ
誰も助けてくれない。
「は、はああ」
痛い。
「―――――ちゃんっ。可愛いよ可愛いよ」
ひとりぼっちじゃあなくなった。
窓の外で木々がゆらめいて、汗さえ綺麗で、全部副作用。
ばくばくしている。
どきどきはしない。
少し巻き戻してみよう。
何かわかるかもしれないし、何か変わるかもしれない。
「いやああああ!!」
私は叫んだ。
――――――――――――
毒と猛毒。
病的とも言えない。
ぼっちに、ひとりに、ひとりぼっちに。
そんな両価性を持って、私ばっかり生きている。
診断の妙としか言えない。
孤独に毒を価値づけて。
猛毒はろくでもない麻にしている。
おかしな話が私だった。
しかし、しかしだ。毒にも猛毒にも変身しないまま、権利じみたもの言いで、断じ、宣言するカッコいい一人ぼっちも、かくして私の内にいたらしい。
ずっと考えていたい。考えてだけいたい。
でも、他のことは考えたくない。私の間近に運動していた。
思い出すのは夏休み。の終わり。
八月三十と一日。人生の墓場が結婚ならば独身は、何だ。
牧場だ。
私は、そう、なけなしの元気で手記を減らした。
三十一坪、初の耕作だった。
友達という野菜の苗を所持しなかった私は、自らの領海にさえおびえこみ、日々、舌の届く簡易正麺のみに溺れた。血相冴え冴えしい蛙のような鏡像が私だった。
朝の時間は麻の鱗粉のように多幸で、そしてしばらくして、蝶の鱗粉のように、惑う原因となった。
休息はむなしく、しかしだ、学校の臓器内よりは健全に、人として、熱に、慣れることができた。
熱はどこか、毬を含んでいた。毬。まるで毒みたいな風味だった。甘苦く、熱なのに冷たい。
考えなくてはいけない。考えなければいなくなる。
それが孤立だった。
一晩考えた。
超常的な、一人の人間をこの世の中から欠けさせてしまえるほど異常な力。名前を、常識といった。
常識という正義が、暇を持て余さないために学校という舞台で悪を作る。
怪人孤立の誕生だ。
私はあえて口外する。考えないでおくれ。
怪しまないでくれと。
私に友達はいない。だが、不在に、危険はあり得ない。
敵を知らない安息こそが、人を殺すのだ。
飢えて死なず、飽きて死ぬのだ。
好きで隙を、嫌いで機雷を、アピールなど、していない。
そんなことしたくない。
なのに、何故だ。
そこに居たいだけなのに。
居座り続ける大した主張を、声にしたいだけなのに。
痛くないぐらいなら、酸素はあげるから。
遺体扱いでいいから。
私は生きたい。
頼むよ。
パズルの残機が個を結ぶような格好で机に寝そべると、地球がルービックキューブに思えた。
フルカラーで、多彩に根を張る、価値を誇る野菜たちの過ぎたシンプル性を、私はつまみに毒でも盛られたように、よく眠れる。
夏休みが終わった。
二学期初日、どれくらいになるだろう。久々の通学路を歩いていたら。
まるで、塩の入ったビンを、一気飲みしたみたいだった。
一気に寒い。まだ九月だよ。
しょうがない。しょうがない。仕方がない。
登校日は夏休み明けの始業の日は、一番十代の自殺が豊富だっていうじゃない。
だから仕方ない。
背後からの、足音に、私は気づかなかった。
後ろにもう休みは、ない。そういう雰囲気に呑まれていた私が悪い。
考え、考え、考えて、警察の、音、遅いよ。
ああ。これも、薬の副作用。
抵抗した。砕かれた。倒れて、押し倒されて、あとは知らない。
マンドラゴラ。
私は人の形をした野菜。
だからこれも、凌辱じゃない。
屈辱も感じない。
だけど、痛いよ。
誰も、助けてくれなかった。